謎解き京極、塗仏の宴、宴の始末 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ
1
昭和28年6月11日、伊豆下田である。下田署にある男がひそんで、動きを見聞してる。
下田署の村上貫一の自宅で回想する。昭和13年、下田に移住、14年に結婚、復員後、22年に警察に勤務。この10日、息子、村上隆之と悶着があったので、勤務をやすんだ。11日未明に高根山で女性の全裸死体が発見された。容疑者は現場で逮捕された。
下田署である。殺害されたのは房総で多数が死亡した事件の関係者、織作茜であった。現場で逮捕された男は錯乱してた。小説家、東京の中野在住。外で成仙道という新興宗教のならす音がきこえた。
自宅の村上の回想である。13年、弟、兵吉が失踪した。その一月後に貫一も家をでた。妻に息子、隆之をさがすといった。
12日、下田署である。30すぎの酔っぱらいが保護された。自称医学博士、失職して上野で浮浪者生活、6月はじめに子どもに悪霊をはらってやるといわれた、という。
同日、貫一の自宅である。貫一と妻、美代子、成仙道の刑部がいる。刑部は隆之の居場所がわかるという。隆之は養子だった。実親のことが悶着の原因だった。刑部はそんなことは記憶をけせば、もとのとおり親子関係は修復できるといった。
同日、下田署である。会議で事実が報告。目撃情報が成仙道の信者から多数よせられている。警部補の有馬と村上が韮山に出張することとなった。
13日、韮山にむかう列車の中である。有馬と村上がいる。美代子は昨日、刑部と家をでた。。有馬は山部に貫一の出征中、隆之のことたのむと依頼された。有馬は13年、韮山で駐在所勤務だったころに山部をしった。山部は23年に死亡した。車内を成仙道の信者が占拠してた。
2
6月5日、警視庁の青木刑事が目黒署の河原崎刑事に話す。5月29日、木場刑事が青木に、世田谷の漢方薬局条山房にかかわりがある女性が失踪した。これには霊能者藍童子もかかわりがある。この藍童子には退職した目黒署の岩川警部補もかかわりがある。事件を疑われるのに上司はうごかないと不満を示した。その後木場は失踪した。
さらに話しがつづく。場所は水道橋である。木場は実家によった後の行方がわかわらない。条山房は催眠術を利用して高額の薬を売りつけてた。岩川は藍童子を利用してこの事実をしった。立件を目ざしてたが、突然岩川がやめたので頓挫した。さらに関係者の女性が誘拐された。木場がおってた女性らしい。立入捜査後、5月22日に春子が失踪した。5月29日、河原崎が単身で韓流気道会に乗りこみ、春子を救いだした。現在、個人的に保護してる。春子は木場のことを気にしてる。
6月6日、青木が河原崎に木場の動静を話す。木場が小石川の実家にもどった。父親は3月脳溢血でたおれた。家業の経営と病状が問題となった。母親は、泰斗風水塾に相談し断わられた。華仙故処女には100万円を要求され手付をはらった。妹はこまって、経営を立てなおしてくれるというみちの教え修身会の10日間合宿に参加した。
6月6日、池袋である。青木と河原崎がいる。木場の下宿先には定期的に女性がたずねてきた。それは春子でない。春子は音羽にかくまわれている。ふたりはお潤の酒舗にいった。春子は韮山の山中に土地をもってる。突然韓流気道会の岩井が襲撃してきた。それを条山房の張がふせいだ。外には異様な仮面の人物と集団がいた。
3
5月29日、中野の京極堂である。カストリ雑誌の生きのこり、その編集者、鳥口と京極堂がいる。鳥口は華仙故処女をおってる。彼女は尾国にあやつられている。尾国は死亡したと信じてた。
5月29日、神田神保町である。探偵助手、益田が尾国を調査をおえて事務所にもどった。鳥口、敦子、華仙故処女がいた。
5月29日、中野の京極堂である。多々良が塗仏について鳥口に話す。
5月29日、神田神保町である。華仙故処女、実名、佐伯布由が突然、家族を殺害したと告白した。
5月29日、中野の京極堂である。電話中の京極堂が登場した。
5月29日、神田神保町である。布由の家族は、父、母、兄、本人、祖父の弟の孫である又従兄弟、祖父、父の弟だ。又従兄弟の父が村にいた。村外に勘当された又従兄弟の祖父、大叔父がいた。年に一、二度もどってきた。
尾国は12年秋にはじめてやってきた。その時、駐在がいた。13年の1月と春にもやってきた。尾国がでていった。駐在もでていった。それから村の中がおかしくなった。尾国と大叔父がやってきた。鉈をもって大叔父が奥座敷にあがってきた。騒ぎとなったので、布由がとめにはいった。そこで興奮のあまり家族全員を殺害した。尾国が韮山に逃げて、駐在から山部にたよれと指示した。山部の指示により東京にでた。ここで榎木津が外部の騒音に抗議すると外にでた。布由は奥座敷の開かずの間には、死なない「くんほう様」がいるといった。カランと音がした。見しらぬ男がたっていた。敦子が立ちあがった。
29日、中野の京極堂である。多々良に塗仏のことをきいた。京極堂は違うとのべた。膨大な蘊蓄が披露された。塗仏は揚子江が起源と推測した。多々良は揚子江の民俗にくわしい光安を紹介してほしいと鳥口にたのんだ。鳥口は関口が光安の依頼をうけて、消失した村をさがしにいったといった。そこに益田がやってきた。敦子と華仙故処女が誘拐されたといった。京極堂が騒ぐなといった。
4
6月はじめ、上野である。ある男が見聞したものである。雑司ヶ谷の久遠寺医院の医師見習いをやってた内藤が男にあって身の上話をした。藍童子にあえといわれた。
6月6日、上野である。ある男の見聞である。黒川玉枝が内藤の行方をさがして地下街にきた。そこにいた司という男の助言で榎木津探偵事務所にいくこととなった。
6月10日、韮山である。老婆と宿泊客がいる。主人がおかしくなった。みちの教え修身会の磐田という男にだまされている。娘、麻美子も心配してる。しかし会の仕事を手つだうようになった。敗戦間近かにこのあたりに零戦がとんできたという噂話をした。
同日、同所である。ある男の見聞。加藤只二郎とみちの教え修身会会長の磐田がいる。磐田の実名は岩田壬兵衛である。麻美子が華仙故処女のところから離れた。しかし磐田はインチキと非難してる。自分は納得ずくで参加してる。長い間、家族の世話をしてくらた家政婦、よね子のことが心配だ。成仙道に入信した。磐田がよね子を自分のところにあずけるよう、いった。よね子は成仙道により、過去の記憶をいじられている。元にもどすといった。
6月11日、下田である。泥酔の男が、死霊を退治したと上機嫌だった。ある男をみつけた。無銭飲食で警察がよばれた。
13日、韮山である。ある男、堂島と宿の主人、只二郎がいる。心の迷いにくるしんでる。自分の理想を夢みる。それできめればよいといった。成仙道がやってきた。よね子のおがむ声がする。
下田にいた成仙道が韮山にやってきた。成仙道は只二郎の土地を成仙道の本部の土地としたいと推測した。只二郎が磐田か成仙道かどちらにすべきかたずねた。堂島はゲームの判定者は公平であるべきだといって、立ちさった。
14日、韮山の駐在所である。有馬と村上、淵脇がいる。関口がここにきたことは不知。10日の午後、郷土史家と名のる男がきた。村上は住民台帳の中に故郷の熊野の村の住民の名前を発見した。
14日、韮山である。ある男の見聞。成仙道が集結した。指導者、曹真人、美代子、家政婦の木村よね子、加藤只二郎がいた。成仙道が山中の道にやってきた。そこで羽田製鐵本社社屋の建設予定地であると、制止された。清水の桑田組、小沢だった。成仙道の刑部が、泰斗風水塾南雲にやとわれたと指摘した。土地所有者の三木春子、木村よね子がこちらにいるといった。その土地の中央部分をもつ者も別にいるといった。貫一が隆之とよね子の引きわたしをもとめて刑部にせまった。桑田組のトラックが突入してバリケードの前で横転した。木場が村上を制止した。話しがつづく。
曹真人の輿のところで、成仙道と韓流気道会の男たちが対立した。韓流気道会の岩井が韓大人を代理して抗議してる。木場が春子が自分の意志で成仙道に入信したといった。輿の曹真人が黄金の仮面、眼のとびだした顔をのぞかせた。堂島がこれをみて笑った。
5
6月12日、中野の京極堂である。鳥口の回想である。宮田が事務所にはいってきた。呪文をとなえた。敦子と布由が部屋をでていった。おいかける益田が何かの薬物をかけられて昏倒した。回想がおわる。
京極堂が鳥口に心配は不用だといった。光安と多々良が来訪する予定だといった。長電話の後に、「まさかゲームがつづいているわけじゃないだろうな」といった。二人がきて、揚子江の古代文明の話しがつづけられた。
同日、益田が中野の京極堂にむかう。益田の回想である。事務所に司と玉恵がいた。そこに町田の釣り堀屋の伊佐間がはいってきた。一柳朱美が韮山にむかったと伝言してさった。羽田製鐵の顧問、羽田隆三がはいってきた。調査依頼をすっぽかされたので、人を派遣したが、不幸にも殺害された。羽田製鐵の経営指南、泰斗風水塾、南雲、自分が設立した徐福研究会の世話役、東野がいる。この殺人事件と関係がうたがわれるので、この二人を確保してほしいと依頼した。殺害されたのは織作茜といった。羽田ののこした資料をみた。布由の出身地が韮山だとしった。真相をしった気がしたので、京極堂をたずねることとした。回想がおわる。
京極堂には三人の先客がいた。益田が問題の土地の地図をみせた。光安がへびと村だといった。布由のことをしり興奮した。来客があった。
同日、同所である。青木が京極堂にむかってる。青木の回想である。池袋の酒舗で襲撃をうけた。気がつくと韮山の文化住宅のような部屋だった。敦子と河原崎がいた。敦子は河原崎とともに春子をおってここにきた。敦子と河原崎がさった。華仙故処女と藍童子がはいってきた。藍童子が軽挙妄動しないように京極堂に伝言を依頼してさった。翌日東京にもどった。同日、京極堂にむかっている。途中で柴田財閥の増岡弁護士と合流した。増岡が京極堂に織作茜の殺害をつげた。関口が被疑者であるといった。
13日、甲府である。青木と鳥口が東野を確保した。京極堂が陸軍第十二研究施設で武蔵野連続バラバラ殺人事件に登場する美馬坂とともに研究してたとわかった。
13日、池袋である。益田が京極堂に随行する。京極堂が酒舗のお潤に襲撃のことをきく。木場の下宿に成仙道の勧誘があった。木場は春子を音羽から連れだした、とわかった。
14日、中野である。京極堂に青木、鳥口、益田がいた。東野は本名が佐伯乙松。鏖殺事件の犯人と主張した。この6月20日に殺人事件の時効が完成する。土地購入の話しが持ちあがったので、羽田に土地購入を持ちかけた。京極堂が、相手は人間の記憶を操作できる。殺人がおきる可能性はひくいといった。そこに関口の妻、雪絵と増岡がはいってきた。
柴田財閥から関口のため増岡ではないが弁護士を韮山に派遣される。関口が取り調べにより人格が破壊されるおそれがある。榎木津がはいってきた。榎木津が京極堂に隠し事をやめるよういう。関口が殺人者に仕立てあげられたのは京極堂への嫌がらせだと認めた。
6
15日、韮山である。ある女性がかしてくれた部屋に有馬と村上がいる。有馬は15年前、駐在だった。戸人村とよんでた土地で現在すんでる住民の転入の記録がない。あそこは佐伯の土地。手前が三木屋の土地。成仙道の一行の中に美代子はいたが、隆之はいなかった。そこに一柳朱美がはいってきた。
同日、同所である。鳥口、青木がやってきた。戸人村の入口は大騒ぎとなってた。京極堂によれば、ゲームは6月19日が終了の期限だという。成仙道の曹、みちの教え修身会の磐田、条山房の張、泰斗風水塾の南雲、徐福研究会の東野、華仙故処女、藍童子の八人がそろう必要があるという。羽田製鐵の秘書、津村がやってきた。桑田組の小沢に南雲との顧問契約は解消されたといった。男が逃げだした。南雲だった。
同日、同所、貫一と朱美、有馬がいる。兵吉は6月6日、沼津から失踪した。尾国が連れだしたらしい。有馬は11年から13年6月20日まで駐在に勤務してた。12年夏、山部から戸人村にある不老不死の仙薬の調査を依頼された。山部の使いで尾国がやってきた。布由が保護をもとめたので尾国に引きわたした。翌日、下田に異動した。
同日、同所、青木、鳥口、南雲がいる。戸人村には長期間、空気と水だけで生存できる生き物がいる。くんほう樣という。
6月17日、韮山である。午後8時である。敦子のいる成仙道がすすむ。鳥口、益田、東野こと佐伯乙松がいる。成仙道の後ろで藍童子の一行がやってきた。韓流気道会と成仙道が衝突した。布由が敦子をよんだ。榎木津が登場した。
同日、同所である。鳥口ほか一行がすすむ。
同日、同所である。青木、京極堂、内藤、騎兵隊映画社の川島、光安がすすむ。京極堂は陸軍の研究所、あの武蔵野の研究所に配属された。
そこでは毒瓦斯、風船爆弾の研究、ほかに武蔵野連続バラバラ殺人事件の美馬坂による不死の研究が行われた。京極堂は洗脳実験を担当した。ある男はある周波数の音を一定時間以上きかせると必ずイライラするという実験をやった。成仙道の音がそれだ。即効性のある催眠剤のを研究していた男もいた。記憶を操作する研究をしてる男がいた。闇の中に朱美がいる。兵吉は中野学校の前身に収容された。兵吉は見つからなかったが兄が見つかった。闇の中から有馬と村上があらわれた。
同日、同所である。兵吉誘拐の真相である。山部が日本を伝説の蓬莱と信じた。陸軍のある男の協力をえて徐福伝説の土地、熊野。そして村上一族にたどりついた。伝承していた口伝を聞きだした。兵吉を上京させた。残った一族を戸人村におくりこんだ。彼は記憶を操作しておこなった。おそらく口伝により戸人村の存在を探知した。闇の中に津村がいた。山部は残った津村母子を援助した。山部の死後、陸軍のある男が引きついだ。津村を利用し南雲を使嗾した。あわてた東野が羽田にはたらきかけた。張、宮田、敦子、河原崎がいた。京極堂らは戸人村にいそぐ。
一行は事件のあった戸人村、佐伯家に集結する。そこで京極堂により惨劇の真実が解きあかされる。最後に陸軍のある男との対決がまってる。くんほう樣の実体は何か。最後にあかされる。
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、塗仏の宴、宴の支度その2 [京極夏彦]
その2
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ2
わいら
1
昭和28年5月、世田谷である。雑誌編集員の中禅寺敦子と女がいる。敦子が半日前を回想する。銀座で韓国気道会にねらわれている時にこの女にすくわれた。冒頭にもどる。敦子が韓国気道会との関係をきいた。今日、会に拉致されたが、逃走した。華仙故処女という。未来を予知し、かえる力があるというが、本当は誰かが自分をあやつってる気がする。突然、韓流気道会の連中が襲撃してきた。
2
翌日、世田谷である。敦子がめざめると華仙故処女が手当をしてくれた。敦子が一月前のことを回想する。韓流気道会の道場を取材した。師範代が掌をむけるだけで弟子がたおれた。科学の作用反作用の原理にはんすると思った。率直な記事を掲載すると、厳重な抗議があった。いつしか眠っていた。さめると男がいた。漢方薬局、条山房の宮田といった。自分の師、通玄が昨夜の暴漢を退治したといった。また眠った。華仙故処女が雑誌掲載予定の妖怪をみてた、わいらという。華仙故処女が自分のことを話す。
相談者から謝礼をもらって生活をたてている。しかし、相談者の氏名、住所、身分をしらない。相談をうけた時に何をいうかもわからないのに、あうと言葉がでてくる。それがあたるという。自分の経歴を話す。
昭和13年、上京、女給、女工、女中をやった。高給料理店の仲居となった。いつしかその能力が評判となり有名となった。料亭をやめ、有楽町に隠遁生活をはじめた。韓流気道会が自分に何をさせようとしてるのかわからない。会は政治団体という。過去の記憶はかたれない。実名は佐伯布由といった。
3
翌々日、神田神保町である。ふたりは榎木津探偵社で榎木津とあった。探偵助手、益田が過去の事件で関わりがあった人物の血縁、羽田製鐵、羽田隆三が来訪するという。敦子は榎木津の特殊能力に期待して華仙故処女をあわせることとした。榎木津がやってきてお前は誰だ、といった。自分のことを告白した。
15歳の時、家族と村人全員をを殺害したといって、部屋からでていった。それをおっていった敦子は布由をみつけた。そこに韓流気道会の岩井がいた。そこに榎木津が登場して悪漢を退治した。調査した結果、華仙故処女のところに薬売りの男が出入りしてる。その男のことはしらないというが、写真をみせると、殺害されたという。それが生きているとしって布由は驚く。これから霊能者華仙故処女の謎がときあかされる。
しょうけら
1
4月、池袋、警視庁刑事、木場が酒舗の女主人、お潤が紹介した女の相談事をきいている。はじめ無愛想に応対したら、照魔の術をつかう藍童子に相談するというので、相談をうけることとした。
女は三木春子、26歳、静岡出身。上京し縫製工場につとめてる。家族はいない。工場の宿舎にすんでる。近所の新聞配達員、工藤信夫という男が、27年秋から自分に付きまとって迷惑してるという。いったん注意されて離れたが、2月から手紙がきはじめた。春子の一日の行動が克明にしるしてる。一々合致した。本人は真面目に勤務してる。監視はできない。しかし手紙が的確に指摘してる。気持がわるい。工藤のことである。
工藤が春子のことを見そめたのは長寿延命講でである。それは健康法をおしえ、施薬し、話し合いをする。昔の庚申講のようなものである。60日ごとにくる庚申の日は体内にすむ虫がぬけだす。ぬけだすと寿命がちじまる。そのため眠らないでおきてる。主宰者の通玄が次の庚申の日までの詳細な健康指導をする。これをまもらなかったら次の庚申の日に一々指摘される。そして薬が処方される。高価である。4月10日に庚申の日があった。それでやめた。それは藍童子に長寿延命講のいかがわしさを指摘されたからという。
藍童子は健康をねがう参加者につけこんで高価な薬をうるのが目的と指摘した。詳細な健康指導をすべて守るのは不可能である。高価な薬を購入することとなる。自分も遺産を売却して薬代にあてようかと思った。財産は土地であるといった。木場は藍童子も同類だといった。
2
4月、中野である。木場が京極堂をたずね、庚申のことをきいた。庚申の日の定義、体内の虫が抜けでて天帝に告げ口する。それをふせぐため徹夜するという庚申講の話し、さらに仏教、道教との関係など膨大な蘊蓄がかたられた。最後に木場に、工場、寮、長寿延命講の道場の現場調査をすすめた。工藤の手紙に春子が工藤の手紙をよんだという記載があるか、調べるよう助言した。
3
4月、池袋の近く、東長崎である。木場が春子の寮の部屋で話す。工藤の手紙がそれをもらった春子の様子にふれてないことがわかった。春子もふくめ、通玄の細かな指示をすべてはまもってない。道場のやりかたを、もう一度ききなおした。庚申の日の午後四時に講がはじまる。参加者は条山房に集合。二時間の講義、健康体操、その時、呼ばれて個室で診察。ひとり十分くらい。全員が終了するのは深夜。診察の時に指示に違反したことを指摘される。薬の処方箋が弟子にわたされる。その後、修身部屋に移動。朝まですごす。弟子から処方された薬をもらい、注意事項が口頭で伝達。メモはゆるされない。後で、メモしたりする。春子は記憶力に自信があるので記憶できる。木場が再度、きいた。
仮眠室がある。そこで仮眠するが、弟子がやってきて一時間、呪文を唱えさせられる。真相はわからないまま、ふたりは寮を出て、工藤が勤務してる新聞販売店の前をとおった。工藤が窃盗容疑で逮捕されたのを目撃する。ここに藍童子がやってきた。条山房のからくりが暴かれる。
おとろし
1
5月、千葉の興津町である。「絡新婦の理」の事件で家族をうしなった織作茜は、館を羽田製鐵の羽田隆三に売却することとしてる。羽田がやってきた。羽田は経営コンサルタントとしてやとった泰斗風水塾の南雲正司について、不審なところがあった。調査を榎木津に依頼したい。その仲介を依頼した。不審とは本社社屋のため伊豆に土地を購入するという提言だった。話しがおわって、羽田は自分が関係してる徐福研究会を手伝はないかと打診した。研究会は東野という男にまかせたが、伊豆の山中の土地を購入するよう提案した。不審だといった。
2
東京の目黒である。ホテルで多々良勝五郎とあう。茜が京極堂に依頼した。そのために多々良がやってきた。屋敷神である石長比売命を適当な神社におさめたい。どこがよいかときいた。西伊豆の雲見と烏帽子山の雲見浅間神社をおしえられた。羽田の屋敷をたずねた。南雲と東野が推薦した土地は同一場所だといった。その土地は、三木という女性、加藤という男性の所有だった。
3
6月、下田である。羽田の秘書、津村と茜は下田富士にやってきた。あるきながら茜が話す。一昨日、甲府で東野にあった。津村は隣家をかりてると指摘した。また巡回研ぎ師津村辰蔵は父親だと指摘した。津村は身の上話をして、父親が惨劇をしり、官憲に尋問された後に自殺した。自殺に追いこんだ首謀者をしりたいと動機をかたった。茜が事件は昭和13年6月20日におきた。この6月20日で時効となる、と考えた。頂上で郷土史家と名のる男とあった。屋敷神の奉納のことを話した。ここは不適当だろうといわれた。
4
6月、下田である。茜は蓮台寺温泉の露天風呂にはいってた。ここで悲劇がおきた。
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、塗仏の宴、宴の支度 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ
ぬっぺぽう
1
昭和28年6月、伊豆、小説家関口の回想である。伊豆韮山の淵脇巡査と郷土史家堂島とともに関口がとある廃屋にいた。伊豆には6月4日にはいった。さらに回想する。5月下旬、カストリ雑誌の生き残り、實録犯罪の編集員の妹尾が中野の関口をたずねた。社長の友人の光安という人がいる。かって勤務してた駐在所をたずねたが、その村たなくなってたという。27年再訪した。見おぼえのある家があった。村人にきいたが、まったくしらない。村名もちがってた。不可解にとまどう関口に、ある記事の切り抜きがしめされた。それによると、昭和13年6月20日におとづれた巡回研ぎ師津村辰蔵が村人が全員失踪したことを発見したというものだった。関口は取材のため光安をたずねた。
2
南千住である。しばらく話しをした。光安は「ぬっぺらぼう」という妖怪を研究してるという。「ぼう」は「ほう」である。これは、一名、肉人という。たべれば百人力となる。白沢図にでてくる「封」というものだ。白沢は神獣、漢方薬の守護神である。封と白沢図がこの戸人村の佐伯家にあったという。光安の話しがつづく。
駿豆鉄道の原木駅と韮山駅のあいだ、山にむかい、ひとつ山をこしたところにあった。村の入口には三木屋という雑貨店があった。佐伯家は家族が7人、駐在所はそのちかくにあった。昭和12年9月にこれらがあることをしった。復員後、戸人村をたずねたといった。まだ関口の回想がつづく。
3
関口が淵脇巡査にたずねた。村にむかう人はいない。27年夏、進駐軍のジープがいったのを思いだした。27年秋に光安がとおらなかったかきいた。いた。村がなくなったと興奮してたという。巡回研ぎ師津村のことをしってる古老がいた。さらに10数年前、光安らしき青年が村にむかっていったという古老がいた。駐在所を和服の男がとおった。郷土史家、堂島静軒という。
26年に訪問したが不審なことがあるので再訪する。二人も同行した。熊田という家をたずねた。質問をした。手紙の束をみせてもらった。送り主は熊田要一、住所は下田だが、消印は東京中央郵便局だった。堂島は熊田は15年ほど前に宮城からここにきた。ここにすんでるという記憶をあたえられたといった。さらにすすむ。進駐軍のすてた洋モクらしきものを発見した。佐伯家を発見した。家の中にはいった。奥の間にはいった。床の間の隠し部屋に白沢図と封を発見した。これで事項1の冒頭にもどる。
うわん
1
3月、沼津である。朱美が海岸で自殺に失敗した男をみつけた。家で治療した。夕食の支度で外にでた。隣家の松嶋ナツにあった。新興宗教の成仙道の男を追いだしてた。
2
翌日、訪問販売の薬売り、尾国誠一と朱美が話してる。朱美の夫は尾国の紹介から薬売りをするようになった。村上の話しである。昨日、また自殺をしようとして失敗、病院にはこばれた。自殺の原因の話しとなった。経営してたネジ工場がつぶれた。しかし、みちの教え修身会という団体の会合に参加して元気になった。不可解だ。朱美が昨日きいた村上の話しをする。
村上兵吉、紀州熊野生まれ。昭和14年、ある神社から男にさそわれ家出した。それは徐福縁故の神社だ。徐福は大昔、中国から日本に珍しい薬をもとめてやってきた方士だ。徐福伝説は、佐賀の金立神社、丹後の新井崎神社、熊野の阿須賀神社、富士山周辺にもおおい。平吉の話しにもどる。
東京の中野にいったが、脱走した。板橋にゆき、茨城で工場主にひろわれた。徴兵をのがれ、終戦をむかえた。故郷にもどって戸籍をしらべたが、13年死亡となってた。工場主の養子となった。工場を閉鎖して東京にでた。27年春東京中央郵便局ではたらいた。そこで父親の名前を発見した。差出人は兄だった。集落全員の名前を発見したが差出人の住所は、下田、白浜、堂ヶ島、韮山、沼津だった。たずねたがすべて別人だった。平吉は不安な気持となった。尾国は不審な態度をしめした。朱美は警戒心をだくようになった。
3
翌々日、沼津の病院である。朱美とナツが村上のベッドの側にいる。村上が三度目の自殺をくわだてた。朱美の回想である。昨日、尾国が成仙道の男とにらみあった。報せがきたので病院にいった。村上の意識がもどったのは夜半だった。家にもどって、寝た。ナツにおこされて、病院にもどった。途中で成仙道の行列にあった。何故死のうと思ったのかときかれて、わからないと村上がこたえた。部屋に成仙道の刑部と名のる男がはいってきた。刑部が村上の財産をねらって自殺を誘導しようとしてる。それはみちの教え修身会だろうといった。村上が錯乱する。刑部が呪文をとなえた。禁呪をといたといった。男がはいってきた。尾国だった。謎をとき、刑部のインチキをあばいた。
ひょうすべ
1
ぬっぺぽうの冒頭にもどる。伊豆にいる関口が回想してる。1月3日、古書店京極堂で宮村香奈男にあった。宮村の口から「ひょうすべ」という言葉がでた。ここで京極堂が膨大な蘊蓄を展開した。話しがあらたまって、宮村が雑誌編集員の加藤麻美子の相談事を話す。27年、麻美子はひょうすべをみた。その祟りで子どもをなくした。かって麻美子は祖父只二郎とひょうすべをみた。その時、祟りがあると教えてくれた。ところが只二郎はまったく覚えていない。大丈夫だろうかと宮村に相談した。それには新興宗教が関係してる。昨年、みちの教え修身会にはいった。相当の寄付もした。そこで記憶をけされたのではと疑ってる。
2
事項1と同じ、場所、時期、関口が宮村との第二回目の出会いを回想する。3月初旬だった。近代文藝編集部であった。麻美子もいた。喫茶店で相談された。只二郎は会の指導員となった。会社の財産である山林を会に提供するつもりだという。会の主宰者磐田純陽の写真をみせられた。頬にQQ絆が貼ってあった。二度目の目撃談をおえた時、癇癪玉が破裂する音がした。がしゃんと音がして蜜豆が散乱した。
3
関口が同じく回想する。第三回目の出会いだった。4月下旬、京極堂をたずねると、鉄道唱歌がきこえてきた。麻美子と宮村がやってきた。子どもをなくした当時の話しとなった。京極堂は事情をきいて、謎と陰謀を解きあかした。
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、絡新婦の理その3 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのそくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ3
9,10,11
第18日目、勝浦町である。理事長室で美由紀が回想する。隆夫の犯行を隠匿するため学院が美由紀ほかを幽閉。翌日、生徒のほとんどが帰宅。3日目、学長室で真佐子が美由紀の話しをきく。その後、碧がよばれる。理事長室で美由紀と碧が対峙。碧が自分を正当化した。榎木津が哀れむ。碧が隙をみて逃走。木場が登場した。
学院関係者にも目潰し魔の被害者がいる。事情をきくため、きたという。隆夫が碧を人質に逃走。屋上につづく扉の前で隆夫が対決。到着した京極堂が話しかける。偽装誘拐をやめるよう碧にいう。碧に危険を警告する。木場に保護される。屋上ににげた隆夫は榎木津に取りおさえられる。引きわたしをもとめる警察を制し京極堂が事情をあきらかにし、事件を解決にみちびくと約束する。
京極堂は学院の成りたち、学院の七不思議、さらに連続絞殺魔事件、連続目潰し魔事件、蜘蛛の巣の僕の秘密をあばく。おおくの死が生じた後、真犯人の蜘蛛が指摘され、事件は終結する。
日目 | 勝浦 | 奥津 | その他 |
---|---|---|---|
27年 | 12月、目潰魔純子殺害 |
4月、紫死亡 10月、絞殺魔弓技殺害 |
5月、信濃町、目潰魔妙子殺害 |
第1 | 28年2月、四谷、目潰魔八千代殺害 | ||
第2 |
絞殺魔本田殺害 夕子、小夜子投身 |
||
第8 | 雄之介、死亡 | ||
第9 | 是亮脅迫、小夜子約束 | ||
第11 | 海棠、美由紀脅迫 | 絞殺魔是亮殺害 | |
第12 |
四谷、志摩子逃亡 神保町、美江榎木津依頼 中野、増岡京極堂依頼 |
||
第14 |
榎木津絞殺魔指摘 絞殺魔小夜子殺害、海棠負傷 隆夫捕縛 |
目潰魔志摩子殺害 | |
第15 | 生徒帰宅 | 今川、依頼、京極受諾 | |
第18 |
京極堂、憑き物おとし 2名死亡 |
京極堂、憑き物おとし 3名死亡 |
|
4月 | 京極堂、真犯人指摘 |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、絡新婦の理その2 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ 不用意にのそくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ2
5
第11日目の夜、木場が池袋、酒場、猫目洞の女主人、お潤と対話した。川島犯人説を疑問視線した。凶器は平野のものと断定された。騎兵隊映画社の不審な女の存在が問題となった。蜘蛛にきけといった発言の真意は何か。眼鏡にのこる指紋の身元は誰か。蜘蛛の差配がある。平野が潜伏先はどこか。お潤が降旗の居場所をおしえた。
第12日目、降旗にあう。平野のことをきく。平野は視線恐怖症。窃視嗜好のある性的倒錯者。その原因は、妻の不倫。それをのぞきみて性的興奮をおぼえた。その事実をしった妻は自殺。罪悪感から発症した。鑿(のみ)で女性の眼をつくのは性行為の代替だ。平野に降旗を紹介したのは誰かきく。川島喜市が知人から紹介をうけた。その人物は降旗の恩師と親交があった。織作雄之介の次女か三女。木場に蜘蛛にねらわれている女がいるとつげる。志麻子という。監察医里村にあいにいった。
残った破片から同一と断定した。水道橋に下宿の青木とともに多田とあう。入口でねてるので帰る時には必ず気がつくといった。戸の開閉音は隣家との隙間に隠れていた前島貞輔にはっきりきこえなかったことが判明。ふたたび多田に質問。八千代の友禅を受けだすから質札をかえせといった。木場が平野の行動を推理する。
まず旅館に侵入。3時、川島がでる。八千代がねてる部屋に侵入。殺害。施錠。川島が眼鏡のため、ふたたび部屋にもどる。施錠のためそのまま退去。6時半、多田が部屋に死体を発見。平野は友禅のかけられてた衣桁屏風に潜伏。警察に通報のため多田が退去。平野が脱出。警察にむかう途中で友禅を窃取するためまたもどる。それを質入れ。警察に通報。木場は八千代殺害の背後に第三者が存在すると感じた。
質屋を尋問。川島喜市、千葉の興津町茂浦の川島喜市が受けだしてた。木場が四谷署の前で警察に尋問されてる志麻子にあった。
6
第14日目、興津町である。伊佐間と今川が織作の蜘蛛の巣館の墓所にいる。是亮殺害から四日目。茜が警察がよんでると伝言。伊佐間の回想である。遺体から藁が検出された。五百子が女を目撃という。セツがはいってきて噂話をする。
茜と是亮の間には夫婦関係がなかった。葵は立派。碧はあまり可愛がられてない。紫は雄之介に可愛がられてた。雄之介は是亮の横領を叱責すると、売春事件を世間にもらすと反抗した。雄之介と真佐子は別の部屋でねる。雄之介死亡は茜が発見。真佐子の亡母、貞子は五百子の娘。ただし嘉右衛門が外の女にうませた子。五百子の実子はなくなった。織作の血はたえたといった。碧がはいってきた。
セツがでていった。木場がやってきた。葵に川島喜市のことをきいた。不知。茜にきく。しってるが付きあいはない。27年4月になくなた紫は付きあいがあったようだ。紫の死亡後に紫宛の手紙をうけとった茜が雄之介に相談し医者を紹介した。喜市の住所から茂浦の売春小屋の話しとなる。葵が石田とい女性が性的虐待をうけてたと非難する。茜が石田に子どもがいたという。
伊佐間と木場が対話する。目潰し魔の事件を説明する。騎兵隊映画社で新造に頸を絞められていた娼婦、高橋志摩子は喜市らしき男を尾行し映画社に乗りこんだという。この話しには蜘蛛がたくさん登場する。志麻子は紅蜘蛛の異名をもつ。喜市は蜘蛛の使いを名のる。八千代への電話の主も蜘蛛の使いを名のる。川島新造がいいのこした言葉にも蜘蛛がでる。
四谷署の刑事が志麻子誘拐を連絡した。木場ほかが茂浦の小屋にむかった。木場が志麻子は進駐軍特殊慰安施設にいたという。近づくと川島新造と志麻子の影がみえた。木場が川島に喜市のことをきいた。喜市は腹違いの弟。本名は石田喜市。平野が鑿を振りまわし逃走した。小屋の中に志麻子の死体があった。
7
第14日目、勝浦町、聖ベルナール女学院の教員棟の3階で海棠が美由紀を尋問する。美由紀の回想である。小夜子が飛びおりたと思ってのでかけおりた。教師の声で生徒が死んだといった。そこで美由紀が失神した。気がつくと保険医と学長と刑事の顔があった。これまでのことを説明した。本田は無精子症で妊娠させる可能性はない。死んだのは夕子。小夜子は怪我しただけ。碧は黒い聖母をみたことを否定した。美由紀は混乱した。尋問は中断された。次に是亮に呼びだされた。売春の告白をせまった。柴田勇治がはいってきた。一般棟から個室棟にうつった。
小夜子がやってきて美由紀をまもると約束した。翌日、また是亮によばれた。金をだせと脅した。美由紀は呉仁吉に金が必要と手紙をかいた。雄之介の死をしった。その翌日、織作家の葬式で学院に人がいなくなった。美由紀と小夜子が話してるところに是亮がやってきた。売春の元締めは、自分が川野にたのまれて、やとったあの男だといった。さらにまた金をだせといった。小夜子が二日まってくれといった。美由紀は部屋に逃げかえった。泣いてると仁吉がはいってきて、一万三百五円の金をくれた。美由紀は自分の力で真相を究明しようと決心した。
窓の外をみた。自分が監視されてることに気づいた。そして考えた。小夜子は飛びおりた。それを庭で誰かが受けとめた。それは本田の殺害犯だ。黒い聖母は男だ。小夜子は救助者をしってる。そして沈黙する。夕子は自殺か事故死だ。碧が何故偽証したのか。それは碧が蜘蛛の僕の中心人物だから。碧は夕子の裏切りを許さなかった。外に柴田前理事長ほかが教員棟にはいるのがみえた。小夜子がはいってきた。
緊急職員会議がひらかれる。是亮が殺害された。小夜子に黒い聖母は誰かときいた。美由紀は教員棟の柴田にあった。真相を説明した。何故、是亮に脅迫されたのかきかれた。舎監に個室棟にもどされた。その夜、海棠という柴田財閥の男があらわれて売春をしてる者の名簿をだせとせまった。その翌日、学長室で学長と柴田にあった。小夜子の話しもきいたらしい。困惑してた。その翌日に海棠によばれた。回想おわり、冒頭にもどる。
あいかわらず名簿を要求する。小夜子には、もう一日まってくれといわれたという。先日の会議室につれていかれた。不平をいう男がいた。何をすればよいのか。絞殺魔をつかまえるのか、目潰し魔をつかまえるのか。探偵、榎木津だった。海棠をみて下品なことを考えてるという。美由紀をみて、黒い変態が犯人だという。ここにいる益田に詳細を話せといった。ここにいうる杉浦美江の配偶者、炊事場にいる男だという。益田に隆夫が犯人だから、かえってきたら、つかまえろといって、外にでた。益田、杉浦美江がのこった。
写真から隆夫の身元が確認される。益田がこの事件はうまく仕くまれている。隆夫が犯人と指摘されると、また怪しい人物がうかんでくるだろうという。益田は売春をみとめようとしない教員を無視して、美由紀と美江の話しから事件を再構築する。
是亮は弓技のパトロン。学院理事長に就任する際に弓技の情夫、隆夫を職員として採用した。被害者、川野、山本、本田、前島はすべて呪いの対象だった。学院にもどってきた碧に事情をきくこととなった。
碧は前言を訂正して、小夜子は飛びおりた。黒い聖母はみてない。夕子のことは失神してたのでわからないといった。小夜子に事情をきくこととなった。碧は海棠といっしょにいたといった。殺人発生のおそれがあるので、現場にいそいだ。学長に礼拝堂の文字は何とかいてあるかきいた。不知。礼拝堂の裏のお宮にきた。小夜子の絞殺死体があった。海棠がおそわれた。黒い女物の着物をきた隆夫だった。榎木津が海棠救出の事情を説明した。益田はすでに小夜子は死亡してたといった。碧は一瞬おどろいた。榎木津が碧も誰かにあやつれてる。京極堂をよべといった。
8
第15日目、中野である。益田が京極堂の出番を依頼する。京極堂が自分がでていっても事態はかわらないと拒否する。そして、真犯人は次の犯人は葵と示唆してるという。隆夫の話しとなる。
隆夫は犯行をみとめた。売春との関係もみとめた。弓技は昭和27年以前から売春の周旋をやってた。隆夫は、以前少女に助けらた経験があるので、憤慨してた。しかしさからえなかった。27年9月、浅草のいかがわしい秘密倶楽部で弓技と密接な関係となって、手先として学院のおくりこまれた。ここで弓技と対立した。そのため弓技は殺害された。10月半ばだった。本田の非行をしり、小夜子に同情して殺害した。さらに飛びおりた小夜子を救助した。小夜子は隆夫に是亮殺害を依頼した。京極堂が何故小夜子を殺害したかときく。不答。海棠襲撃についてきく。一人の生徒が海棠にメモをわたした。その指示でやってきたら、隆夫におそわれた。京極堂は碧が夕子殺害の容疑者として逮捕され、売春組織は発覚するだろうという。敦子が依頼した調査結果をもってやってくるという。その結果である。
昭和27年春、出版の雑誌である。「近代女性」に前島八千代、「社会と女性」に山本純子、織作葵、「獵奇實話」に川野弓技がでてた。高橋志摩子が「近代婦人」にでてた。京極堂は雑誌に掲載されたことが殺害の動機となってるという。青木が目潰し魔の話しをする。
現在、川島喜市は所在不明、平野は逃走中。多田の行動である。事件の前々日に喜市らしき男がやってきた。着物をはぎとり、質入れする手筈を了解。あらかじめ仕くんでやった。新造の話しである。家出したため川島家では喜市を跡取りとして昭和10年ひきとった。実母、芳江は昭和20年死亡。新造は16年、もどってきた。そのため喜市は跡取りの座をうしなった。喜市からの連絡はあった。しかし27年5月以降たえた。28年1月、ふたたび新造の前にあらわれた。それから騎兵隊映画社に居候することとなった。今回の事件の話しである。
喜市は毎日外出、何かをさぐってた。蜘蛛と名のる電話がかかってきた。事件の前夜、喜市と八千代の長電話をきいていた。事件当日、新造は喜市を失神させて外出を阻止した。喜市が連絡してた男のところにいった。事情をきいて計画を中止といって、自分が身代わりで出かけた。八千代にあった。騎兵隊映画社にもどった。逃走してた。しかし房総の茂浦で喜市をみつけた。喜市の話しである。
零時に気がついた。徒歩で翌朝、多田を発見した。質屋から受けだした。殺人事件をしり逃走した。喜市は27年初夏、千葉をたずねた。そこである人から母が首吊り自殺したことをしった。娼婦扱いをうけたことが原因らしい。しらべると三人の娼婦がうかんだ。彼女たちは芳江の小屋に寄宿し、ついに売春を強要した。それが八千代、志摩子、弓技である。話しがつづく。
まず弓技を発見した。接触をとったとたんに殺害された。仕事をやめ、新造のところに寄宿した。八千代殺害をしった時、狂乱した。志摩子に接触しようとしたが、また殺害されることをおそれた。新造は喜市のため志摩子を引きあわせることとし茂浦につれてきた。京極堂が蜘蛛は長期的に計画をたててすすめてると指摘した。今川がやってきた。
京極堂に仕事をたのんだ。一つは今川がかった神像の鑑定である。もう一つは織作家の呪い、天女の呪いを解いてほしいとたのんだ。了解した。
事情を説明する。葵の名前がでる。関係が浮かびあがる。増岡が職員名簿の中に杉浦隆夫の名前を発見する。厨房の臨時職員に昭和27年9月に採用とあった。京極堂はこれはあらかじめしこまれたもの、杉浦が疑わしいというのが、あらかじめ用意された答という。
日目 | 勝浦 | 奥津 | その他 |
---|---|---|---|
27年 | 12月、目潰魔純子殺害 |
4月、紫死亡 10月、絞殺魔弓技殺害 |
5月、信濃町、目潰魔妙子殺害 |
第1 | 28年2月、四谷、目潰魔八千代殺害 | ||
第2 |
絞殺魔本田殺害 夕子、小夜子投身 |
||
第8 | 雄之介、死亡 | ||
第9 | 是亮脅迫、小夜子約束 | ||
第11 | 海棠、美由紀脅迫 | 絞殺魔是亮殺害 | |
第12 |
四谷、志摩子逃亡 神保町、美江榎木津依頼 中野、増岡京極堂依頼 |
||
第14 |
榎木津絞殺魔指摘 絞殺魔小夜子殺害、海棠負傷 隆夫捕縛 |
目潰魔志摩子殺害 | |
第15 | 生徒帰宅 | 今川、依頼、京極受諾 | |
第18 |
京極堂、憑き物おとし 2名死亡 |
京極堂、憑き物おとし 3名死亡 |
|
4月 | 京極堂、真犯人指摘 |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。 -
謎解き京極、絡新婦の理 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ
1
第一日目、昭和28年2月、東京、四谷である。警視庁の刑事長門、木下、木場が両眼をつぶされた女をみて、連続殺人の容疑者、平野祐吉が犯人だろうといった。刑事、青木が犯人は大柄、禿頭だったといった。
平野の犯行は27年の初夏から年末にかけて発生した。信濃町の地主の娘、矢野妙子、平野の借家で発生。10月半ば、川野弓技、水商売の女。千葉の興津町。師走、千葉の勝浦町、山本純子、女学校教師。木場ば部屋の窓をしめようとした時、女郎蜘蛛を発見した。千葉、警視庁、所轄の合同捜査本部が設置された。
木場が目撃者であり事件発生の旅館の主人、多田マキと話した。あまりおきるのが遅いので部屋にいった。そこで発見。女は奥様風、男は大男、禿頭。木場が川島新造を思いだした。服装は鳥目でわからなかった。部屋にはいったのは夜11時すぎ。男がいつかえったのかわからない。いってみたら中から鍵がかかってた。蹴りたおしてはいった。木場は外にでた犯人が外から、鍵のかかった状況にもどすのは無理だと確認した。隣家との間に黒眼鏡がおちてた。捜査会議後である。
長門と木場が信濃町に聞きこみにいった。平野の友人、酒井印刷所勤務の川島喜市は一月前にやめてた。被害者の身元が判明した。日本橋の呉服店の妻だった。警察の不審尋問に夫、前島貞輔がひかかった。妻を尾行してた。妻の電話を傍受したことから疑うようになった。売春行為を確信した。旅館は四谷暗坂。坂の入口で大男にあった。兵隊服をきてた。男がはいったのは夜の11時、でたのが午前3時、午前7時に多田がでてきた。さらに貞輔の話しである。
いったんでて、10分ほどしてもどってきた。またはいってすぐでた。それからもどらなかった。6時半頃、多田がでてきた。またもどったようだ。隣家の間にかくれてたので推測だ。手に風呂敷をもって、でていった。しばらくして警官をつれてもどってきた。8時半だった。もどりが遅い、どこかによったと推理された。死亡推定時刻は午前3時。木場の友人、降旗弘は精神科の医者をしてた。医者をやめる直前、平野の犯行の前日に診察をしたとしった。
信濃町の屋台でのんだ後、池袋の騎兵隊映画社に川島新造をたずねた。ビルから川島がにげた。その時、蜘蛛にきけといった。刑事がおってきた。事務所に踏みこむと女を殺そうとしてたといった。
2
第一日目、千葉の勝浦町である。美由紀は全寮制、基督教系の女学校に在学してる。図書室の壁の基督は泣くという。図書室の入口の横に渡辺小夜子がたってた。庭にでて話す。小夜子は黒い聖母の噂は嘘だ。師走に殺害された教師、山本の犯人は変質者だった。麻田夕子が噂の火元だ。夕子が売春をしていたのを山本が知った。厳しく調べられた。自主退学をすすめられた。夕子は政治家の娘。こまって13番目の白羊宮の星座石に殺すよう願をかけた。
星座石とは学校の敷地内に埋めこまれている一尺四方の平たい石である。礼拝堂を取りかこむようにほぼ円をえがいてならんでる。白羊宮は礼拝堂の裏手、お宮の前にある。お宮には真っ黒い仏像のようなものがある。それが黒い聖母である。聖母は夜に徘徊するという。小夜子がいう。
満月の夜、儀式をする。呪いころしたい相手の名をいう。すると次の満月の日までに必ず相手は死ぬ。前例があるという。夕子に儀式のやりかたをきく。小夜子の実家は昨年経済状態が悪くなった。教師、本田はその弱味につけこんで小夜子を陵辱したという。学校の話しである。坂本百合子の話しである。
聖ベルナール女学院は大正期の創立である。房総半島の先端に所在する。美由紀は小夜子が夕子に会うのに立ち会うことにした。呪いの儀式である。黒い聖母は女だから対象は男だけ。七不思議が説明される。血をすう黒い聖母、十三枚の星座石、涙をながす基督の絵、開かずの告解室、血のしたたる御不浄、ひとりで鳴る洋琴、十字架の裏の大蜘蛛である。この大蜘蛛が目潰し魔である。儀式は満月の夜の12時に、そこの星座石の上に立って呪いころしたい相手の名前をいう。儀式は集団でおこなわれる。美由紀は呪いころしたい人がいるのでその集団の人を紹介してほしいといった。百合子が思わすもらしそうになってやめた。振りむくとそこに厨房職員の男がたっていた。小夜子はあれは、学院創設者の孫、学院一の才媛のことかときいた。人の気配がした。お宮の脇の壁に指の跡がついてた。
第二日目、放課後、美由紀と小夜子のところに百合子がくる。仲間になる必要がある。美由紀が小夜子をおいて百合子と星座石にむかう。姿をみせない相手に証拠をみせてほしいという。夕子があらわれ、たおれた。小夜子が本当かと夕子をせめる。夜、夕子の部屋にいく。
夕子が蜘蛛の僕の集団について話す。それは呪いの儀式をする。売春をする。基督を汚すためだ。あの方が魔法書をもってきて実行することとなった。売春もある筋にたのんで実行した。あの方は悪魔と契約した。悪辣な淫売はしんだ。山本もしんだ。疑う美由紀に三人目の呪いが本当かどうか今夜わかるという。対象は淫売の仲間、前島八千代だ。そこに織作碧がはいってきた。注意をしてさった。新聞の切り抜きがあった。それは八千代殺害の記事だった。
小夜子が本田に呪いをかけたと恐怖におののく。興奮して外に飛びだす。おっていった美由紀は碧にあう。中庭にたつ。校舎にたどりつく。女の着物がひるがえる。碧が黒い聖母だという。夕子が小夜子が校舎の二階にいるらしいという。悲鳴がきこえる。美由紀、夕子、碧がつづく。屋上に出る。そこに本田の死体が横たわっていた。小夜子がわめきながら屋上から身をなげた。
3
第10日目、千葉の興津町である。町田で釣り堀屋をしてる伊佐間が葬列をみてる。元漁師の呉仁吉老人がいる。織作紡織機の織作雄之介の葬式である。毒殺との噂がある。織作家には天人女房の祟りがある。女房の怒りが祟りとなって入り婿を殺すという。明治以降の話しである。明治、大正にかけて織物でもうけた。明治35年、蜘蛛の巣館を建設。勝浦町に女学院を建設。ここに仁吉の孫娘が在学。昨年死亡した財界の大物、柴田燿弘と先代は密接な関係をもっていた。雄之介の代に織作紡織機は柴田グループの傘下にはいった。雄之介自身も柴田の片腕として活躍した。話しがつづく。
雄之介は越後の出身、大正14年に婿養子縁組。先代も先々代も婿養子。毒殺の噂である。去年の春に長女の紫が急死した時も噂がでた。葬列の話しである。喪主、妻の真佐子、次女の茜、三女の葵、四女の碧がつづく。昭和25年、茜が婿をとった。使用人の息子、是亮という。是亮は柴田財閥の系列会社の経営に失敗、昭和27年、別の子会社に出向。退職。昭和27年の秋に学院の職をあてがわれた。現在、当主が不在。織作家の使用人の出門耕作がはいってきた。
是亮の父親だ。是亮は葬式に参加してないといった。釣りの話しとなる。出門が釣り場、茂浦の首吊り小屋に灯りがついていた。昨夜のこと。かって芳江という女がすんでた。今は廃屋だ。芳江は昭和8年ころきた。8年前に首をつった。男の子がいたが、昭和10年、どこかの跡取りとして引きとられた。そこは淫売小屋との噂もあった。仁吉が海からひろいあげた仏像の話しとなった。昭和2年のことだった。仁吉は金がいる。仏像などの蒐集品をうりたい。伊佐間が知人の今川を紹介した。今川が来訪する予定だ。出門は今川に織作家によってほしいとたのんだ。辞去した。夕方、今川が到着した。
今川が蒐集品を鑑定した。仏像は神像だった。言い値でかった。明日織作家によることとし、今夜宿泊することとなった。酒宴の後、ねた。
第11日目、朝、傘と蓑、女物の着物をきた男がとおった。朝食後、7時に二人は辞去。坂の上の館についた。前庭に桜がうえらてた。通用門で女中のセツと悶着をおこし、出門にむかえられた。中の構造は複雑だった。今川が立体的かつ放射状に部屋があるといった。伊佐間がならば、蜘蛛の巣の中心はどこかと思った。部屋で真佐子にあう。出門に是亮がどこかきいた。出門はひかている。隣室の書画の部屋、陶磁器の部屋にはいった。今川に言い値で引きとってほしいという。伊佐間が窓の外の墓場をみつけた。今朝みた蓑がひかった。是亮と茜がはいってきた。是亮が骨董品の売却を非難し悶着となる。真佐子が叱責した。でていった。葵が昼食の案内をした。廊下にでた。窓から書斎がみえた。是亮がいる。女物の着物から手がでてる。是亮の首をしめてた。廊下を何度もまがって書斎についた。是亮が死亡してた。
4
第12日目、神田である。元神奈川県の刑事、益田が榎木津探偵事務所にやってきた。探偵にやとってくれといって、断わられた。弟子にしてくれというと、この後にくる依頼人の尋ね人をみつけたら、やとうといわれた。
依頼人、杉浦美江がやってきた。夫、杉浦隆夫が、たぶん昭和27年夏に失踪。自分は現在別居中。結婚は昭和26年4月、隆夫は小学校の教員、2ケ月後に生徒に怪我をさせて、部屋に閉じこもるようになった。昭和27年2月に別居した。この2月にもどったらいなかった。何故さがしたいのかきくと、離婚したいからとみとめた。男女平等運動の話しとなる。千葉の勝浦で運動に参加。興津町に売春を斡旋してる酒場がある。経営者が川野弓技。昨年10月、殺害された。その容疑者に隆夫がはいってた。進駐軍の通事をしてた知人からこの事務所をきいた。雑司ヶ谷の久遠寺医院の事件をしってた。久遠寺涼子と面識があるといった。榎木津が織作葵から離婚をすすめられたと指摘した。葵は婦人と社会を考える会の中心人物である。榎木津は益田に隆夫をさがすよう指示した。弁護士の増岡がはいってきた。
依頼を多忙と断られたので、中野の古書店主、京極堂をたずねた。益田も同行した。依頼事項は京極堂にも関わる。柴田財閥が関係してる。榎木津が受諾するよう仲介を依頼した。依頼主は柴田グループの最高責任者、柴田勇治である。
房総半島の先端に聖ベルナール女学院がある。そこで殺人事件が連続した。柴田はかって理事長をやってた。柴田と織作の関係である。織作紡織機の創設者、織作嘉右衛門は柴田燿弘が会社を創設した時、援助した。二代目、伊兵衛も親密な関係だった。この伊兵衛が女学院を創設した。三代目、雄之介の時に柴田傘下にはいった。勇治は27年秋まで理事長をつとめた。その後任は織作是亮だ。27年の年末、山本という女教師が殺害された。この2月に本田という男教師が殺害された。この時、同時に生徒が投身自殺した。自殺した生徒は妊娠三ヶ月だった。話しはつづく。
生徒の証言が混乱してる。本田殺害は黒い聖母だ。柴田は学院の不穏な空気を一掃してほしいと願っているという。是亮の無能に放置できず、また勇治が乗りだした。そこで昨日、是亮が殺害された。この犯人も黒い聖母といってる。次に益田の用件にうつる。
事情を説明する。葵の名前がでる。関係が浮かびあがる。増岡が職員名簿の中に杉浦隆夫の名前を発見する。厨房の臨時職員に昭和27年9月に採用とあった。京極堂はこれはあらかじめしこまれたもの、杉浦が疑わしいというのが、あらかじめ用意された答という。
日目 | 勝浦 | 奥津 | その他 |
---|---|---|---|
27年 | 12月、目潰魔純子殺害 |
4月、紫死亡 10月、絞殺魔弓技殺害 |
5月、信濃町、目潰魔妙子殺害 |
第1 | 28年2月、四谷、目潰魔八千代殺害 | ||
第2 |
絞殺魔本田殺害 夕子、小夜子投身 |
||
第8 | 雄之介、死亡 | ||
第9 | 是亮脅迫、小夜子約束 | ||
第11 | 海棠、美由紀脅迫 | 絞殺魔是亮殺害 | |
第12 |
四谷、志摩子逃亡 神保町、美江榎木津依頼 中野、増岡京極堂依頼 |
||
第14 |
榎木津絞殺魔指摘 絞殺魔小夜子殺害、海棠負傷 隆夫捕縛 |
目潰魔志摩子殺害 | |
第15 | 生徒帰宅 | 今川、依頼、京極受諾 | |
第18 |
京極堂、憑き物おとし 2名死亡 |
京極堂、憑き物おとし 3名死亡 |
|
4月 | 京極堂、真犯人指摘 |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、鉄鼠の檻その3 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ3
8
第五日目、湯本の駐在所である。松宮仁如、俗名仁(ヒトシ)がいた。京極堂が仁如にききただした。明慧寺の土地は仁如が所有する。不動産取得税が昭和25年に創設された。そのため清算が必要となり、明慧寺を訪問した。仁如の父、仁一郎は笹原宋五郎とこのあたりの土地を二分して購入した。契約により寺の保管料をもらってた。終戦後、保管料は払われなくなった。僧を派遣してた各寺は僧に召喚状をおくった。僧たちはもどらなかった。
仁如は保管料はしらなかった。京極堂が受取人の名義が変更されてた。名義は箱根の天然を守る会だった。発起人に了念の名前があった。保護対象に明慧寺がはいってたといった。明慧寺で慈行にあったが了念にはあえなかった。仁如と飯窪をのこし、京極堂他が部屋をでた。
外に倫敦堂の山内がいた。蔵が埋没したのは大正12年の関東大震災の時だ。こんな結論となった。京極堂に益田から今川が重要参考人となったと連絡があった。
第五日目、明慧寺である。菅原が今川に自白をせまる。泰全は午前2時から3時の間に殺害された。今川の証言の矛盾を指摘した。今川が理致殿で6時半から30分、障子越しに禅に造詣の深い老人か老人のような声を発する人物と問答したと修正し、これをかえなかった。山下は外出し、土牢にはいった。乾燥大麻と死亡した博行を発見した。
第五日目、仙石楼である。京極堂が到着した。午後7時だった。常信、敦子、鳥口が明慧寺に出発してた。菅原が到着した。久遠寺を博行殺人容疑で逮捕するという。
第五日目、明慧寺である。鳥口、敦子、常信が三門で菅原とあった。仙石楼にいくという。知客寮で自信喪失の山下にあった。禅堂で騒動がおきた。佑賢が慈行を殺人犯と告発した。山下が知客寮によんで聴取した。
英生がやってきた。佑賢の破廉恥行為が指摘された。佑賢は英生が若い僧との乱らな行為をしてたことを暴露し、自らの行為を英生にわびた。慈行が英生がすべてを認めたと佑賢にもらした時、慈行を告発する気持になったとみとめた。常信とともに佑賢、英生も下山することとした。外にんでた。法堂の前に鈴がいた。その後ろに哲童がいた。もってた長い棒を思いきりたおした。哲童がぶつぶつつぶやきながら立ちさった。法堂の方から悲鳴がきこえた。
9
第五日目、仙石楼である。飯窪が手紙をよんだことをみとめ、それを父仁一郎にわたしたことをみとめた。
第五日目、明慧寺である。悲鳴をあげた託雄が覚丹の方丈、大日殿の前にいた。そこに佑賢の死体があった。知客寮で事情聴取があった。託雄は佑賢を尾行してた。なぐられて気絶した。哲童が犯人だといった。鳥口と敦子が益田に連絡するため下山することとなった。久遠寺が仁如に鈴の振袖姿を確認した。まったく鈴子に晴れ着と一緒といった。年末に家をでた仁如がしっているのかと不審がった。託雄の聴取である。
英生をとられたくないと佑賢を気にしてた。英生の下山をしって佑賢を大日殿まで尾行した。
敦子と鳥口は下山途中で鈴と哲童をみかけた。雪の中、転落した。
山下が託雄に了念の証言を再確認した。慈行をみたが、覚証殿の前でなく、自分が覚証殿にいて窓からみたと証言をかえた。大雄宝殿の横の薬草畑は放棄されたが、昨年夏までつくったものを乾燥して納屋に貯蔵してる。毎日麻を博行にわたした。束はわたしてない。しかし今日の午後二時ころ哲童が麻とはどんなものか、きいてきた。覚丹の聴取内容である。
佑賢が頓悟したと参禅にきた。袈裟をあたえた。でていった後に悲鳴がきこえた。袈裟は死体の腹の下にあったようだ。
第六日目、仙石楼である。京極堂、関口、益田がつどう。僧の来歴がはなされた。泰全の師匠の名は和田智念。慈行は孫。了念は仁如がきた鎌倉の同じ寺。問題児だった。智念が明慧寺にはいるにあたりその寺に要請した。泰全がはいる時、ふたたび要請した。召喚命令はたぶん了念が握りつぶしたのだろう。託雄は秩父の照山院だった。さらに明慧寺は大正の白隠とよばれた和田智念の妄執がつくったもの。泰全はそれを引きついだ。実際につくったのは了念。哲童が鳥口と敦子をつれてきた。
10
第六日目、仙石楼である。京極堂と敦子が話す。覚丹には25年間、誰も参禅したことがなかった。
朝、国家警察神奈川県本部石井警部がついた。僧を全員下山させることとした。飯窪が山下に自白する。仁如のいる寺にいったが嫉妬心からわたさなかった。松宮家にいって父仁一郎にわたした。仁一郎は鈴子をよんだ。こわくなって家にもどった。また松宮家にいって火事を発見した。仁如は玄関に火をつけていた。山の方ににげた。鈴子もその後をおった。午前10時、下山した警官が僧は下山を拒否したといった。
第六日目、仙石楼である。警察は僧が葬式をおえるまで待機することとした。京極堂が関口に倫敦堂山内から駄目だったと連絡をうけたといった。午後3時、按摩の尾島がきた。午後4時、死体が搬送された。京極堂が憑き物おとしのため明慧寺にむかうこととなった。
京極堂が明慧寺に乗りこみ、僧たちの憑き物をおとす。数々の不思議を快刀乱麻を断つごとく解きあかす。美しいまでに悲しい終幕をむかえる。
日目 | 仙石楼 | 明慧寺 | その他 |
---|---|---|---|
某日 |
中野-埋没書籍の調査のため 京極堂が関口を箱根に誘う |
||
某日 | 按摩が奇怪な僧に遭遇 | ||
前日 |
湯本-富士見屋に関口京極堂到着 書籍調査 |
||
1 | 今川の待ち人未着 | 富士見屋-関口が僧目撃 | |
2 | 僧目撃、敦子到着、了念死体発見 | ||
3 | 榎木津が到着、謎解明 |
敦子他が到着 夜泰全に取材 |
|
4 | 敦子、関口、常信到着 |
泰全発見 博行発見 |
|
5 | 京極堂、常信と会談 |
榎木津他、到着 久遠寺、博行と再会 博行殺害 佑賢殺害 |
湯本-京極堂、仁如と会談 |
6 |
石井到着 京極堂、明慧寺へ |
京極堂憑き物おとし |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、鉄鼠の檻その2 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ2
5
第四日目、明慧寺である。山下が混乱してた。佑賢と慈行が口論した。常信が凶行がまたおこるといった。覚丹が登場した。哲童に罰策を命じた。覚丹が捜査協力を命じた。取材陣は内律殿にもどった。敦子が泰全の死体の姿は何かの見立てといった。益田が今川の行動を聴取した。
昨夜、今川がのこり泰全と話した。狗子仏性の公案がでた。こたえると泰全が何かに気づいたようだ。今川君、ありがとうといった。明日またくるようにいわれた。午前6時半にいった。理致殿の裏の山、大雄宝殿の裏に哲童がいたのをみた。部屋の外からよんだら、声がした。公案についてこたえた。見事な領解であるといわれた。もう一度、8時半に訪問したが、あえなかった。益田が飯窪に早朝の取材後の行動をきいた。
仁秀のところにいった。不審がられた。告白がはじまった。昭和15年、当時、松宮という裕福な家があった。上がヒトシ、下が鈴子という子どもがいた。正月の3日、火事がでた。両親は撲殺された。犯人は不明だ。ヒトシはその年末に父と大喧嘩して家出した。無事だった。鈴子は消息不明となった。振袖の晴れ着をきてたらしい。告白がつづく。
実は、その日に鈴子とあった。鈴子は兄がすきだった。飯窪を呼びだして手紙を託した。いるはずという寺にいったがいなかった。その夜に火事があった。ヒトシは4日にもどった。殺人と放火で逮捕された。証拠不十分で釈放された。その後ヒトシは出家し禅寺にはいった。照会の手紙にヒトシのこともきいた。たまたまヒトシが明慧寺に出むくことをしった。飯窪の午後の行動の話しにもどった。
仁秀のところで鈴のことをきいた。鈴子かどうかわからなかった。慈行に鎌倉からきた僧のことをききにいった。知客寮にいった。無人。便所にいった。飯窪の話しがおわった。一同は僧と同じ場所に移動させられた。
関口が後からきいた。知客寮に箱根山僧侶殺人事件の臨時捜査本部がおかれた。現場検証が夜8時までつづいた。捜査会議後、益田が取材陣をつれて仙石楼にむかうこととなった。常信の声がした。
警察に保護をもとめた。益田とともに下山させることとした。山下と菅原が佑賢から事情を聴取した。常信について、宗派の対立について、修証の違いについてきいた。ここから禅宗の歴史について壮大な話しが展開された。痴情のもつれの可能性についてきいた。泰全の行動ををきいた。6時すぎの朝食後、不在をしった。7時すぎ理致殿にいった。不在だった。死体は午後2時に発見された。菅原が了念が失踪発覚当日の夜、託雄によって目撃されているといった。鐘が乱打された。
夜の10時12分だった。菅原、山下がはしった。鐘楼の上に奇怪な人物がいた。先の典座菅野博行だった、博行は心をやんで土牢にいた。三門に鈴がいた。
6
第四日目、仙石楼である。下山した一同が大広間にいた。京極堂もいた。関口の回想である。夕方5時、取材陣は禅堂に移動。6時半、隣りの建物に移動。7時半、益田から下山をしらされた。常信も下山。夜10時17分、仙石楼。回想おわり。
関口は風呂、食事の後、就寝。これは後からきいた。鳥口が京極堂の部屋にいくと敦子もいた。京極堂は貫首にききたいことがあるからもどった。今の混乱では無理なので明日また現場にもどるといった。鳥口が十牛図についてきいた。京極堂は資料についてききたい。しかし貫首は無理、泰全は殺害、了念も殺害と困惑してた。
第五日目、仙石楼である。榎木津がまた明慧寺に乗りこむといった。京極堂が常信と会見した。明慧寺の持ち主は誰か。不明。関東大震災後に土地を購入したのは誰か。不知。寺に書庫はあるか。無。経蔵はある。昭和10年、常信、佑賢が入山したころ、了念による売却事件があった。処分は沙汰止みとなった。常信が入山したころ、了念は財務管理、教団との連携、建物の修理など庶務一般を担当してた。泰全がよんだ。覚丹について貫首は泰全が適任ではときく。事情は不知。常信の話しがつづく。
慈行は慧行の弟子、慧行は泰全の兄弟子。禅宗の歴史の話しとなった。京極堂が蘊蓄をかたむける。京極堂が常信がもっともおそれたのは佑賢だと核心をついた。認めた。帝大の調査に執心したのは何故かきいた。悟りの心境をきいた。大悟できない未熟者と告白した。
自分は社会から切りはなされている。それに疑問を感じてる。ふたたび調査に執心したわけをきいた。脳波測定により座禅の価値を否定してほしい。そんな気持を指摘された。心が動揺し、連夜夜座をおこなってた。指摘の正しさをみとめた。明慧寺が文化財に指定されることに期待があったか。然り。江戸時代より古いと思う。本当に夜座をしてたか。然り。託雄と一緒か。否。託雄は貫首の縁で5年前に入山した。前の典座のおこした事件を話すことは拒否した。益田が託雄の証言を話す。
常信が夜座してる間に了念が常信の方丈、覚証殿からでてきたのを目撃した。昨日、土牢に常信が食事をもっていった時、託雄らしき人物がでてきたといった。そのころの託雄の所在は不明だった。阿部巡査が笠原老人のところに不審な僧がきた。松宮某という。京極堂が湯本の駐在所にむかった。
7
第五日目、明慧寺である。関口が後できいた。榎木津、今川、久遠寺が三門にきた。慈行に誰何された。仁秀を呼びだし鈴を境内にいれたと懲罰をあたえた。菅原が鈴についてどんな事件があったか、慈行にきいたが、こたえなかった。久遠寺が博行にあいたいとたのんだ。防空壕のような穴の中、鉄格子のはまった部屋にいた。菅野とよぶ。ついに院長とこたえた。菅原が久遠寺を無理に知客寮につれていった。山下が久遠寺から聴取した。
博行は久遠寺医院の医者、昭和16年春に失踪した。久遠寺は毎年旅行、仙石楼に宿泊、博行も同行してた。小児科の医者だった。悪癖をもってた。土牢にいれられたきっかけとなった事情をきくが、寺側がおしえないといった。英生がお茶をもってきた。榎木津が痴話喧嘩か、ぶたれたかときいた。ここからでてゆけと助言した。佑賢がはいってきた。榎木津が横面を殴った。榎木津は外出した。久遠寺は今川をさそって仁秀のところにむかった。
仁秀のところに託雄がいた。典座の仕事で食事をもってきたといった。哲童のことをきいた。関東大震災の時からいる。捨て子だった。鈴は13年前からいる。捨て子だ。一時病弱だったが一昨年回復し出あるくようになった。哲童はいずれ禅匠となることを期待してる。鈴は何をしたのか。繰りかえしきいて久遠寺は事情を察した。今川に博行は幼児以外に性的対象となり得ない病気といった。久遠寺が警察の警備のすきをぬって土牢にはいった。
博行に呼びかける。久遠寺医院での悪行から精神がやんで明慧寺にきた。数年して正常に回復したが、哲童が公案の答をききに博行の方丈、内律殿にきた。10日考えた。その朝、鈴と出あった。破廉恥行為におよび、託雄に土牢に閉じこめられた。久遠寺と榎木津に非難された。榎木津は薬をやめろといった。大悟したといった。
榎木津は帰路につく。三門にきた。今川が仁秀が知客寮のあたりにいるのをみつけた。久遠寺が近よって博行が大悟したとしらせた。菅原がやってきた今川の証言に矛盾がみつかったといって、知客寮に連行した。
日目 | 仙石楼 | 明慧寺 | その他 |
---|---|---|---|
某日 |
中野-埋没書籍の調査のため 京極堂が関口を箱根に誘う |
||
某日 | 按摩が奇怪な僧に遭遇 | ||
前日 |
湯本-富士見屋に関口京極堂到着 書籍調査 |
||
1 | 今川の待ち人未着 | 富士見屋-関口が僧目撃 | |
2 | 僧目撃、敦子到着、了念死体発見 | ||
3 | 榎木津が到着、謎解明 |
敦子他が到着 夜泰全に取材 |
|
4 | 敦子、関口、常信到着 |
泰全発見 博行発見 |
|
5 | 京極堂、常信と会談 |
榎木津他、到着 久遠寺、博行と再会 博行殺害 佑賢殺害 |
湯本-京極堂、仁如と会談 |
6 |
石井到着 京極堂、明慧寺へ |
京極堂憑き物おとし |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、鉄鼠の檻 [京極夏彦]
この京極作品を未読の皆さんへ
不用意にのぞくことをすすめない。 (この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した)
あらすじ
前文 按摩、尾島が奇怪な僧にあった。修証一等というが、未だ至らぬ。しょせん漸修では悟入するのは困難である、といった。
1
第一日目、昭和28年、箱根である。小説家関口が後できいた。朝、仙石楼という旅館で古物商、今川が二階の部屋から外の雪景色をみてた。階下の大広間にいった。老人が中庭をみてた。老人は豊島で開業医をしてた久遠寺だった。今川は待古庵という古物商を青山でいとなんでる。朝食。今川は中庭の背後の山の中に市松人形のような人影をみた。この上にある明慧寺の寺男の娘か孫だといった。中庭に柏の大木がある。宿泊客は二人のほかに女性のみ。明慧寺の取材にゆく出版社の人間だ。明慧寺は禅宗。今川の寺の僧と待ち合わせの予定だった。先代あてに取引の手紙がきた。過去の実績をみると高くさばけてた。差出人は小坂了念だった。待ち人はこなかった。帳場が騒がしい。鼠が大発生したという。
第二日目の午後、カストリ雑誌の出版社、鳥口守彦と稀譚社の中禅寺敦子が仙石楼にむかってた。箱根の大平台の駅からきた。下山の黒衣の僧にあった。旅館には稀譚社の飯窪季世恵が先乗りでいるはず。
飯窪は旧館の離れにいた。大広間に二人の男がいた。敦子が久遠寺とあいさつした。新館の二階にむかった。敦子は飯窪の部屋に、鳥口はカメラをもって大広間にいった。敦子も後から合流。飯窪は今夜から同室となる。お寺の取材の話しである。
帝大の教授が脳科学の立場から修行中の僧の脳波を研究する計画をたてた。稀譚社がそれに協力することとなった。飯窪の努力の結果、明慧寺がきまった。交渉の相手は知客(しか)の和田慈行だった。今川が同行することとなった。敦子が飯窪のところにいった。守口は中庭の雪の中に僧らしき人物が坐っているのに気がついた。女性の声がひびいた。
2
第一日目の前、中野である。小説家の関口宅に古書店主、京極堂がやってきた。箱根行きをさそった。事情はこうだ。奧湯本の土地にホテル建設がはじまった。山の斜面に土砂にうまった蔵が発見された。古い書籍が収蔵されてた。横浜、古書店、倫敦堂をつうじ京極堂に話しがきた。長期の宿泊が必要となった。そこに妻が同行するので関口夫妻をさそうこととなった。
第一日目の一日前、箱根湯本駅である。倫敦堂の主人が四人をむかえた。富士見屋という旅館についた。夫人二人をのこして、三人が現場にむかった。途中、この件の依頼主、笹原宋五郎所有の別荘をすぎた。笹原の父、武市がすむ。現場についた。京極堂が中にはいった。しばらくしてでてきた京極堂がここには潙山警策など禅籍経典が山とある。これは寺院の書庫だったろうといった。
潙山警策を解説してる潙山警策講義という本をしめし、明示39年発行だ。47年前までつかわれてたといった。京極堂はとどまった。関口は宿にもどった。夕方5時。夕食時の話しである。関東大震災でこのあたりも大被害にあった。そこを笹原がかった。山の中に十何年成長しない少女がいるといった。
第一日目、降雪、関口は何もしなかった。黒衣の僧がとおりすぎるのをみた。たのんだ按摩がやってきた。怖い話しをした。三日前、何かにぶつかった。すると拙僧がころしたと声がした。自分は鼠ともいった。一目散ににげた。夜11時京極堂がもどってきた。京極堂に成長しない少女のことをきいた。京極堂が蘊蓄をのべた。関口が鼠の坊さんについてきいた。死後鼠となって祟った頼豪のことかといった。按摩の話しをすると怪訝な顔をした。
第二日目、雪はやんだ。妻たちは観光で外出した。遅い昼食をすませたところに、突然鳥口がやってきた。殺人事件がおきた。榎木津がよばれた。混乱をさけるため京極堂をよびにきた。関口が同行することにした。
3
第二日目、箱根である。関口が後できいた。仙石楼で国家警察神奈川県本部、山下警部補がいらついてた。鑑識によれば死体は死亡後に凍結、死因は後頭部の打撃。飯窪の証言では、お坊さんが空中にうかんでた。昨夜、便所にむかう途中、二階の廊下の窓からみたといった。関口と鳥口がついた。
敦子が関口には取材協力を依頼したと、とりつくろった。関口の部屋に、敦子、久遠寺、今川がきた。榎木津は軍隊時代、今川の上官だった。明慧寺から慈行がやってきた。被害者は小坂了念とわかった。山下が今川を聴取した。慈行がはいってきて、明日午後二時から取材を実施することを確認して、辞去した。
第三日目の朝、搬出される死体を見送った。榎木津が到着した。久遠寺から不可解な僧の出現を解明してほしいと依頼された。飯窪をつれて二階にいった。窓に鳥口が張りついてた。僧は上にいかざるを得なかったと解説。前庭にいった。鳥口が二階屋の屋根の上にいた。勾配をおり平屋の屋根にいった。榎木津は平屋の屋根にうつるため前庭にあるゴミ箱にのぼり、塀、その上の庇とうつって、さっきの窓に張りついてという。屋根の上の鳥口に柏の枝につかまれといった。飯窪が最初にとまってた部屋にいった。そこから踊り場にでた。鳥口が浮いてるところを目撃した。大広間にいった。窓をあけ縁側にでた。鳥口がどさっという音ともに庭におちた。榎木津は仕事がおわったと宣言した。議論がかわされた。背負子に死体をのせ、他の僧形をした人物がかついで、柏の葉の上においたという結論がでた。午前9時だった
久遠寺が榎木津に犯人の発見を依頼した。了解した。昼食後、敦子、飯窪、鳥口、関口、今川の一行に国家警察から益田、所轄から菅原が同行して寺にむかった。
第三日、明慧寺である。一行は慈行にあった。閉門時間が4時だった。飯窪が宿泊を懇願した。困惑する慈行のところに中島佑賢がはいってきた。二人の論争のあと佑賢が許可した。若い僧、英生が離れた方丈、内律殿に案内した。ここは昨年夏まで知事職の僧がつかってたといった。ここまでに、知事(ちじ)、監院(かんいん)、維那(いの)、典座(てんぞ)、直歳(しっすい)の各職の説明をうけた。参詣客、檀家はない。日本のどの禅宗宗派にもつながってない。典座の桑田常信がやってきた。益田、菅原が聴取した。
慈行が総務人事担当、祐賢が風紀教育担当、常信が賄い担当、了稔が建設担当である。これらは寺の幹部。幹部五名の上に貫首の覚丹禅師がいる。雲水は三十人、合計三十六人となるという。夕食後、取材に英生が同行、常信のお付き、託雄が刑事に同行とすることとなった。敦子が箱根にこのような無名の寺があることは不可解といった。9時に内律殿にもどることとし、関口、今川はのこり、他はそれぞれ出むいた。声に驚いて外にでた。振袖姿の娘がみえた。
4
第三日目、仙石楼である。後から関口がきいた。現場検証がおこなわれた。犯行の真相は午前の結論とかわらなかった。菅原が夜11時40分にもどってきた。了念は月一度下山。戦後の若い僧は了念がつれてきた。了念の足取りである。
五日前、朝5時、朝課では目撃。了稔の方丈は雪窓殿。朝食を持っていったときにはいなかった。五時半。ところが夜九時頃、常信の方丈である覚証殿からでてくるところを托雄に目撃されている。常信は夜の座禅をしていたという。入山時期、役割である。
貫首は円覚丹禅師、昭和3年入山、68歳 監院は和田慈行、昭和13入山、28歳 維那、中島祐賢、昭和10入山、56歳 典座、桑田常信、昭和10年入山、48歳 老師、大西泰全、大正15年入山、88歳
戦前に入山が14人、戦後は15人、それに杉山哲童、29歳、誕生時から寺にいた。大男で少し知能が遅れている。寺の近くで、老人と女の子とともに住んでいるといった。
第四日目、山下と菅原が明慧寺にむかった。榎木津もむかった。途中で成長しない少女が出現した。雪まみれの益田が殺人事件の発生をつげた。
第四日目の明慧寺である。敦子が正午までの取材をおえ原稿にむかってた。昼食後、関口、鳥口、益田は休息、今川は早朝取材には参加しなかった。昨晩の回想である。事情聴取後、菅原は下山。残りの一同が理致殿の泰全に面会。了念の殺害をきき、庭前柏樹といった。仙石楼の庭は自分の師匠が造った。京都臨済古刹の住職だった。明慧寺にくる予定だった。その直前に死亡し、泰全が代りにきた。寺は師匠が発見した。ずいぶん調べたが由緒がわからなかった。仙石楼の話しである。
現代の主人は五代目、初代は江戸時代。明治28年、師匠がよばれて庭を増築した。石をさがして山にはいった時に明慧寺を発見。明治時代は廃仏毀釈で各寺の本末関係が重要となった。明慧寺の宗派があきらかになると重大な影響があるかもしれない。師匠の執心の理由らしい。観光開発である企業が土地を購入、各宗派の上層部が秘密裏に明慧寺の保存を要望。関東大震災がおきた。土地の持ち主がかわった。その時、師匠がここにはいることとなったが、死亡、泰全がはいった。その経営である。
各宗派からの補助金と托鉢。僧も各宗派から。佑賢と常信は曹洞宗、泰全と慈行は臨済宗。調査が目的だったが、いつしかわすれられ、ここからでられなくなった。今回の調査に期待するところがある。益田が、了稔、常信が賛成、常信が祐賢を説得、覚丹がこれを許すという態度だったという。泰全が飯窪にどこの寺からここを紹介されたか、たずねた。了念がこの寺にたどりつくよう、画策したことを示唆した。了念は鎌倉の立派な寺から、うとまれてここにきた。
益田が人柄が捻くれてたか、ときいた。ここから禅宗の修行について壮大な話しがはじまった。了念の話しにもどる。大平台に部屋をかりてた。そこに郵便物がとどく。寺にはとどかない。先代と了念の取引の話しとなる。犯行の動機は依然わからない。了念は箱根の環境保全の団体の活動に関係してた。失踪の前日に泰全をたずね豁然大悟したといった。敦子が大平台から仙石楼にむかう時にあった黒衣の僧が明慧寺をたずねてないかきいた。鎌倉から僧がきたらしい。知客にきけという。飯窪に反応があった。関口が自分があった黒衣の僧を思いだした。成長しない少女の話しがでた。
鈴といった。寺の奧に仁秀という老人がいる。そこにいる少女である。老人は寺が発見される以前からいたらしい。仁秀は寺男の哲童、鈴とともにすんでいる。蝋燭の明かりがきえた。よばれて哲童がやってきた。シケツとは何かときいた。会見はおわった。今川がのこり泰全に話しをきくこととした。午前1時すぎ、内律殿にもどった。今川ももどってきた。早朝の取材があった。話しは第四日目、明慧寺の冒頭にもどる。
敦子、益田、鳥口が泰全のところにいこうとする。飯窪、今川は外出中だった。騒がしい。便所にゆくと泰全が雪隠の中から脚を二本だして死んでた。
日目 | 仙石楼 | 明慧寺 | その他 |
---|---|---|---|
某日 |
中野-埋没書籍の調査のため 京極堂が関口を箱根に誘う |
||
某日 | 按摩が奇怪な僧に遭遇 | ||
前日 |
湯本-富士見屋に関口京極堂到着 書籍調査 |
||
1 | 今川の待ち人未着 | 富士見屋-関口が僧目撃 | |
2 | 僧目撃、敦子到着、了念死体発見 | ||
3 | 榎木津が到着、謎解明 |
敦子他が到着 夜泰全に取材 |
|
4 | 敦子、関口、常信到着 |
泰全発見 博行発見 |
|
5 | 京極堂、常信と会談 |
榎木津他、到着 久遠寺、博行と再会 博行殺害 佑賢殺害 |
湯本-京極堂、仁如と会談 |
6 |
石井到着 京極堂、明慧寺へ |
京極堂憑き物おとし |
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。
謎解き京極、狂骨の夢その3 [京極夏彦]
この連作の趣旨、体裁は「謎解き京極、姑獲鳥の夏」で説明した。
あらすじ3
9
12月7日、中野である。木場が関口宅をたずねた。関口の回想である。2日に精神科医への手配をし、敦子とともに榎木津をたずねた。新聞報道で事件をしり長野行は中止した。木場に相談することした。そこで木場がやってきた。神奈川県警の捜査状況である。
宇多川の死亡推定時刻は12月2日に午後7時から9時。自宅についたのは2日午前3時。切り通しの入口でタクシーを下車した。隣家は一柳史郎、その仕事は置き薬の訪問販売。その夫人が1日は11時までいた。事件当日の行動は調査中。犯人は朱美とされた。捜査員が立ちいった時、宇多川崇と朱美がたおれてた。4日午前5時だった。指紋照会から佐田申義殺害事件の参考人佐田朱美と同一と判明。庭に血液があるかときくと警察は非言及といった。宇多川の胃の内容物、警察への通報者が話された。京都にいる京極堂の意見を敦子からきく。
元憲兵の現況、宇多川の自宅、隣家との関係、建物の立地、構造。奉公先の造り酒屋の詳細をしりたいといった。神奈川県警の石井警部がやってきた。髑髏事件を担当してる。4日、逗子湾に浮遊してる生首とその他から関口の住所をしたって、やってきたといった。
10
12月13日、木場が降旗をともない京極堂をたずねた。その回想である。二子山集団自殺事件から長門が長野県警に照会。これから鴨田酒造と、この事件と宇多川殺害事件との密接な関係が浮かびあがった。つまり、朱美、民江には奉公先。自殺者10人はすべて関係者だった。石井の報告である。庭に血痕はなかった。生首の身元は港湾の日雇い労務者。木場に降旗から電話、四谷で会食、降旗から奇怪な夢の話しをきいた。以上で回想おわり。京極堂で関口、伊佐間、木場、降旗が一同に会した。
それぞれがかかえてる問題を話しはじめた。京極堂が事件を整理した。最後に朱美は犯人でないといった。旅館に宿泊してる復員服の男をおさえること、隣家の夫婦を保護することをもとめ、聖寶院文殊寺で憑き物おとしをするといった。
11,12
12月15日夕方、聖寶院文殊寺で事件は大団円をむかえた。
おことわり
京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。