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謎解き島田、龍臥亭幻想 [島田荘司]

(010000) はじめに
壮大な構想と迷路のような複雑な筋で読者を幻惑し、最後に感動の結末を与える島田荘司さんの「謎解き島田」を提供する。中身はいわゆるネタばれに溢れてる。本作品を未読の方にはすすめられない。

(020000) 森孝伝説
(020100) 森孝の出自、犬坊の別宅、お胤、お嘉、お振り、浜吉、芳雄
(020101) 森孝は備中藩殿様の血筋、犬坊の開発、別宅の建設
関森孝伯爵は旧備中藩の殿様、関長克の血をひく華族。明治になって間もなくの時代、森孝の本邸は新見にあったが、西貝繁村の森の中に杉里の犬房という別宅をもってた。この地には温泉がわいた。腰に持病のある森孝は湯治のための堂、庵をたて別宅とすることとした。当時は裏の山にある墓所とその上にある神社だけの深山幽谷だった。 たてたばかりは湧き湯のそばの湯殿とねるだけの一軒家があるだけだった。新見の殿様が別宅をたてたことをよろこび法仙寺も堂を造営した。伯爵に米や野菜をかってもらうことをもくろみ自分の田のそばに家をたててすむ百姓もではじめた。

(020102) 三日月百段の建設、湯殿、中庭、庵の犬坊の別宅
規模では本宅におよばないが別宅には風雅な趣があった。杉地をひらいてつくらせた敷地は広大な斜面となっていた。ここにながい右に迂回する坂があった。森孝はこれに「三日月百段」となづけ石段とした。のぼりつめた先に湯殿をつくらせた。坂道をとりかこむ馬蹄形の土地には花壇がつくられ、湯殿の手前から木造りの階段が花壇までおろされた。三日月百段の中途左手には石段にそって点々と庵がたてられた。犬坊とはこういう風流な石坂や庵など建造物群の全体をさす呼称であった。森孝の住まいはこの三日月百段の下、とっつきにたてられた。森孝は三日月百段をゆっくりのぼり湯にはいった。湯殿の裏には薪小屋がたてられてた。 使用人の浜吉という男はもともと樵。彼が周囲の林から木材を供給した。きりたおした杉を輪切り、斧でわった薪をたくわえた。これは芳雄というわかい男がやった。

(020103) 三日月百段と湯殿、趣味人の暮らし
森孝の別宅の表門は貝繁法仙寺や、さらに上にある大岐(おおき)の島神社にむかってのぼる山道にむいていた。湯殿にむかう三日月百段は家の裏手からはじまってた。表門から道にでて南にくだれば葦川にでる。その川べりには桜が並木をつくってた。森孝は凡人だったが趣味人であった。湯殿は杉や檜き、桐をふんだんにつかってつくられてた。木材は土地からとれるもので大半をまかなえた。このために大工や細工職人が津山、岡山からつれてこられた。これらの人は庭師とともに石段のそばに庵をひとつづつあたえられた。

(020104) 女中頭のお振り、妻のお胤、愛妾のお嘉、使用人の浜吉、芳雄
森孝は無類の 犬好きで庵のいくつかは犬のためにしつらえられた。明治の大変革のなか一家をついだが中央政府から重用されなかった。時流にのって財産をつくる才覚がなく、趣味人として生きるほかなかった。なすすべもなく時代にみすてられて徐々に財産をへらしていった。犬以外に森孝が愛したものが女だった。避暑にむいた土地であったから女中頭のお振りと2人の女中、使用人の浜吉と芳雄、そした妻のお胤、その娘の美代子、愛妾のお嘉をつれてきた。家族や家来衆は三日月百段の庵を一軒づつあたえられ、すんだ。

かってはもっと多数の愛妾をひきつれ、別宅の庵においたが、財力のおとろえに比例して使用人も家来もさっていった。しかし気にいった側室を手ばなす時は夫を見つけ犬坊の姓をあたえて村の集落においた。さらに一定の権限をあたえて小作農を属させた。自然、集落に犬坊という姓がおおくなった。

(020105) 女中頭の権勢、森孝を軽視
女中頭のお振りは父の側室であったが褥(しとね)辞退のあと女中頭となった。よく気がつき料理のうまい女である。いよいよ経済的に逼迫したので親戚筋があつまって、新見の本宅を手ばなす。森孝は別宅、犬坊にすむ。親戚は貝繁の田畑をつけ、生活の糧を確保してくれた。余裕のなくなった森孝には妻、お胤と側室、お嘉の二人以外いなくなった。お嘉への愛着はつよかったのでお嘉は犬坊にうつりすむことをいやがらなかった。しかしそこには60をこしたお振りが御後室樣とよばれ飾り物となった森孝にかわって全権をふるってた。一家の誰もがお振りの顔色をうかがった。犬までおおいに尻尾をふった。これはおそらく親戚の配慮だったろう。放蕩者で見栄っ張りの森孝にまかせられないと判断した。使用人は森孝の命令を露骨に無視したが、実は何も仕事をしてない森孝に命令することがない。きいても仕方がないという実情の裏返しだった。

森孝をかろんじる極はお振りの日常の態度であった。他愛ない話しを長々とし、いつも笑みをうかべてた。それは冷笑にちかかった。しかし世話係としては完璧で、妻よりはるかに気がきいた。その妻も森孝には癪の種だった。もともと美作の大名家につながる血筋であり、しつけ、読み書き、琴、儒学も充分おさめ、美形の誉れがあった。それだけに気位がたかく、他聞をはばかるが褥の欲求がつよかった。わかい頃の森孝ならともかく、犬坊に移住した40すぎ、めっきり能力の衰えがみえてきた。予想もしてなかったが、自分を満足させないとの不満をあからさまにぶっつけてきた。要するに経済力のおとろえとともに、女たちとの関係も危機をむかたのである。

(020106) 女中頭と 妻の連合、若い使用人の存在
ところでお胤とお振りの仲はきわめて良好だった。時には森孝への連合軍として対抗した。琴の教養があるお胤はお振りにおしえた。もともと能力があったのだろうが、めきめきと上達していった。森孝はそれをみて劣等感にくるしんだ。森孝は使用人の芳雄が気になった。お胤や、お振りがこの20代の若者に目をかけすぎるように思った。身長はたかくはないが女のような綺麗な顔をしてる。筋肉質で俊敏である。

(020107) 愛妾、お嘉、森孝の衰え
目にいれてもいたくないほどかわいがってるお嘉が、またお振りとうまくいってた。これは老練のお振りがうまくお嘉をあやしてるようであった。無為な森孝は最後の愛妾とお嘉をかわいがったが、40をすぎたお胤には女を感じなかった。一日中一言も口をきかないこともあった。ある日、犬の鳴き声がきこえない。不審に思ってお振りにたずねると、すべて村の犬坊にさげわたしたという。ここには犬にくわせる食べ物はないといった。犬の世話もせずただ頭をなぜるだけの愛玩であったが、犬がいなくなって予想外の寂寥感におそわれた。今はただお嘉だけが愛情の対象となった。

(020200) お胤と芳雄
(020201) お胤の企み、芳雄への好意
9月の霧雨がふってる日。芳雄が湯殿の前から花壇の中庭にかかる木造り階段をおりようとした。そこに声。とまれとお胤。階段をおりるな。最近おりたか。然り。きしんでた。成程、昨日、下からあがろうとして踏板がはずれそうになった。危険だからやめるように。浜吉にもいえと。では御前樣にも。否、自分がすでにとお胤。綱をはってはいれないように。否、不要。風呂は誰が。浜吉がたいてる。傘がないのか。否、今は不用。この傘にはいれ。遠慮。強引にいれる。洋巾で雨水をぬぐう。遠慮。傘がないならあげる。あとで部屋にくるように。芳雄は雨の中に。

(020202) 森孝の骨折、寝たきり生活
翌日 、森孝がこの階段から転落。足を骨折。浜吉が見つけ女中が村に医者をよんだ。不在で津山から馬車で医者がきた時には森孝の足は緑色に変色。重傷、壊疽で命が危険もと養生をすすめた。それから1年、母屋の自室の布団にほぼねたきりの生活。退屈をなぐさめるため外出用の運び手のついた寝台をつくった。森孝の声がかかると浜吉と芳雄がやってきた。かついで三日月百段をのぼっていった。怪我をしてからすべての仕草が老人となった。話題がなくなりお嘉はこなくなった。お胤とお振りがきても会話ははずまなかった。孤独な境遇になった。

医者はあるけるようになるが、ぎくしゃくした歩き方となるといった。芳雄も胸がいたんだ。お胤が森孝に何故いわなかっかと疑問をもった。

(020300) 密会、骨折の真相
芳雄が湯殿の裏で薪割り。声。お胤。芳雄にちかづいて誘惑。おどろく芳雄。さらにちかづく。土下座をしてにげようとする。森孝にころされると芳雄。感情のたかぶったお胤は強引に芳雄を薪小屋につれこむ。また関係をもった。お胤がいう。自分を裏切るな。証拠に入れ墨をする。森孝骨折の真相をもらす。自分を満足させない森孝への不満をのべる。剣の道をおさめて自分をまもれという。

(020400) 森孝義足、お胤の復讐、惨劇
(020401) 右足切断、義足、お嘉が実家に
それから1年。右足首の腫れがひどく、臑は黒色に変色。体調も不良。眩暈。医者も首をかしげた。ついに右足を切断。義足となった。お嘉が里にもどり離縁状態となった。これで森孝は右足だけでなく正妻以外の女をすべてうしなった。お振りはお胤の不倫をしってしらぬふりをした。これでお振りの権力は絶大なものとなった。

(020402) 密会現場へ森孝乱入
四月、密会のあと、湯殿裏の路地でお胤は芳雄に大胆にも接吻した。川沿いの夜桜を見物にいこうといった。罪悪感にたえかねて二人でにげようといった。お胤がそれをわらった。知恵がたりないといい、もうすこし辛抱すれば森孝は死に家屋敷は自分のものとなる。親戚の目も障害でない。家屋敷を売却した金をもってにげればよい。森孝はもうすぐ死ぬと断言した。お振りには金をにぎらせればよいといった。

湯殿の陰から異様なものがあらわれた。あっと芳雄。大声とともに鎧兜をつけた森孝がちかづいた。裸の芳雄を見て、何という醜態と。土下座する芳雄。あるけたのかとお胤。その格好は。不義者。あるけぬふり。お胤への復讐。だましたなとお胤。馬鹿者。にげる芳雄。にげるな芳雄とお胤。御前樣は毒を。刀がある。お胤は小屋にもどる。抜き身の刀をもって、また芳雄とよぶ。目の前に森孝。うちこむ刀は兜にめりこむ。刀をはなし花壇の方ににげだした。

(020403) 芳雄の両腕切断、お胤の生首
森孝はまず芳雄をおう。裏山ににげた芳雄は不運にも切り株につまづき足を骨折。転倒。土下座してる芳雄に刀を。左腕がころがった。肩から血がふきでた。もがきながらたちあがった芳雄に刀。右腕がおちた。次に三日月百段をおりてゆくお胤をおった。鎧兜をぬぎすて、痛みをもものともせずおう。下着でにげあぐねるお胤においつき、襟首をつかまえた。その時、義足がとび二人がもんどりうって転倒。もがき、あがき、やっとのことで森孝はお胤の首をきりおとした。生首を目の前にもちあげ、やがて心の底からわらった。

(030000) ふたたび警告
この後に、ネタばれの内容がつづく。本作品を未読の方に閲覧をすすめない。


龍臥亭幻想 上 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 上 (カッパノベルス)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/10/20
  • メディア: 新書



龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/10/20
  • メディア: 新書



(040000) 第一章 最初の死体、行き倒れ死体
(040100) 2004年1月、第1日、再会、森孝事件、死体の行方、犬坊別宅の歴史、現況
(040101) 森孝事件の後日譚、森孝、芳雄の行方
森孝の伝承をききながら小説家の石岡和己がいう。それから。母屋に放火と日照和尚。この和尚は龍臥亭事件で登場した和尚のあと。この人が先代の娘の夫。先代はすでに死亡。事件から8年、2004年である。成程。前途を悲観。三日三晩もえた。では庵は。ほとんどもえた。ただし湯殿はのこった。母屋は丸焼け。焼け跡からお振りの死体。やっぱりお振りは殺害か。然り。女中衆は。逃走。森孝の娘は。女中が新見の関に。無事に。成人。でも芳雄の子といわれ、消息不明。成程。石岡がいう。

8年前の龍臥亭事件、その前に都井睦雄事件、その前にもこんな大事件。この地は祟りの地。何ともまあ、ひどいことと二子山一茂。でも明治のあの頃はまだ江戸時代。密通は斬首。男の勝手な論理ではと加納通子。女性軍の意見に警戒心。そばにいたユキ子に学年をきく。中一。犬坊育子にきく。殺したのは不可。当時の慣習と日照。石岡は、現在、法律家をめざしてる犬坊里美の意見をききたいと思ったがまだ到着せず。森孝の骨折を細工したとユキ子。然りと二子山一茂。毒もと日照。それから森孝の行方はと石岡。不明。自決か。かも。しかし死体はでない。ええ。伝説では山の中。鬼、仙人。でも山の中。血をはいて、片足、こわれた義足で可能かと石岡。然り。へえ。森孝の消息は。もう無し。芳雄はと石岡。死体がでない。ええ、本当。天狗がかくしたかも。

(040102) 神隠し 、天狗の力、かくす人たち、村人か
天狗。然り。ここは霊場。大岐の島さんが毎年礼拝をして、あるくから。本当か。サイキック(霊能者)だから。江戸時代に天海僧正という人。祈祷所を南北に設置。礼拝。すると。天海の東照宮という宗教は呪術。調伏、人を呪いころす。はあ。天海がのろておがむ。すると。この南北の線上にいる人が空の方にとんでゆく。本当。自分はしらんがそうと日照。この土地はのろわれてる。神の力が必要と育子。通子も同意。死体がよみがえってうごく。本当か。だから森孝も芳雄の死体もきえた。でも腕は。あった。二つとも。地面に。ではそれは大岐の島さんのやったことかと石岡。まあそう。だが今は詳しいことは。だったら芳雄は死亡。だから法仙寺の者がうめて墓をつくった。誰かがかくしてやったと坂出小次郎。何故。死体がきずつけられる。へえ。新政府寄りの者なら森孝の死体をきずつけるかも。でもどこにかくすと二子山。だからうめた。成程。坂出はすでに80代だが依然矍鑠(かくしゃく)。では誰が、お振りは死亡、女中か。育子、通子は大勢の村人がいる。その中で不可能と否定。然り。男も同様に不可能。事件後すぐ、駐在、村の人が現場に。然り。みんな。すぐ。夜明け前に。音もしたから。黒山の人だかり。夜明け前、まだ深夜だったが。

(040103) 浜吉か、元は樵
その時点で森孝の死体は無し。二人は無し。あったのはお振りとお胤だけ。二人はどっかにいった。どこ。新見の本宅。無理。だがここに幽霊がでる。ならいけると坂出。天狗も幽霊も信じない。人。それは誰。成程、死体をうめてる時間はないと石岡。浜吉は。消息不明。どこか広島。岡山。このあたりなら、わかるはず。浜吉だろうと坂出。勝手しった使用人のはず。成程、芳雄の仲間だから。育子が死んだ両親の話しとして。浜吉の道具がよごれのないままあった、という。一同沈黙。だから山中に失踪と育子。世間の目からかくす。警察が徹底調査。なら大仕事。山の中でも下草の様子で。うめるなら腕も一緒と石岡。両親の話しでは、そんな知恵のある男でなかったと。どんな。すこし知恵遅れ。成程。山狩りはと坂出。したときいた。それも総出。で、何も。然り、何も。焚き火の跡、血の跡も。無し。猟師、樵は。いたときいた。不可解。何が。猟師、樵は山を熟知、見のがさない。戦争中、山中を行軍する時は猟師をやとう。深手をおった人間の追跡、一番わかる。成程、するとどんな結論。どっかの穴にひそみ死亡と坂出。穴がここ、龍臥亭か。芳雄の場合、現場から10メートル内にあるか。そんなのはないと育子。

(040104) 隠蔽の方法は、村の生活、寺の役割、不可解、犬坊別宅の転売、現在の状況に
石岡がいう。これは二つの死体がきえた。それが問題。然り。隠蔽の方法は他にも。例えば、ある村人がまず納屋に。次にひそかにうめる。否。村の生活はオープン。他人の家にもはいる。だから無理。相互監視、浮気も無理。それでも夜這いか。百姓にとり春は仕事がおおい。そんなことは無理。成程と石岡。それに動機がない。犬坊の殿様は雲上人。百姓がそんなことはしない。では法仙寺の人にとっては。かくす理由無しと日照。死人の名誉をまもるためにも。やるなら余程のこと。今とちがい村の生活にとって寺は大事。信用をなくすことはしない。成程。社寺は行事の中心。境内に村人が出入。寺の本堂で集会。日照は村の監視下。まして春、行事がおおい。育子がいう。かくすならお胤。裸体で斬首。身分のある女に最大の恥辱。成程、不思議な話しが。ここにあったんだと石岡。森孝の死亡後、誰の所有に。

しばらく新見の親戚の管理。荒れ放題、怨霊の棲み家。それから。大正になって犬坊のうちの金持ちが購入。では先代。否。先々代の吉蔵。都井睦雄の襲撃の標的の人物と石岡。然り。金貸し、女好き、三日月百段を修繕。でも本格的には先代、秀市。成程。趣味人、堅物。育子の父と石岡。父は杉の里、さらに琴の里に。それから昭和もだいぶおちついた頃。昭和27年(1952)に工事。自分の誕生年と通子。三日月百段は廊下と一連の庵に。廊下の下にはまだ石段がと石岡。ある。建物全体を竜に見立て。龍臥亭は。秀市の命名。湯殿の前の石段は。その時の工事。湯殿は。あたらしい木材でつくりなおし。設計の基本は森孝当時のもの。閉鎖は平成2年(1990)、オープンが昭和27年(1952)。父は平成5年(1993)に死亡と育子。以上と日照が石岡に。

(040200) 第1日、櫂、日照、巫女の失踪、恋人、神主、事件詳細
(040201) お手伝いの櫂、再会の経緯、再会者の紹介
櫂という名の女性が登場。電話。日照が櫂を石岡に紹介。斎藤櫂という。小柄、小肥り。50代なかば。日照がいう。何をつくてる。炊込みご飯、冷凍の鯖、漬物。手伝い。然り。旦那が死亡、暇。この厨房はひろいと石岡。然り、だから面白い。松子が死亡、ここ人手不足と日照。突然、痛い。足の先に血がかよわないと日照。袈裟の下から足。足首あたりが浮腫。血行障害、森孝みたい。里美が今から伯備線にと育子。一同成程。石岡がきく。郷土史家の上山評人先生は。元気のよう。石岡は龍臥亭事件から8年ぶりに来訪。関係者が集合することを里美からしったから。多忙でない新春の一月が好都合。やってきたら雪景色。例年以上に多量。

集合者は、神主の二子山一茂、岡山の坂出小次郎、加納通子、ユキ子、それから龍臥亭の犬坊育子。これに里美が。当時、龍臥亭にいた料理人はいない。手伝いの娘たちもいない。松子は死亡。犬坊行秀、一人息子は今は広島で公務員。おおきな家に育子が一人。そこに近所で一人暮らしの斎藤櫂が手伝い。里美の父、犬坊一男は事件で死亡。二子山一茂の父の二子山増夫は死亡。結婚、子ども、子煩悩。夫人も巫女。神主の代理ができる。だからここに二子山一茂がこれる。夫人はフランス料理の達人。だからふとった。

(040202) 日照の紹介、二子山との関係
ユキ子も身長がのびた。通子、育子はかわらず美人。初対面は日照。人懐こい性格。元、岡山、津山で製薬会社に勤務。二子山との仲は良好。仕事の分担が明確。ぶつからない。季節の行事も分担。龍臥亭の集会は同窓会のよう。楽しい。石岡はまたここで奇怪な事件に遭遇することになる。二子山が四駆で里美を出迎え。大学時代、ラリー同好会。運転が得意。他方、日照は免許はあるが不得意らしい。

(040203) 神社での失踪、その状況、神社の参道、参拝の車列
さっき死体がよみがえってうごいたが、大岐の島神社では人がきえたとか。日照は躊躇。櫂は厨房に。坂出がこたえる。どんな。人がきえた。死亡か。まあ生死不明。誰。巫女、神主、菊川のところの。大瀬という。去年、10月15日、秋の祭。失踪かと石岡。否、きえた。煙のように。どう。男と失踪かも。男はきえてない。いる。里に。この男もきえたという。ぱっときえたと。どこで。本殿。罰当たりと二子山。二人がわかれ、山をおりたのでは。否、不可能、秋の大祭。新嘗祭、五穀豊穣の。その時は大岐の島神社の山の周囲をぐるりと氏子がとりまく。とりまく。然り、神社は頂上。その周囲が下りの斜面。その斜面にはいっぱいの杉林。最近、神社の周囲を伐採、車の駐車場。下から斜面を螺旋状に車道。それは龍臥亭の道をのぼってゆく。と、この車道につながる。つまり大岐の島山の道はその山のまわりをぐるぐるのぼる。蚊取り線香。で、道は。てっぺんの神社とその周りの駐車場に。大岐の島山というのはと石岡。

(040204) 沖ノ島に見立てた神社、神事、祝詞、太鼓
この山を玄界灘の沖ノ島に見立て。これは朝鮮半島にわたる中途。海の守り神。この島全体が宗像大社の境内。この島からは草木一本持ち出し禁止。島でした話しは陸で一言ももらすことをゆるさない。はあと通子。それでこのあたりを玄界灘、この山を沖ノ島に見立て。成程。幕末には維持が困難。森孝がきて、宗像大社の神職がきて、今の大岐の島神社。自動車の時代に駐車場を。コンクリートで。杉は神木。伐採禁止。

(040205) 新嘗祭、駐車場は車禁止、神殿で祝詞
で、新嘗祭とは。神社への道に車。去年の秋もびっしりと。車中に人、参詣に。どうして、駐車場は。あける。ここで神事。へえ。車の中に、ずっと。新嘗祭は農家だけでない。商人にとっても商売繁盛。車をふくめての商売繁盛。だから。

神事がはじまる午後の5時までの1時間は神主が神殿で祝詞。氏子は車中にとどまる。4時から5時。車中で祝詞をきく。きこえるか。太鼓の音ぐらい。祝詞中。はじまって、どーんどん。祝詞、またどーんどん。つまり。山のぐるりに人が。大勢。びっしり。氏子たちに見られずにおりる。不可能。螺旋状なら、この道の間を螺旋状にくだる、というのはと石岡。否、螺旋状の道にはさらに道が付設。ここをつかって上の道に連絡。上にもどるための道。この道にもびっしりと車。

(040206) 失踪時の現場、神事奉納の詳細、烏帽子に鉄の角、巫女の仕事
5時になると氏子は車をおりて徒歩。熊笹をつっきり頂上に。そういう約束事。だから不可能。で、その娘はいつきえた。4時すこしまえまで神社で彼氏とあってた。氏子が神社にのぼってきた時、きえてた。神社の建物の中に。否、氏子の中から警察官。すぐ調査。全部、神域にははいれない。否、全部、菊川も箱の中、米櫃、畳の下。地下室は。ない。屋根裏は。見た。その上は。見た。ほう。これが本当の神隠し。成程。穴ほってうめる。時間は。ない。皆セメント。あとは熊笹。物置のスコップはきれい。氏子はそれから。駐車場の神事の奉納を周囲で見まもる。何。社の周囲をぐるっと、ゆっくり弓をもって。社の前の的に。矢をいる。ほう。二子山がいう。烏帽子、白装束、頭に鉄の角。どういう意味と石岡。タタラ信仰らしい。摩多羅神、八幡神。金属全体の信仰かな。荒ぶる神。軍事宗教。それが新嘗祭。神社ごとにいうことが区々。で、その日もやったかと石岡。やった。巫女がいないのに。やった。で、彼氏は。姿は見られたか。4時にかえったという。目撃者はいる。何してた。男女の行為。成程。家では。両親の家。できない。ふうむ。彼氏、黒住が祝詞がおわる頃、自分の家から穀物をもってきた。そこで真理子がいない。穀物。然り。宗像にお礼奉納。その日に。神事の後に。不思議。巫女はどんな仕事と石岡。矢をもってあるく。とこれが今回いない。変と気づいた。

(040207) 恋人の証言、逃亡の可能性、死体隠蔽は
黒住は何と。いつも通り。わかれる時は。バイバイ。菊川は何時しった。祝詞をよみおわった頃。5時前。そろそろ神事とふりむいて。祝詞に巫女は。不要。祝詞をよむ水聖堂に女子は、はいれず。神主は結婚。してない。まあ、太鼓は自分でたたく。天候は。雨。そうか。霧雨。道にはずっと車が渋滞。よく見えた。否。霧雨だから。くらかったか。否、10月の午後4時過ぎ。でもぬれてた。然り。びしょびしょ、上の方は未舗装。4時から5時まで神社から人は。でてない。本当。然り、黒住をのぞいて。出入りの業者、氏子は。そこに変装してたのでは。ない、人は一人も。神事は神とあうこと、そこに人とあう約束は。いれない。では、どういうこと。あれから3カ月。でてないのかと石岡。神主の菊川は何と。スソンダンのハルモニだから、きえることはあり得る。何それ。韓国の西海岸、竹幕洞の水聖堂という社。これが沖ノ島の守り神と共通。この神は女神、スソンダンのハルモニ。この人は水聖堂に。壁や屋根裏をとおりぬける。そんな馬鹿な。さっきの話しではこの神主は霊力で空に人をもちあげる。そのための布石をふだんからうってた。否、それは天海のこと。4時から5時まで定期的に太鼓の音がきこえてた。ほうと石岡。

(040300) 第1日、夕方、里美登場、行き倒れ、伊勢、死体収容
(040301) 里美到着、行き倒れが、ナバやんか
玄関で声、育子と里美。やがて居間に。一同挨拶。ユキ子、通子に挨拶。石岡に挨拶。1年半ぶりの帰郷。日照が声。ゆっくりして。でも大変、途中で行き倒れを発見。誰。男。ナバやんか。貝繁の東、峠までのぼる坂の途中にと二子山。行きは不知、帰りに発見。誰。村で見かける人。とっくに死亡。どうする。男手あつめて引き取り。ホームレスかと石岡。日照が育子に連絡の電話を依頼。二子山、日照、石岡の三人が出発。遺体は凍結。

(040302) 遺体の現況、遺体の化粧を伊勢に依頼、軍で研究、遺体の収容
斎服をきるか。否、大袈裟と日照。いそげ、陽がおちる。里美がきれいになった。タレントなみ。弁護士に。らしい。顔を見たかと日照。ちらっとと二子山。ポーズは。大の字。車にはいるか。何とか。死体の化粧をやってくれる伊勢が何とかしてくれる。誰、その人。薬局経営、今、息子にゆずってる。昔、軍隊で死体研究をやってた。軍、日本軍、研究はどんな。詳細は不知だが、戦場でちぎれた手足をつける。時には他人のものをつける。できるか。死体につけてととのえるのかと石岡。否、いきてるの。へえ。軍の秘密研究。もう60年、でも秘密かと石岡。研究所は浜松、毒ガス、殺人光線。原爆も。そこで死体の研究。ふうん。

雪中の死体をほりだす。やはりナバやん。車の後部座席半分をたおす。そこにのせた。

(040400) 第1日、夕方、法仙寺に収容、死体の処理、森孝の鎧兜、魔王伝説、村人の信仰
(040401) 法仙寺裏から本堂に、大広間、伊勢
龍臥亭をすぎ法仙寺の山門に。階段が積雪でスロープだった。ずっとのぼり本堂の裏、墓場に。急坂をのぼり左にはいる。杉林。石岡が周囲の杉を見あげて感嘆。間伐は。しない。間伐とは。日光をいれてはやく、そだてるため間引き。ふつう樹齢30年ほどでどんどんきる。林業作業士が。ここは。10年から100年。下の枝はきりはらう。だから枝は上の方だけ。これでのぼれるかと石岡。さらにすすむ。左下に寺の明かり。人がいる。だから伊勢。くだり、墓の端に。三人がおりる。日照が先導。本堂の裏口。裏の引き戸。中には いる。奧の障子をあけると大広間。白髪の老人がすわってる。

(040402) 本堂の地下、霊安室
これから遺体を地下にと声をかける。階段をおりる。陰気な部屋に木の棺と手前に木製の台。その上に。白いタイル敷のスペース。2メートルほどのホース、水道の蛇口。納棺前に死体をあらう場だった。伊勢がやってきた。キャンバスシートをはいだ。ナバやん。行き倒れ、凍死。日照がいう。体をあらって、棺におさまるよう。檀家の寄付の衣類がある。もしあうのがあれば、それをきせて。キャンバスシートをたたむ。三人が部屋をでる。博物館はと二子山。石岡に見たいかときく。隣りの部屋のドアをあける。

(040403) 資料室に骨董品、古文書、槍、刀、鎧兜
紋章がついた箱、白木の箱。壁ぎわにつまれてた。中に書画骨董、掛け軸、古文書。ほかに槍、刀、猟銃もあるらしい。見事なコレクションと石岡。否、ただ自然にあつまっただけ。一家がたえたような時に。家宝を寺に寄贈。当人の生前の意志。価値は。中には。この写真は。孫文。隣りは資金援助の日本人。誰。梅屋庄吉。奧に金網。中に甲冑。くろい櫃の上にすわってるような置き方。あの甲冑は。問題の甲冑。何。森孝のもの。へえ。当時、龍臥亭の庭に点々と。火事の後、村人があつめ供養のため寺に。実物が。ここに。然り。当時のまま。然り。芳雄の血、お胤の血をすってる。ふいてない。石岡がちかづく。兜の下に面当、表面にびっしりと髭。縦にわれてると石岡。事件当日はつけてない。火事場からでてきた。われてた。糊で修復。ふうむ。片足。然り、右足がない。脛当てがない。あの箱は。ちがう。本物は火事でやけた。それって。然り、脛当てをのぞいて。でも、胤の斬首の時は兜と胴ははずした。この後、 家中を放火、そこでぬいだ。それがのこった。成程、それらが金網の中に。然り。金網にいれたのは。

今は簡単にはずせるが、昔は厳重にカバン錠。何故。伝説、吹雪の夜にあるきだす。悪い人をこらしめる。本当に。見た者がいて大騒ぎに。鎧か。否、中に死体、森孝がのりうつる。だから片足の死体。死人か。然り。怪談だ。どこへ。森孝が芳雄とお胤をうらんでる。女で問題をおこした男のとこ。女をもてあそんだ男のとこ。

(040404) 昔、社に甲冑、森孝の写真
実例は。きいた。鎧がうごいた。中に死体がははいってた。子どもの頃の話し。はあ。馬鹿な。まあ。ここから。否、さっき車をいれたあたりに、ちいさい社があった。当時は神仏習合の時代。寺の裏に鳥居。社。中に網にかこまれた甲冑。そんなとこに。然り、だから皆は森孝さんとよんでた。かって亭主の浮気にくるしんでた女房がおがんでた。あまりいわれるので、こわしてここにうつした。こういう言い伝えに興味が。あると石岡。日照が和綴じの本をみせた。森孝魔王のタイトル。この話しは年貢米のある江戸時代。実際は明治の初期。森孝の顔を。みたい。木の箱からガラスのかかった額をだした。変色のはげしい白黒写真。わかい頃のもの。二子山が空腹を。吹雪のおそれ。龍臥亭に。伊勢は。不要、仕事中は食事せず。専用の寝場所もある。携帯の番号も。問題ない。

(040500) 第1日、夕方、寺から龍臥亭に、司法試験の合格
(040501) 二人が先発、日照が後発、龍臥亭に
日照は2人にスコップをわたした。これで雪掻き、龍臥亭にいけ。自分は頭をそってから。成程。ナバやんの名字はと石岡。不明と日照。ずっと。この村に。何をしてた。田んぼ、薪割りの手伝い。山中に小屋をたてたが、おいだされた。二人は石段の雪をわけてくだっていった。石岡は日照の足を心配して雪掻き。しかし二子山は大量の雪にあきらめ。

(040502) 里美をかこみ懇談、司法試験合格
やっと到着。龍臥亭の敷地内。玄関にはいる。ユキ子がお土産のブレスレットをみせる。にぎやかな挨拶。日照は。後から。死人は。ナバやん。居間から奧の広間に。坂出、端に見しらぬ若者。雪は。膝上。里美の土産。二子山が布袋の置物。坂出がボケ防止の石の玉二つ。通子がボディローション。石岡にカエルの置物。育子に買い物袋。里美から報告と育子。司法試験に合格。声声。村からはじめて弁護士。囲む会。会長は坂出。否。日照。ひとしきり話題がはずむ。里美が自信がなさそう。先輩と比較、自分は駄目とあきらめたことがある。祝杯をあげる。

(040600) 第1日、夕方、黒住が石岡に依頼、事件の経緯、殺人、死体隠蔽、処理
(040601) 日照合流、恋人、黒住が石岡に、真理子の死
日照がきた。頭が青々。里美を祝福。横の青年が声。石岡先生。然り。黒住という。大岐の島神社のきえた巫女の。ああ、やっとわかった。育子が紹介しようとちかづいたが、紹介ずみと。で、石岡がいう。結婚の約束は。した。まだ結納は。大切な恋人だった。成程、で、最近の進展は。無し、でもこのまま謎のままでは。決着をつけたい。で、自分はどう考えてるか。真理子がいってた。自分に何かあれば。それは事故でない。事件。つまり。真理子の意志できえたのでない。成程。

(040602) 警察と神主菊川、黒住が失恋、否、真理子の家庭の事情
警察は。自分、黒住がふられたという考えのよう。で。それはない。成程。あの時、真理子はわかれる直前、またすぐあおうといった。心からの言葉。で、仕事は。百姓。成程。真理子は男にもてる。黒住にあきたと菊川がいったとか。それは嘘。真理子も黒住がすき。然り。とやかくいいたくないが。信じてほしい。自分と結婚と真理子の方から。自分からきえる。はずない。つまりきえたら事件といってたのかと石岡。だから、しらべてと。ふむ。自分は一生懸命に。しらべて、で。わからない。どのように、時間の余裕もないのに。真理子は身の危険を。然り。以前から。具体的に。沈黙。ここではいえない。では石岡の部屋で。あう。然りと石岡。家にもどる。必要ない。携帯で連絡済み。どこかに監禁は。あるかもと。でもない。そんな場所ない。ふむ。神社は毎日人の出入り。3ケ月もたった。10月15日は雨。然り。4時前にあってた。然り。かわった様子は。無し。バイバイと。いった。それはすぐにあおう。5時にという意味。あえるか、話せるかと石岡。はなせない。神事につきしたがうから。それを見るつもり。成程。それがおわれば可能。でも、もういなかった。然り。この後、彼女は家に。車でおくる予定。

(040603) 巫女はバイト感覚、実家には借金、でも結婚の決意
巫女には特殊な資格は。無し、バイト感覚。特殊な教育、トレーニングは。ない。普通の子。神社にいったら菊川にたのまれた。家は。百姓。で、両親は心配でしょう。否、いない。家には祖父と祖母。事情があって。どんな。ここは不適。失踪がわかったら。どこまでも、外国までもおいかける。まあそうでしょう。意を決していう。別の男と結婚するというなら男らしくあきらめる。彼女の家は特殊な事情があるから。ふうん。自分の母は反対。祖父母に相当の借金。でも真理子は可愛い。自分に母親ともうまくやると約束。だからだまって失踪するはずがない。母親の反対は説明すればすむ。そのことは真理子にいってた。

(040604) 真理子が自分の意志で失踪、否
あの大勢の氏子に見られずきえる方法ない。絶対に。然り。警察はすぐ。調査。氏子の中に警察官。すぐ、トイレ、浴室、床下、物置、などと。他にありそうなところは。無し。地下室は。ない。では、これは万一、真理子が自分の意志で身をひそめ皆の目をのがれようとしたら。ない。これは仮定だが。でもない。というのは神事奉納の後にみんながあがって広間で食事。警官はこの時、調査。成程。氏子の何人かは警察官と一緒。自分も梯子をかけ屋根の上。神殿は銅葺き、角度も急。 真理子を最後に見たのは。4時の7分前。物置の裏の軒下のところ、沖津の宮の北側。外で。然り。立ち話。中でない。そこでバイバイ、あとで。雨の中にでて神殿の方に。傘は。もってない。自分にかしてくれたから。では、それから神殿の菊川にあってるはず。然り。では最後に真理子を見たのは菊川。然り。神社の中にほかに人は。いない。菊川と真理子の二人のみ。菊川は。4時になったら袴はけ。それから水聖堂に。祝詞を。だからその後の真理子は不知。5時5分前に神殿をでたら不在。家にかえたと思ったといった。で、最後にわかれた場所は。水聖堂にゆく渡り廊下。巫女の衣裳は。まだ。衣裳は後で発見。するときる前にきえた。然り。でもジーンズはいてた。何。だからジーンズをぬいで白の着物をきて、しかし袴をはく前に。きえたということ。白い着物は。きえた。それで人前に。でられる。ふうむ。黒住は。雨の中、小走りで帰宅。

(040605) 殺害の可能性、では死体の隠蔽、処理は、不可解
徒歩。然り。真理子の服装は。普通のライナーとジーンズ。いいたくないことだがと石岡。真理子が殺害されてたら。覚悟してる。穴をほってうめる場所は。ない。あの敷地はセメント。床下は。石がびっしり。成程。はがしたらわかる。敷地の周囲の斜面は。熊笹。で、場所は。無し。警察、自分も。警察犬も導入。みだれは。まったくなし。さらにほってうめる。そんな時間ない。スコップも。きれい。ふうむ。わかれたのが3時57分、祝詞。その途中で太鼓。最初の太鼓は。4時5分くらい。成程。その後は。15分おき。3回。たたく人は菊川のみ。のみ。うち方は。特殊、神職以外は無理。おそろしいことをいうがと石岡。体をこまかく、骨はくだいてトイレにながす。警察は便器のルミノール検査は。血痕の痕跡を検出。やった。浴槽、流し、洗面台も。へえ。でない。さらに犬で熊笹に、臭いの追跡。無し。はあ。時間がかかる。現実性ないが。不可解。もうどこにもない。

(040700) 第1日、夜、黒住との対話、真理子の家、母、櫂の身の上話し、菊川、睦雄の油絵
(040701) 部屋で石岡と対話、真理子の実母、櫂、里子
石岡の部屋に。黒住に携帯で自宅に連絡と。ここにとまるようすすめた。電気コタツでむきあう。こちらはいつから。昨日から。あの事件以来。然り。自分は当時子ども。今、何歳。19歳。真理子は19歳。石岡の本をよんだと黒住。そう、感想は。むずかしい。えっ。では、真理子の家の事情。話せるか。陰口。然り。でも。真理子の母は。存命。えっ、誰。ここに。で。櫂。成程。たしか。然り。どこでうんだ。ここ、大瀬の家で。では、嫁にきた。否。真理子の祖父母が櫂の両親。否。へえ。櫂は津山の農家の生れ。でも貝繁に里子に。成程。それで大瀬の家に。そこで成長。では、大瀬櫂。否、大瀬喜子(よしこ)。櫂は実家の時の名前。どんな事情で。ケモノにとりつかれたと。櫂が。櫂とその母。どんな状態。不知。で。神社でお祓い、里子。呪われてる。然り。それは櫂。否、その家。櫂はここではよい人生をおくらなかったと。ひどい。ずいぶん差別があった。それで。

(040702) 櫂の実家は断絶、養子、養子をおって家出、再婚、出戻り
家はすぐたえたそう。両親も。成程。もと備中藩の首切り役人。呪われてる。大瀬は男の子がほしかったがいなかった。20歳になって養子を。子どもがうまれなかった。でも10年たって真理子。舅がきつかったので夫が家出。妻子は。おいて。で。櫂は。夫をおって家出。真理子は。おいて。えっ。詳細は不明だが、その養子の差金とか。真理子は。乳飲み子。祖父母が養育。母乳なし。それから櫂は。他の男と結婚、新見で。真理子を引き取りにきたが拒絶。二人目の男にもすてられ、山の方のふるい家でくらす。子どもは。無し。でも大瀬の家には。もどれない。収入は。あちこちの家の手伝い、内職。大変。日照が面倒をみてるとか。一番の働き場所は法仙寺。真理子は櫂とは。あわず。成程。祖父母は高齢。然り、田は賃貸し。結婚したら自分が二つ。たすかる。然り。でも可能か。今は機械が。でも母親は反対。成程。

(040703) 真理子は大瀬で働き手、高収入の巫女
で、真理子が収入を。然り、菊川の払いがよかった。多額か。二子山はよい人だが菊川は食わせ者。そう。表面的に人当たりはよい。そう。真理子もいってた。危険を感じたか。ずっといいよってた。神職、誰にもいえず。菊川は。53歳。いいよるとは。愛人になれ。やめるのは。家がこまる。だからさんざんいいよる。成程。女出入りは。けっこうあったよう。もてた。裏で金貸し。宗像大社にはちゃんと上納金。本当は別の人を派遣したかったらしい。神職はむづかしい。否、大分の樵だったとか。やせて貧相。この山には人の来手がないから、なれた。では、神職の菊川が大瀬真理子をどうかした。然り。殺害した。然り。自分に真理子がいった。真理子がいなくなったら。それは菊川の仕業。声。里美。話しができたかと黒住にきく。然り。で、用件。お風呂と。二子山がアトピー。夫人に何かいわれて落ち込み。明日、大岐の島神社に挨拶。何。不明。ふうん、でも道は。除雪車が津山から。

(040704) 里美、起訴の可否、湯殿に案内、油絵の出現、神社訪問の話し
先生という里美に石岡が、弁護士も先生。すると上山評人も先生という。失踪事件をしってるか。然り。どうしてきえた。不知。かかわらずか。然り。では検事なら菊川を起訴。できない。死体無し、自白無し、物証無し。成程。で、どうするかと黒住。うーん、風呂。落胆。案内と里美。めずらしい絵が。で男湯にかざった。都井睦雄の。へえ。三人でむかう。渡り廊下。ふきこむ雪で明日はうまる。黒住には鼈甲の間を。この廊下の下にまだ石段が。ある。大岐の島神社に二子山が。ゆく。石岡もというと黒住も。しかし石岡がとめる。かわりに里美がゆく。司法試験合格者だから、菊川が警戒。否、未知。二子山とはあわないと黒住。では日照は。最悪。女好きとかと里美。で、二子山、石岡、里美で。脱衣場に。

(040705) 森孝の絵か、下半分は茶一色とは変
これと里美。もしかしたら森孝の絵。鎧兜の武士。抜刀。そばに桜の樹。背後に木立。武者の前に裸の男。芳雄。この話ししってるかと黒住にきく。然り。はじめて。見る。睦雄か。そうらしい。サイン無し。どうしてここに。樽元がもらってきたらしい。すると森孝事件が睦雄事件のテキストになってるかも。この絵何か変と石岡。上半分だけ。半分はただの茶色。何故、下にかかなかった。湯気がある。龍尾館のほうがよい。

(040800) 森孝魔王 一、年貢米未納の百姓、留吉、代官の悪行
(040801) 百姓、留吉、負傷、年貢米未納
杉里にすむ留吉は先祖代々の田をまもってくらしてた。先祖が流れ者。不便な田だった。大変な負担だがめげずに農作業にはげむ。ある時、熊におそわれ右足のふくらはぎを負傷。田の一部があれだす。留吉には犬坊というもと殿様の側室の家系で、村一番の美人のお由を嫁にもらった。器量よしで働き者。二人にはお春という娘。留吉は傷がもとで昔のように働けなくなった。お由がかわりに田にでた 。お春もよく手伝った。留吉は村一番の果報者といわれた。

負傷から年貢の納入もままならず、借金もかさんだ。怠け癖がついたと噂。お由も借金をした。まずしい村で困窮した。岡田弦左衛門という代官がいた。お由に働きにくるようにと声がかかった。

(040802) 横暴な代官が留吉の足を切断
代官は自分の身の回りの仕事をさせた。代官はお由にいいよる。こまって奥方に相談するとかえって不義といって折檻、代官もくわわった。そこでお役御免となった。ここで傷ついたお由もはたらけなくなった。秋の収穫期をむかえ年貢をおさめられなかった。夫婦は代官陣屋によびだされた。代官にきびしく詮議され、二人に難癖をつけました。たてないという留吉を無理にたたせ、ついにその足をきりおとしました。

(040900) 森孝魔王 二、留吉の死体が森孝魔王に、代官を懲罰
(040901) 森孝に祈願、留吉の死亡
留吉は生死の境をさまよい、妻と娘は寝ずの看病をしました。田が放置されたので代官はその田をとりあげ、代官陣屋にちいさな家を三人にあたえました。お由は妾となり、留吉は病床につきました。やがてお春にまで手をだそうとしました。やせさらばえた留吉は様子がわかるらしく、ただなくばかりです。お春は法仙寺裏の森孝さんにお参りをしました。冬のある日とうとう留吉が死にました。代官があたえた粗末な樽に死体をおさめ、法仙寺でとむらいました。明日に埋葬しようと相談して家にもどると、代官がやってきて、ないている母子をみてしかりました。乱暴しようとする代官をつきとばして、お春をにがせました。

(040902) 森孝のお告げ、代官の首
お春は法仙寺の森孝さんの前にいました。雪上で手をあわせ、なきながらいのりました。ふと網の中におかれた森孝さんの鎧兜が目にはいりました。普段は鍵がかかってるのに、どうしたことかかかってません。お春は刀をとりだそうとしました。すると声がきこえました。法仙寺にもどり父親をここにつれてきて、鎧兜をきせ、義足をつけよ、といいます。お春は法仙寺にむかい、悪戦苦闘の後に森孝さんの社にもどりました。やがて鎧兜をきせると雪上によこたわる武士の姿となりました。脛当てのないところに義足をはかせました。吹雪の中、よこたわった具足の上にどんどん雪がつもりました。やがてむっくりとおき、たちあがりました。お春の家にむかうのです。しっかりとあゆむ武者のあとをお春がおいます。ためらいもなく土間にはいり、そのまま畳の上にあがりました。代官はおどろいて刀できりつけましたが、根元からおれました。

悲鳴をあげた代官の首をむんずとつかみ、天井までもちあげると壁にたたきつけました。頭からおちた代官をふたたびもちあげ、玄関から雪上にたたきつけました。足で腹をおさえ両手で首をひきちぎりました。代官の首をもって悠然と法仙寺にもとってゆきました。母親が解放され翌朝がやってきました。

森孝さんの社の前には武者がたおれ、その右手には代官の首がありました。鎧兜をぬがせると留吉のやせほそった死体がありました。村人は二人を丁寧に供養しました。お由とお春はその後は無事に幸せにくらしました。

(050000) 第二章 予告された二番目の死体、真理子の出現
(050100) 第2日、朝、油絵から女
(050101) 里美と脱衣場の油絵に、両腕のない女の出現
外から里美の声。石岡は昨夜は森孝魔王をよんでたので多少寝不足。ちょっときて。変なものと里美。廊下をのぼる。晴天。2メートルの雪。で、何。こっち。脱衣場。これ。睦雄の油絵。あっ。ねっと里美。どうしたんだ。絵柄が。かわってる。昨夜の絵は。武者、裸の男、桜の樹、森。だった。下半分はただ茶色の地面だった。今朝は。ここに女。地中にうまってる。それが今朝は見えた。何故。さあ。しってた。否。きゃ。両腕がない。きられた。森孝に。腕は。ここ。こわい、この絵は何と里美。もう一本は。石岡が指でなぞる。あっ。手の甲に水。わかった。

(050102) 雨漏り、水彩の上塗り
天井の木組みがぬれてる。梁の中途にもりあがった水滴。ほら、雨漏り。成程。板壁、額の上、額の中に。絵の表面をつたってる。成程。で、雨漏りの水が。絵の具をながして。然り。でも油絵で。だから水彩で上に。へえ。それが水でながれた。へえ。女は油絵。武者も男も桜の樹も。だからとけない。然り。上にぬった水彩だけがおちた。でも何故。不知、土のつもりかな。成程。で、ここから移動させた方が、大事な部分が水彩かもしれないし。とりあえず安全な場所に移動。龍尾館に移動する。里美に助言。音、何。除雪車。

やった、大岐の島神社にゆける。そう。二子山も。でも二子山の四駆は雪の中、無理と思った。どうして水彩を上塗りしたのかと里美。不知。石岡が考える。お胤は見つかってる。何故。足音、櫂が朝食と。

(050200) 第2日、朝食、石岡、二子山、里美、ユリ子、徒歩で神社へ、対話、神社到着、警戒する菊川、地震、真理子出現
(050201) 四人が神社に、ユキ子の将来の夢
朝食後、雪掻き。雪は自分の頭よりたかい所にほうりあげる。除雪後にできた筋に。黒住は帰宅へ。石岡、二子山、里美、ユキ子が大岐の島神社に。ユキ子にきく。学校は面白い。勉強ばっかり。成績は。わりと。お母さんよろこんでる。勉強とうるさい。何年生れ。平成2年(1990。将来、何になると石岡。わかんない。お母さんは。歌手に。自分はステージママ。歌のレッスンは。してない。ママはしてた。かも。してない。歌すき。すき。有名に。なりたいかも。クラスになりたい子は。いないと思う。医者には。母はなれと。ユキ子自身では。嫌。血が嫌、夜によばれる。成程。弁護士は。なりたい。そう。なりたい。ではライバルと里美。だったら検事にと石岡。まけそう。里美にきく。どんな勉強を。司法試験の勉強。毎年一回。もう準備。里美がこまかに試験の説明。むずかしそう。人前でしゃべるのは。わりと得意。大学在学中になる人も。いる。合格したら検事でも裁判官でも。そう。

(050202) 里美の研修の話し、菊川の人柄
里美は合格とユキ子。そう。研修は。岡山の地裁。法律事務所で研修。大岐の島神社までの道。山を旋回。歩行者用に直進の階段道。雪で不通。眼下に法仙寺、龍臥亭。いい眺め。昨夜の話しを思いだし、菊川はサイキック。否。そんなタイプでは。ない。ではどんな。普通人。お金、女の人がすき。金貸しもと石岡。噂。さらに上にのぼると杉林。視界がうしなわれる。たかい。電信柱みたい。然り。樹齢は。80年ほど。寿命は。ここはよい森。神木。

(050203) 到着、菊川の警戒心が爆発、地震
到着。頂上の除雪は完了。雪の杉林、除雪の雪盛りで独自の世界。閉鎖された世界。ちいさな神殿、渡り廊下。水聖堂。これが沖津の宮。周囲から隔離。下はセメント。全部そう。ここで大瀬真理子がきえた。然り。玄関のガラス戸をあける。声。しろい神職の服、小柄。挨拶。広間を右、左が曇り硝子。広間の隣りに小部屋。ガラス戸をあけてはいる。二子山が饅頭の土産をわたす。里美に、今何を。横浜でオフィス勤務。何の。法律事務所。事務か。まあ。もうかる。否。都会は。まあ、横浜はちょうど。東京にちかい。まあ。わかい男も。まあ。二子山に都会のことは。まあ。最近のわかい者は皆都会に。ここはよい所と石岡。菊川に笑みがない。心があらわえると里美。然り。ここにもどるか。巫女にならないか。失踪とかと里美。こまってる。ぴったり。どうして。よい立ち姿。真理子を最後にみたのは。それがどうした。いや正確に。自分がこまってる。はあ、真理子の行方さがさないと。お前は警察か。はあ。まあまあと二子山。都会のものがちゃらちゃらと。そんなつもりはと里美。ある、都会の男がよい。興奮、菊川はたちあがる。自分一人を馬鹿に。警察も馬鹿にした。良心、道徳心がない。神前でよくいうと興奮。すると、どうんという音。

(050204) 真理子の死体が出現
足元に衝撃。杉の森に騒音。鳥の声、屋根から降雪の音。また揺れ。地鳴り。女性の悲鳴。大地震だった。おわりかと里美。おわりか。無事をたしかめる。はやく外に。然り。ガラスをふまないように外に。玄関、われた硝子戸。携帯の音。無事。育子かららしい。石岡は杉の木立に。何本かはかたむく。地面に裂け目。50センチから1メートル。おそるおそる裂け目を。あっと思わず声。何。何。龍頭館の睦雄の絵が再現されてた。女の体。死体。真理子。白骨化してない。

(050300) 第2日、午前、警察に連絡、交通途絶、県警田中に、錯乱する菊川、真理子の謎
(050301) 駐在に連絡、県警に連絡、現場検証の相談
里美が駐在に連絡。自転車でくる。あきれる。県警の田中に連絡をたのむ。石岡が田中にはなす。無事。然り、だが地割れ。どこ。大岐の島神社の駐車場。割れ目から死体。今、見えてる。たしかか。たしか。深さ2メートル。ここで大瀬真理子という巫女が失踪。3カ月前。面通しできるか。神主、恋人。そこにうめられてた。不可解、コンクリートの表面。その下に。然り。セメントは。ふるい。死体は骨。否。駐在は自転車。了解。津山から応援をたのんで四駆で。田中個人も。然り。まってるか。然り。警部補に。然り。鈴木、福井は退職。恋人の黒住を。よんでよい。死体にさわらぬよう。了解。里美に黒住への連絡を。菊川から目をはなさないようにと二子山に。どうやってコンクリートの下に。不可解。龍臥亭に連絡。日照がくると里美。一同が中にもどる。

(050302) 菊川が錯乱、地割れの死体の謎
菊川ば茫然、不可解という。二子山がきく。あれは真理子か。否。では誰。不知。中を清掃。菊川が大広間に。段差につまづきたおれる。うわごと。真理子がもどってくる。痙攣。三人でおさえる。あなたがうめたのかと石岡。否。どうやってセメントの下に。不知。では誰がしってる。不知。癲癇と石岡。口に棒をかませた。まったく事件に不知のようと里美。然り。しかし不可解。あついセメントの下に死体。駐車場、土がむだしの場所は。ない。別のむきだしの場所から。個人の力。不可能。かりにあったとして、そこに。うめればよい。熊笹の斜面。表面に痕跡。無し。地下道、地下の隠し部屋。無し、大社が派遣、先任から引き継ぎ。秘密にできない。あれば二子山にもつたわる。

(050400) 2日、昼頃、黒住、日照到着、巡査を救出、犯人さがしを約束
(050401) 巡査が地割れに転落、ロープで救出
黒住の自動車が到着。駐車場で黒住に挨拶。老人の巡査がよろよろとあるく。地割れの方を指差す。黒住がいう。そっちで日照に。車にのらす。そこに日照が到着。硝子がわれたと日照。ここの玄関も。中の硝子は全滅と石岡。菊川が癲癇。成程。育子からおにぎり。死体は。示す。巡査がぶつくさ文句。おこってると日照。きこえる。否、耳がとおい。昔は元憲兵。で、警察は。あれ。否、ほかのもっとまともな。じきに岡山県警と津山から。巡査が割れ目の縁に。身をかがめた巡査が地割れに。大声。黒住にロープをたのむ。二子山、里美、ユキ子が外に。たらしたロープに文句。一同がひきあげる。

(050402) 黒住の実見、後悔の黒住に犯人究明の約束
文句たらたらの巡査を家の中に。黒住が地割れをのぞく。どうしてここにうまったのかと石岡。真理子か。然り。着物の下にトレーナー。そう、その上にあかい袴かと石岡。然り。黒住がいう。何もたすけてやらなかった。でもできなかった。でも結婚したら沢山できたと石岡。今でもできた。見殺しにした。意気地がなかった。黒住は杉の大木を見あげた。今でもできることはと石岡。何。葬式と犯人探し。犯人。そう。犯人をころす。まて。菊川をころす。とめた。黒住に菊川の犯行をあばいてはっきりさせると約束した。

(050500) 第2日、昼頃、真理子の家の事情、二人の関係、起訴できるか、警察にかわり現場検証、葬式の論争
(050501) 菊川の起訴可能か、方法の詳細は、違法な高利貸、菊川の莫大な援助
二人は建物にはいった。一同はわれた硝子の応急修理をしてた。菊川も回復し参加。巡査はストーブのある部屋のソファでやすむ。里美にきく。菊川の女性問題が。あった。真理子とも。まあ。死体がでた。起訴は。不可。えっ。被告が全面的にみとめれば。そうでなければ検事に立証責任。ああ。訴因は。何。何の罪。真理子殺害。でも菊川がいつ、どこで。逮捕して尋問は。やみくもに逮捕は。不可。誰が許可。裁判官。それにおおきな障害。何。あついコンクリートをどうやってやぶった。成程。弁護士は絶対につく。ああ。それにいつ、大勢の氏子。神殿から定期的に太鼓の音。ころす時間、かくす時間。場所は。沈黙。では高利貸はと石岡。もし違法行為があるなら。それは不可と日照。わるい噂を。二人を大広間の隅に。日照がいう。最初はかなり暴利。携帯のネットワークをつかって。法律改正にすばやく対応、低金利。違法でない。

(050502) 真理子の家庭の事情、むつかしい田の耕筰、家計の担い手
そういう線は。むずかしい。そうでもないと日照。何。そうでない。何と石岡。かなりの沈黙の後、真理子の家の田は異様。はあ。保湿がわるい。水がぬける。手がかかる。皆がいやがる。誰。農業耕作法人が。農地の保有はまだだが、49%まで投資が可能。企業参入。どんな。建設会社。それで機械化農業。ところでこれは都市近郊。 山間地では高齢化。耕作放棄地が。それで法人農業。で。耕作、収穫、使用料の支払い。成程。耕作オペレーターという人がいる。これが多数の田の作業を調整、耕作する。ところが。真理子の田はうまくゆかない。作業量がふえる。成程。で、耕作法人がきらう。やすい使用料でかす。それは。借金が。だから負担が真理子一人に。で。ここだけの話しと。ことわって。日照がいう。菊川は真理子に月80万円。へえ。どうやら本当。そんな。バイトにそんな多額。ない。だから関係があった。しらぬわ黒住ばかりと石岡。酒の上の話し、関係をあけすけ。最低の奴。でもこのあたりにはある話し。2、3年の関係らしい。愛人関係。そんな約束があったか。不明。ではと石岡。

(050503) 性的関係の強要、起訴は困難、遺体の収容、日照が葬式
暴行。それは真理子自身の被害届がないと。死んでる。合議のうえと日照。でも動機は。菊川は金貸しでかせいだ大半を真理子にみついだ。真理子が拒絶。犯行にと石岡。拒絶もありと里美。携帯の着信音。姫神線が不通で来訪はあすと田中の連絡。ストーブのある部屋でおそい昼食。善後策を検討。田中が予定どおり明日くるか不確実。真理子をひきあげたいと黒住。田中に連絡、やりとり。カメラは。ある。一眼の高級か。日照があると。巻尺は。ある。フィルムを1本以上、徹底した現場写真。特に死体の状況。うごかすのは写真をとった後。図面。測量、数字を記入と里美。

(050504) 葬式で菊川と争い
二子山が死体を監視。葬式は自分と菊川。否と黒住。許婚の意向にと二子山。ここは自分の神域、死者は自分の巫女、失礼。神職が坊主の味方かと菊川。興奮した日照が高利貸と反撃。さらに里美が女好きについて批判。石岡が制止。菊川が祝詞をかくというと黒住が反対する。つかみかかられた菊川が警察をよぶという。もうきてるとソファでねてる巡査をしめす。ころした。そうなら証拠を。見つける。できないと菊川。二子山が制止。菊川と二子山が論争。日照が棺を伊勢にたのむという。

(050600) 第2日、午後、いったん龍臥亭に、櫂が自宅に、再度神社に、夕方、現場写真、腕なし、引き上げ、法仙寺へ
(050601) 二子山が神社、日照が法仙寺、他が龍臥亭、現場で写真、遺体を引き上げへ、両腕なし
一同は龍臥亭にもどり。日照は法仙寺にもどった。龍臥亭はほとんどダメージをうけてなかった。育子、通子が一階の窓の紙をはってた。櫂は自宅にもどってた。龍胎館の窓も無事のようだった。里美はユキ子を通子にもどし、巻尺、デジカメをもってきた。黒住がむかえにきた。スケッチブック、鉛筆、サインペン、毛布、ロープをもってきた。大瀬の家によって服をもってきたという。車で法仙寺によった。日照がニコンF4をもってた。大岐の島神社の駐車場にゆく。

(050602) 写真撮影、死体の検証
二子山が椅子にかけ監視。夕方ちかく。菊川は現場にちかすいてない。然りと二子山。写真撮影。日照がニコンF4、里美がデジカメ。石岡、二子山が巻尺で測量。図面。巡査がおちたあたりは、あれてたが死体の場所からはなれてた。菊川と巡査がでてきた。巡査の名前は。運部(はこべ)。撮影はほぼ完了。死体についた泥、雪をはらって撮影と石岡。誰が撮影。ちいさな箒をもって石岡がおりた。髮が灰色。死体の上方から泥、雪をはらう。死体は背からお尻。着物が茶色。その下はトレーナー。両腕がなかった。肩口からすっぱりと切断。着物の袖、トレーナーの袖がなかった。死体の姿勢、左側部が上、見えてるのは左だが、おそらく右も。あの絵のとおり。どうしたと二子山。ああ。撮影を再開。そろそろ上にと日照。毛布を。何かと里美。腕がない。えっ、どうして。不知。おちた腕は。不明。両手ともと日照。然り。足は。あり。何故と菊川にきく。憤然と不知。

(050603) 駐車場に、日照が本人確認、法仙寺へ、油絵の疑問
毛布を。 死体は。硬直。おとすと。バラバラにも。覚悟してもちあげ。毛布でくるむ。ロープをひいて。黒住、二子山、日照、里美が。ひかれて駐車場の平坦部に。そのまま車にと日照。黒住の軽四の後部に。ドアがしまらない。できるかと日照。然りと黒住。では死体を法仙寺にと石岡。顔の確認はと日照。菊川は。否。黒住をとめて日照が確認。不明、よごれてる。両手がきられてると日照。石岡が考える。それは龍臥亭の油絵を見た者か。その理由。不可解。お胤は切断されず、切断は芳雄。伝説をしる者には理由。なし。では見た者だけ。誰。睦雄だけでは。ながく茶色で隠蔽。睦雄。馬鹿な。白骨でない。里美にきく。茶色でかくされたのは最近のこと。否。はじめて見たのは。昭和30年頃。不成立。その考えは。睦雄の油絵、次に別人が水彩で隠蔽。その別人が油絵のイメージどおり真理子を殺害、切断。不可解。車中に。黒川が石岡に謝意。

(050700) 第2日、夕食、袖の謎、森孝魔王、獣子、櫂の不幸、借金、菊川の悪行、森孝魔王への期待
(050701) 黒住を気づかう、日照が菊川の悪行をにくむ
龍臥亭で夕食。日照参加、黒住不参加。真理子かと石岡。然りと日照。自分の車はと二子山。雪の下。食事後、石岡が三階に。日照、里美の三人で景色を眺望。田の耕作スタイルがかわった。時代の流れと日照。全体の5割強。法人が失敗は。あるかも。大瀬の家に真理子の死は。まだ。黒住は。つらいだろう。石岡は自分の悲惨な過去を思いだしていた。黒住は。よい子。勇気がある。何とかしてやらないと。何をと石岡。菊川は悪人。誰かが。死体がでた。できないかと日照。里美は不答。やったのか、本当にと石岡。さあ。腕がなかった。それも菊川。死体にちょっと変なことと日照。右腕は肩口から、しかし袖はあった。えっ。着物。否、下のトレーナーも。えっ、どういうこと。トレーナーは肘のところから。また石岡が考える。

(050702) 袖の謎、森孝魔王伝説、迫害された人生、獣子、櫂の不幸
森孝のように切断。着物も。では服をぬがせる。腕をきる。また服をきせる。可能。でも何故。不可解。でもこれは重要なヒントでは。菊川がやったのか。里美にきく。菊川か。さあ。「森孝魔王」を読了と石岡。日照に。不答。里美にきく。否。どう思ったかと日照。ユダヤの神話を連想。ユダヤ人と日本人はにてるのか。成程。つらい日常にとんでもない怪物の登場を夢想、それが悪人をたおす。国をもたない流浪の民、ユダヤ人ににてる。つらい日常をくらしてると日照。石岡がきく。

子どもがうまれる時、獣(けもの)が憑くとは。どんな時。櫂がいわれて里子にだされた。成程、獣子(けものご)とか鬼子(おにこ)とかいう。昔から。獣子。のろわれた家、そこに嫁入り、妊娠、顔が凶相に。へえ。獣みたいなけわしい顔、人間でない顔。へえ。そんな時、娘は獣子をうむ。何。人間の子どもでない。いやあ。亀みたいな格好。背中にみっしりくろい毛。へえ。うまれてすぐあるく。家の縁の下ににげる。嫁の布団の下にやってくる。嫁は三日三晩高熱、死亡。言い伝え。うまれたらすぐ、うちころす。気味のわるい話しと石岡。で、櫂がそう。否、獣子は人間の世界で生存できず。失踪。だから間違い。あるいは櫂の母親がとついだ家。ここが他人にうらまれるようなことをしてた。するとすこしかわった子がうまれるとそういって差別する。

(050703) 櫂の生活、借金、菊川の悪行、森孝魔王への期待
昔の話し。でも里子にだされ差別と石岡。ひどいね。迷信だが、反省しないと日照。昔はひどかったと里美。でも櫂のあかるい人柄は救いと石岡。然り、彼女は。援助してるとか。できることは。然りと里美。大変な人生、それをかんじさせない。えらいと日照。菊川から借金は。あったと日照。へえ。ここの人は金がない。生活はきつい。かせぐ方法がない。大瀬の家も借金。沈黙。あれだけじゃない。えっ。皆、たえてる。菊川がと石岡。菊川は神職でない。おいつめられてる人をたすける。それが神職。しかしくるしんでる人間をさらにくるしめる。そう。菊川が真理子をころした。間違いない。へえ。でも尻尾をださない。何人も首をつった。でも誰も手をだせない。森孝魔王でもいれば。ここまでが幻想の龍臥亭事件の幕開けだった。

(060000) 第三章 三番目の死、日照殺害か
(060100) 第2日、夜、櫂、不通、家を訪問、不在
(060101) 櫂の不通を心配、自宅をたずねるが不在
日照はすぐ法仙寺へ。応接間、育子、櫂と連絡がとれない。心配。10時前。今夜連絡の約束。で、ない。はじめて。地震が心配。どうする。雪。極寒、危険。明日、明かるく。事態は急をと育子。骨折、大怪我。いこう。二子山、育子、石岡、それにスコップ3つ。坂出、里美、ユキ子、通子はのこる。除雪車の道、育子が先導。貝繁銀座。山道。アイスバーン。30分の徒歩。おおきな山影。この先に櫂かと二子山。然りと育子。行き止まり。やりなおし。やっと到着。あっ。屋根の形がかわってる。声をかける。櫂がもっていったスコップ。玄関、引き戸。土間に。畳の間、囲炉裏。屋根がおちてた。不在か。不在。これだけか。これだけ。避難かと石岡。否、その連絡ないと育子。法仙寺に電話と二子山。櫂はいってない。石岡が土間に。へっつい、鍋、流し、電気釜。ここが台所。然り。スイッチをいれる。電気がきれてた。屋根がおちて断線。この電球が梁に直接。床にロープ。電話できない理由はと石岡。ない。ちかくの民家。不知。近所付き合いがない。

(060200) 第3日、朝、ナバやんの首足無し死体、脅迫状、日照の涅槃発言、鎧に収納
(060201) 無頭のナバやんが門外に、脅迫状を発見
里美におこされる。門の前に死体。門外に。誰。ナバやん。この死体に頭がないと里美。足もなかった。首と足はどこにと二子山。無し。何できった。チェーンソー。坂出がズボンの膝の下、切断面をさす。染み。オイル。足の断面も。どういうことと二子山。この死体は水分無し。しかし普通、死体は水気、脂気がおおい。切断はチェーンソーが楽だがすぐ目ずまり。それでオイル。成程。でも何故ここに。昨夜、櫂がかえった時は。無し。今朝8時、ここにきたらあったと育子。法仙寺の死体置場から誰が。その死体置場は誰でも。はいれる。成程、誰でも何時でも。どうして首、足が。日照に連絡は。済み。櫂から電話は。無し。これ何と坂出。ノーネクタイの胸の内ポケット。紙の端。石岡が注意。軍手、ハンカチーフをつかう。「この骸(むくろ)を......、森孝の具足の内に葬れ。災いを避けたいなら。魔」。具足とは。鎧兜のこと。

(060202) 日照が涅槃を見たと発言、死体を鎧兜に
日照が到着。驚。和紙を日照に。何。死体のポケットに。成程。どう思う。むずかしい顔。どうしてここに。不知、地下へいった。死体がない。伊勢に連絡。不通。真理子の死体は。ある。日照が念仏。雪に尻餅。何。涅槃を見たと日照。足、頭は。不明。仏の声をきいたと日照。何と坂出。このとおりやれ。はっきりきこえたか。然り。本当か。時々、ぼんやり。しかし今度ははっきり。一同沈黙。まあ、やめるかと。否、やれと二子山。一同も同調。石岡にきく。森孝魔王の伝承そのまま。然り、伝説をしってるものの悪戯と日照。否、誰かの祈り。しばらくこの流れにのったらと石岡。でも頭、足がない。でも胴体だけでもと石岡。でもどうやってと里美。森孝の鎧をねかせ、そこにいれる。そうするかと日照。

(060300) 第3日、朝食、櫂の悲惨な境遇、死体を法仙寺に、網の中の鎧兜、死体の収納、日照の独白
(060301) 朝食で櫂の話し、獣子で里子、きびしい養父母、地域の差別
死体は門内に。朝食。日照も参加。櫂から連絡。無し。身の上話しとなる。獣子故に里子。大瀬の家。成長、ひどい生活と石岡。然り、学校で差別、子どもが石投げ。子どもは親のいうとおりやると坂出。大瀬の家で食事は別のちゃぶ台と日照。ひどいと通子。獣子の扱い。その習慣と日照。そうしないと他の者にもとりつく。迷信と坂出。両親はどんな人と石岡。よい人。本当にと通子。よい人、信仰心があつい。そのままやる。だから致命的と坂出。そんな習慣、子どもに理解不能。でも差別が道徳となってる。やらないと、親が村からやられる。でもたたかえば。田に水をとめる。こまる。でもそれは犯罪。巡査は村の味方と日照。

(060302) 結婚、夫をおって家出、離縁、再婚、出戻り、地震
で、櫂が成人。婿。でも家をでたと石岡。舅がきびしかった。真面目、きびしい。布団の上げ下ろしまで。薬缶の水をきらしたと頭をぽかん。えっ、それでよい人と里美。まあ田舎では普通。櫂はたびたびないてた。イジメでは。でも村の道徳、常識。それで櫂が夫をおって家をでた。顔がよくて頭が馬鹿な男。顔にほれた。テレビのスターは皆そう。で。やはり駄目。一時、ちいさい家で櫂をはたらかせた。乱暴した。まあ自分もさんざんされたから。もともと乱暴。きたえられて乱暴。最後は女をつくって櫂をおいだした。ひどい。それで大瀬の家に。もどれない。他家の手伝い。山の中でくらす。ナバやんと同じ、乞食。都会には。ゆけなかった。都会はおそろしい。そうかと石岡。それから金持ちにひろわれて手伝い。誰かと一緒。たぶん妾。結局だまされたと二子山。否、それほどでも。ふるい家をもらった。で、今度の地震でつぶれた。櫂はどこへ。不知と日照。

(060303) 死体を法仙寺、地下の鎧兜、取りだし
石岡と二子山が担架に死体をのせ法仙寺に。寺の裏手。二子山の車は半ば雪の中。奥さんは大丈夫かと日照。離縁寸前。されたら寺をやる。えっと二子山。神仏習合。神様と仏様。呼び名がちがうだけ。では日照は。さあてとこたえる。死体を地下へと日照。前の部屋。然り。洗い場のある霊安室。木造りのテーブルの上にすでに棺一つ。床にもう一つ。日照が鎧をとってくると。ナバやんは床の棺。真理子は。テーブルの上。見るか。蓋をずらした。ミイラ化。黒住には見せられない。これも伊勢が。化粧。で、失踪。探索中。では隣りにと日照。二人も。正面奧の金網。止め金をはずす。日照は金網の中に。兜を二子山に。それを石岡に。それを床に。面当て。胴当。脇の止め金をはずす。ひらくと大変なおおきさ。日照があらためて本当にやるかときく。二子山も金網の中に。二人で表に。三人がかりで前板後板をしめ、床に。日照は箱の類をおしやり、上下につむ。スペースを確保。胴当がこんなにおおきいとはと石岡。然り。こうなったのは戦国以降のこと。

(060304) 具足の説明、死体の収納、弱気の日照
へえ。鎧のこと「具足」。何故。それは「充分みちたりていてる」という意味。室町の頃から何もかもそろってる大鎧の形式、「具足」。鉄砲が登場。槍も。戦国時代の侍の死傷の理由は。大半が鉄砲、弓と槍。刀はごく少数。成程。一騎打ちなしか、卑怯。それが戦争。それで大鎧は鉄砲、槍に対応。胴当の中に鉄板。これ当世具足。前のは昔具足。具足といえば当世具足となる。胸板、両側に脇板、裏は押しつけ板。皆、鉄板入り。おもい。成程。胸板の下のは草摺(くさずり)。下半身を防護。草摺の上に揺るぎ。後ろ首のところ衿回(えりまわし)、肩当。小鰭(こびれ)、受筒、指物竿。竿。旗、敵味方の区別。成程。小袋は薬袋。成程。他は。袖、籠手、臑当て。これらも網にもどりもってきた。中には櫃と芯棒だけがのこった。でも臑当てがない。森孝は片足、かわりに義足。これは。最近のもの。また考えこむ。あれは誰がなんのためと日照。何かの企み。とにかくやろうと二子山。

(060305) 死体を収納、評人訪問へ、日照の独白、辞去
ナバやんを具足の中に。だが面当て、兜は不要。体に欠損のある武将の姿。石岡が考える。何かの陽動作戦。深刻さよりゲーム感覚。で、これからどうと石岡にきく。上山評人のところに。電話で挨拶。すぐ訪問する約束。二子山は龍臥亭に。日照が階段まで見送り。法仙寺、森孝の社、大岐の島神社とこのあたりは神域と石岡。そう。どんな人がが神仏につかえる人かと日照。えっ。冬に雪、春に花、誰もほめない。誰も見ない。でも自然は淡々とやる。然り。人から評価されるからやるのは1年2年の人。自然はすこしづつかわる。それをおしえるのが仏。その声をきくのが聖職者。石岡にいう。自分は俗物、でも時には仏の声をきく。いうとおりできないが。何と二子山。自分も俗物。日照は二子山に握手。よい友人だった。どうしたと二子山。石岡にいう。物書きも人をたすける。沢山たすけてやって。えっ。さっき涅槃の風景を見た。この世もながくない。よろしく。今晩もあえると二子山。わかれる。

(060400) 第3日、午前、日照のわかれの言葉、評人宅へ、お茶汲み人形、江戸の技術の進歩、ロボットの伝説、伊勢の戦時研究
(060401) 評人宅、茶運び人形の実演
評人宅へ。火葬場、銀杏の樹、地蔵尊の角、茅葺きの農家。応接間、奧の炬燵。地震はと石岡。まあ。テレビ、ビデオ・デッキ、書棚。座布団、電気コタツ。茶坊主の人形。これは。江戸時代の人形。ほう。茶運び人形。見たことは。写真では。では実演。まず 、最中を卓上に。寿司屋がだすような大型の湯呑みを人形が胸にかかげた盆に。重みですこしさがる。するするとちかづく。とめてと評人。手のひらでさえぎる。人形の向きを自分から見て向こう側に。背中を見ながら湯呑みをとる。人形はまたするするとうごき、評人のところにもどる。とまる。へえ。お茶を。これは。京都で購入。再現モデルの販売。ではオリジナルは。江戸時代のもの。では動力は。ローテク。湯呑みの重み。さがる。はしる。ゼンマイをまく。湯呑みをとる。ゼンマイがもどる。もどる。ではゼンマイだけ。材質は。鯨のヒゲ。江戸時代には金持ち、武家の家に。否、もっと普及。

江戸時代は面白い時代、このような玩具が日本中にあった可能性。図集「機巧図彙」をしめす。人形の説明図があった。でもこの材料は。うってない。設計図のみ。当時のベストセラー。成程。日本人が退屈な人種になったのは明治以降。軍国主義が遊び心をつみとった。江戸時代、こんな発明が自由だった。否、新規御法度との御触れ。成程。見世物小屋で大衆娯楽に提供。数学も世界第一級。からくり工作の科学技術は土木工事、建設工事、建築の分野にいっさい応用されず。成程。だから江戸文化は進歩しなかった。でもゆるされた方向で才能を発揮した天才がいた。

(060402) 加賀藩大野弁吉、谷田部藩、飯塚伊賀七、高松藩、久米通賢の発明、階段をおりる人形を実演、侍を退治したロボットの伝説を
金沢、加賀藩の大野弁吉は世界最初のロボット、とびはねる蛙の玩具。つくば市、当時、谷田部藩、飯塚伊賀七は小坊主のロボット。ほかに、おおきな公共使用の時計、グライダーの試作。高松藩、久米通賢、連射可能な弓、ゼンマイ発火式のピストル、さまざまな時計、団扇式の扇風機。成程。それに職人の腕の高度さ。設計図から製作できる。もう一つ面白いものと評人。長さ1メートル、幅20センチ、木製の台の上に10センチ四方のテーブルを支柱でささえたものが4つならんでる。これらは階段状にひくくなってる。これも自分の宝と評人。江戸時代の大衆の娯楽に提供したもの。当時人気になったもの。評人は1つの人形をつまんで最上段におく。すると背中方向に上体をそらせ足のすぐ後ろに両手をつく。すこし逡巡する時間があって足があがって一回転。一段下の段に着地。つづいて上体がそれにつづいて回転。両手をかかとの後ろに着地。これをくりかえす。上手、動力はと石岡。水銀。江戸の職人の知恵。

自分にききたいことはと評人。森孝魔王。津山で出版と評人。然り、日照から。龍臥亭で。実際にあった。森孝、お胤、芳雄。然りと評人。どう考えるか。ううむ。一種の機械人形の話し。世界中にも。然り、ユダヤ系のゴウレムの話し。成程、日本にも谷田部藩の飯塚伊賀七の伝説。酒をかいにゆくロボットを発明。実際に酒をかいにゆかせた。史実。否、さらに森孝魔王の下敷になってる話し。何。ロボットが街で弱い者いじめの侍に遭遇。川になげこんんだ。へえ。しいたげられた民衆の願望。

(060403) 事件関係者の情報を、伊勢のことを、研究との関連
うなづいて石岡がしばし沈黙。森孝魔王の取材か。否、森孝魔王は偶然しったこと。ここでちょっとした事件に遭遇。また。まあ、前回とはちがうが、大岐の島神社の巫女、失踪の真理子の死体発見。これは。不知、警察は。雪崩、大雪で未着。津山の警察か。然り。真理子の遺体は法仙寺。で、神職の菊川のことは。真理子は不知。菊川はよくない噂。ほかに何かと石岡。伝聞、ひかえる。ではナバやんのことは。したしくはなかった。では伊勢は。無口の人。昔医学、死体の研究。浜松で軍の秘密研究とかと石岡。否、登戸。陸軍秘密研究所。えっ登戸。したしかったかと石岡。否、昔薬局をやってた時に面識。自分のことは話したがらない。然り。それは恥部。今の死体の化粧もいやいや。何故と石岡。伊勢は死体の一部を負傷した兵隊につなぐ研究をしてたとか。可能か。一時的なら。かも。それは悲惨では。然り、最終的にくさりおちる手足をつけること。戦時、非常時なら研究。可能かもしれないし。へえ可能。でも脳はないと評人。その人自身だから。成程。戦争末期、兵士が不足。あり得る発想。異常、ホラーの世界と石岡。でもまだまだ。神風がふく。しんじてる連中も。あやしげな宗教団体が。いた。しかし伊勢の研究が関係が。然り、ナバやんの事件を説明。関係があるかもと石岡。絶句、悪戯と評人。でも度をすごしてる。不可解。何か理由が。不知と評人。

(060500) 第3日、昼食、龍臥亭に、夕方、日照、襲撃、一同、法仙寺、血溜まりの本堂、現場の調査、脅迫状
(060501) 龍臥亭にもどる、日照行方不明、事件か、四人で法仙寺に、本堂大広間
昼食を貝繁銀座の蕎麦屋。喫茶店に。さらに評人宅。龍臥亭に。夕方。雪。玄関口。二子山の声。日照が行方不明。やられたと二子山。どういう意味。携帯に電話を。日照に。然り。うめき声とやられた。場所は。不明。誰に。不明、ただ森孝さんと。助けようと石岡。武器。黒住に電話。武器と応援を依頼と里美。老人、女性。じゃあ里美と石岡。黒住の車で出発。石岡、二子山、里美。法仙寺本堂。本堂に明かりと石岡。あそこか。二子山に携帯連絡をもう一度。駄目。では本堂へ。中。戸をあける。敵への準備と石岡。人の気配無し。大広間にさがる裸電球。障子戸ごしに明かり。石敷きの通廊。一段たかいところが畳の間。境は障子戸。日照とよぶ。反応無し。障子戸に手を。ロック。突っ支い棒のような詮をおとしこみロックと二子山。中からしか。しめられない。全部チェック。ロック。どうする。相談。

(060502) 畳の上の死体、足と頭、血溜まり
けやぶる。では二子山と石岡。匂いと里美。けやぶった。中。何も。あっと二子山。悲鳴。畳の上におびただしい血。6、7メートル。そこに何か。一つは人の足。すね毛、男の足。その向こうにボール。ああっと二子山。日照。頭部。だれがやったと二子山の叫び声。誰が。わからん。誰かがいると里美。誰。不明、でもいると里美。黒住に電気。大広間を。指紋に気をつけて。はいろうとする黒住に。仏間に注意と石岡。天井部はくろい梁。天井板無し。人の気配がきえたと里美。畳の上の二子山が紙と。血溜まりの前。

(060503) 血溜まりを調査、時刻は8時
御手洗の助言を思いだす。血溜まりをゆっくり観察。縁にはっきりした稜線。乱れ無し。しかし一カ所だけこすられた跡。おちてた足のすぐそば。足を観察。日照のもの。オイルが足にたっぷり。チェーンソーによるもの。手形、足型無し。頭部と足の切断があったのに闘争の痕跡がない。不可解。死体を切断する必要は。不可解。動機は。殺害方法。死因。最大の謎は死体をひきずっていった跡がない。かかえていった。そのルートにそってたれた血は。畳、通廊にも無し。不可解。大岐の島神社の真理子、おなじ神隠しか。ティッシュで血の浸潤を確認。すっかり乾燥。表面も乾燥。最低30分は経過のよう。時計は8時。二子山にきく。門で石岡とあった時からいうと。2、3分前。携帯の通信記録を確認。結局、22分前。この血は22分を経過したにすぎない。自分の判断ではそれ以上。もし日照が血溜まりの中で通話。痕跡がない。不可解。何者かにおそわれ日照は瀕死の重傷。犯人はチェーンソーで切断。その痕跡は。無し。不可解。

(060504) 第2の脅迫状
里美の声。我にかえる。血の凝固。条件によればはやい乾燥もありか。納得。否、むしろ逆。ここで思考中断。里美にうながされ、紙。否、これ日照の携帯。座布団の陰。然りと二子山。血痕は。無し。また謎。着信記録も。石岡がポケットへ。和紙には血糊。苦労してはがす。「この頭部、足部を、森孝の具足中に葬れ。女子供への災いを避けたければ、必ず。魔」

(060600) 第3日、夜、日照を鎧におさめる、否か、日照のカメラを、死体をもち鎧に
(060601) 相談、脅迫状にしたがうか
通廊で善後策。協議。冷静にと前置き。まずやるべきことは警察。では田中。そこが問題。田中は現場保存。したら。そこでこの紙の中身。無視は危険。女子供の安全は。どうする。時間をかけられない。敵はこちらを監視と石岡。頭、足をいれず龍臥亭に退散。自分たちも危険と里美。やるか。でも鎧をいれる意図はと二子山。逆転の発想と石岡。犯人は伝説を利用。死体を鎧にあつめる。でも犯人の真意は。大切なのはもちさったもの。成程。日照の体、ナバやんの頭、足が。否、両方でなく、どちらか一方。その目的は。たぶん何かをかくすため。日照。死体。鎧にいれるのは末端。へっ。胃。えっ。毒殺されたのなら。胃をもちされば毒物が不明。さらに浮腫、湿疹が皮膚におよぶ。ところがはやく切断。首にはでない。まあ、専門家に意見をききたいところ。では御手洗に。警察の助けがむすかしいからと里美。パソコンは。もってきてない。二子山は。家には。育子は。やってない。黒住は。もってない。ではメールは駄目。電話かと石岡。外部の助けは。

(060602) 結局、指示にそう
加納通子、主人の吉敷は警視庁。でも警察官なら現場保存。では龍臥亭の女子、坂出に内緒で決断。内緒で日照の頭をいれることもと石岡。頭をいれる。皆の安全。遺体の一部をもつのは嫌と二子山。もう一つ。現場写真と石岡。了解。やはり警察は。おこる。でも女子供の安全。大雪でもヘリコプターなら。こない間に日照の殺害。自分たちも危険。少々法律無視か。里美がいう。死体損壊。ではない。捜査の攪乱。多少。でもそれは結果。意図的でない。でも犯人は捜査攪乱だろう。犯人の片棒。かつぐ。やむ得ない。

(060603) 日照玄関でカメラ発見
カメラ。デジカメ。一番よいのは日照の。さがす。まず地下室。無し。隣りの部屋。網の前に森孝の鎧がよこたわる。無し。では自宅へ。玄関。引き戸。あいた。前方に虎の絵の衝立。左に下駄箱。その上にカメラ。フィルムも。下駄箱の上に絵。達磨か。露舟の署名。もどった。里美にいう。フィルムと日照の携帯の保管。手紙は石岡。大広間にあがり撮影。完了。誰がいれるかと石岡。二子山が躊躇。石岡も。そこに携帯の音。育子かららしい。よしやると里美。石岡が地下で何かつつむものをさがそうと提案。一同移動。タンス、ロッカー。タオルを4、5枚。一階、畳の間で役割分担相談。日照の頭。石岡がもつ。タオルでつつむ。

(060604) 死体部分を収納
足。里美がてつだう。突然吐き気。黒住がもつ。地下室に。いやな作業だった。頸部を裏の押しつけ板の衿回にはめこむ。面当てをかぶせる。兜をかぶせる。足は臑当てをつけ切断された右足の膝のすぐ下に圧着。反対側の足はのこってる腿部に床にのこってた義足の紐をむすびつける。不気味な光景だった。そばの床、右に刀かけの上の刀。網の奧にも刀。天井ちかくの壁に槍が2本。鉄砲も2丁。

(060700) 第3日、夜、龍臥亭、いそぎ評人を再訪、伊勢の手記を
(060701) 日照の殺害を、通子が夫、吉敷に電話、御手洗に電話
龍臥亭。日照の殺害をしらせた。深刻な雰囲気。最初に真理子、次に櫂と。その前にナバやん。これは行き倒れ。これだけの殺害で何の利益。これらの人に共通項は。死亡。法仙寺に埋葬か。でも櫂はまだ失踪中。通子が吉敷と電話。現場保存の指示。明日、県警のヘリコプターを派遣もとのこと。二子山と黒住が着陸場所を相談。はげしい降雪で明日は無理とつたえる。戸締りを厳重にと吉敷。石岡が御手洗に電話。不在。大広間で一緒に就寝と坂出。そこに里美。

(060702) 評人から電話、伊勢の死体研究
評人から電話。伊勢のことで龍臥亭にくると評人。黒住の車で自分がゆくと石岡。日照夫人に連絡は。育子がすでに。すぐこちらにと石岡。否、問題があるので。評人訪問に同行。事情は車中でと里美。夫人のこと。広島の姉の家。もう別居状態と里美。原因は。櫂への同情、不信感。成程。評人宅の離れの戸をあける。評人が雑誌をもってる。夜想貴腐という雑誌。これは。死体愛好家のためのもの。「N研究所の思い出」を寄稿したのが山田太郎、津山市貝繁在住。実は伊勢。

(060800) N研究所の思い出
(060801) 戦時中、N研究所の異様な研究
私が東京のN研究所に大阪から夜行列車でいったのは昭和19年の夏。車中で1泊し小田原から小田急線にのりかえN町についた。苦労して研究所に到着した。

陸軍の特殊研究所であった。そこで殺人光線、風船爆弾、空中魚雷といったまるで少年雑誌にでてくるような研究がおこなわれていた。自分は死者の一部を損傷のある生者に縫合し、兵士として活用するというものだった。

これらの研究は要するに、欧米の進歩についてゆくため、実用化の見込を無視し、やってる。こけおどしのものだった。この研究をつうじ死者の解剖、縫合技術はたかまったが、生者について実験することは捕虜となった敵兵についてもできなかった。自分の技術が生きたのは、空襲によってうまれた死体を葬式のために整体し化粧するものだった。

(060802) 穂坂恭子との出会い、死体となった彼女との出会い
多摩川で偶然に研究室勤務の穂坂恭子にであって、あわい恋情をい だいた。彼女の血液型はO型。自分と同じであった。N町に大空襲があり、N研究所に多数の死体がはこびこまれた。そこに恭子を発見した。きれいに整体し、化粧してやろうと自分の部屋にもちこんだ。体をあらうため裸にした。美くしさに息をのんだ。と同時にあさましい思いにかられて破廉恥行為をおこなった。やがて彼女への憧れが、彼女と一体となりたいとの願望にかわった。自分の左手を切断し、そこに彼女の左手を縫合するというものだった。自分の血液型と同一であり、免疫抑制剤をのめば夢が実現する気がした。しかし躊躇した。臆病者とののしる声がきこえた。

(070000) 第四章 龍臥亭幻想、魔王の懲罰
(070100) 第3日、夜、櫂は犠牲者、菊川が逃亡か、大広間でねる、追及はどこまで可能か
(070101) 櫂は犠牲者、菊川が逃亡か
育子にきく。ナバやんという人の血液型は。しばらく沈黙。B型。あれから櫂の連絡は。無し。偉い人でしたねと石岡。自分の辛さを他人に見せなかったと育子。櫂は菊川の犠牲者、金をかりてた。然りと育子。かえせなかった。だからずっとまってもらってた。で。二人に関係があったよう。へえ、菊川は色魔か。金もってるから。では育子もせまられた。然り、他言無用。他にもトラブル。然り。石岡は大広間に。育子がいう。菊川は明日この地をでていくらしい。あの神社を。然り。氏子に話し。宗像本社にも了承らしい。九州にゆくらしい。それは今日きめたのかと石岡。否。地震の次の日。氏子は皆んなしってる。では真理子の死体がでた翌日、犯行の自白かと石岡。成程。

(070102) 一同、大広間に、夜想貴腐をよむ、伊勢が潜伏か
黒住と遭遇。大広間にもどる。沢山の布団。石岡は布団にはいり夜想貴腐をよむ。どうかしたかと里美。雑誌の表紙をみせる。二子山にきく。日照の血液型は。B型。自分はAB型。伊勢の理論によれば血液型が同じなら縫合結合が可能となる。衝撃の事実。しかし伊勢の場合、死体と生体。日照、ナバやんや死体と死体。伊勢が発狂してたら、あり得るか。厨房の育子にあらためてきく。伊勢は。不明。息子夫婦に、見つかれば連絡と依頼済み。伊勢がここに潜伏してる可能性を考える。怪訝そうな里美。頭が混乱する。

(070103) 菊川の逃亡をきく、逮捕は可能か
二子山にきく。神主は本人の希望で簡単に全国の神社にゆけるか。否、それ何。菊川が明日やめ九州へ。えっ。何時きめた。地震の翌日。逃亡か。移住はそんな簡単かと石岡。否、ほとんど自分の家、家長の神職が生きてる間はうごけない。家でたら菊川はこまるだろう。宗像本社の了解は嘘。でもたっぷりの上納金が。でも存命中は無理。たしかに問題をおこせば、あるが。逃亡か。今日、明日中に逮捕は。警察がいない。みすみす見のがす。全員でつかまえるのはと坂出。検察官だったら逮捕可能かと里美にきく。可能。でも逮捕状はと石岡。電話で、非常事態なら。勾留する場所は。駐在所。でもでない。証拠が。人の噂で。わるい噂の収集。わるいものばかりでないはずと里美。そうか。わるい噂というより、麻薬取引、恐喝行為、繰りかえしの暴力、殺害計画への関与など。だから無理。然り。被害申請がとれそうな人はと里美。真理子を殺害、借金をした女性に深刻な被害。真理子は証拠がない。被害女性から被害届がでるかと二子山。

(070104) 日照殺害の犯人は
ださない。田舎では無理。日照を殺害は誰、菊川か里美。石岡には伊勢の顔がうかんだ。伊勢もあやしい。成程、でもまだ無理、まだ事件が整理できてない。じゃ何をすれば。日照の死、真理子の死、森孝魔王伝説。飯塚伊賀七、ロボット、機巧図彙、N研究所、伊勢。混乱。死体はどこと石岡。何の。残りの。ナバやんの頭部、下足部、日照の胴体。どこに。冷静に考えよう。今、誰かが何かをたくらんでる。だまされるなと石岡。声。電話。

(070200) 第3日、夜、御手洗から電話、生体の接合可能か、真理子出現の謎、死体が消滅の謎、黒住の行方
(070201) 御手洗の電話、人体の接合を質問、一卵性双生児なら可能
御手洗から。スウェーデンから。御手洗にきく。また事件に遭遇。祟りか。お祓いをと御手洗。ところが神主も事件にまきこまれた。メールは。不可。では口頭で概略か。然り。即答は無理だろう。自分は要領がわるいと石岡。里美が「090ー***」とマジックで大書。何。自分の携帯番号。御手洗に伝達。一つ質問。人間の首をきり、別の人間の頭部を縫合する。死体で充分練習した医学生。これを完璧に縫合。人体は生きてる。可能か。何、それ。とにかくおしえて。可能、一卵性双生児なら。可能性かと石岡。おそろしく大変な手術だが。

(070202) 他人も可能
では赤の他人なら。あらかじめつくったクローンなら。倫理性は無視する。クローンでなく赤の他人、同一の血液型なら。その場合は、もう一方が初期胚の段階でレシピエントのMHCを導入しておく。主要組織適合性抗原、つまり拒絶反応を制御する遺伝子。これをいれて両者の同じ型のMHCにしておく。他人同士の体でもなんとか可能。ほかにもハードル。奇跡的な手術の成功と御手洗。では免疫制御剤だけ、MHC無し。なら。だったら抗生物質の大量投与。へえ、血液型だけ一緒だが。その他に心臓その他の臓器、大変に健康。そうすると。可能と御手洗。生きるのか。然り、しばらくの間。あるけるか。ねてるだけで駄目か。あるく。じゃあ接合部にギブス。部分麻酔を多投。つよい精神力。若さ。あればあるけるかも。本当かと石岡。可能と。

(070203) たいした成果はない、多大の苦痛のみ
ただししばくの間。どれくらい。いえない。大体。関係する条件がありすぎる。目をあけるだけかも。できない人もおおい。数週間かも。しかしこんな手術に意味がない。適切な延命処置でない。多大の苦痛。わずかの延命。外傷による苦痛は深刻、継続的な輸血、麻酔をうちつづけ精神も健康も回復しない。成程、でもN研究所の研究もまんざら見当はずれでない。

(070204) 地割れから死体の謎は
質問は以上かと御手洗。もう一つ。こちらが本題。周囲にぐるりと人がいた山の頂きで、人がきえた事件。3カ月後のある地震の日、あついセメントの地面から死体が出現。この謎わかるかと石岡。うめた。無理、あついセメント張り、しかも駐車場。横から穴。無し、警察が調査。横には熊笹、痕跡無し。しかも時間もない。ほう。つづけていいか。まて、さっきの頭と胴体の縫合と、これとの関係があるのか。直接には。ない。否、あるからきいてる。どっち、どう関係する。むづかしい。里美ががんばれと応援。それどんな事件。とにかく話してよいか。しばらく沈黙。よい。

(070205) 真理子失踪の事情
10月15日の小雨の午後の失踪事件をかたりはじめる。おわると御手洗が確認。10月15日の夕方午後4時から5時。この1時間。然り。雨。然り。雨が重要か。現在は不明。沖津の宮からでた人も、はいった人もいない。然り。それを確認したのは自動車の中の人。然り。4時7分前にボーイフレンドとわかれて沖津の宮にはいっていった女性がきえた。そして3カ月後に死体となって出現。然り。マジックショー。然り。ちがう。彼女がうまっていた場所の地面がわれたことがだ。まるで地震がそう意図したみたい。それがヒントかと石岡。然り。

(070206) 神域の道、熊笹、車列、神事の詳細
きえた時、山のぐるりには人が中にのっている自動車が数珠つなぎ。沢山ならんでた。然り。だからこの自動車の人たちの誰にも目撃されず、この自動車のリングの外にでるのは何人もできない。そう、神主も巫女も。車がいた道は螺旋状ではなく、リング状につながってた。そこに車がびっしりと数珠つながり。然り。で、菊川はその1時間の間、沖津の宮の離れにある水聖堂という神殿でずっと太鼓をたたいてた。さらに祝詞をあげていた。太鼓の音は定期的にきこえた。きこえなくなった時もあるが最大。約15分。ふむ。ではこの約15分間に誰かが沖津の宮の脇に穴をほっていた。すると自動車の人たちからは見えるのか。見えない。車は斜面の下。だけど地面、つまり山の頂きの円形の駐車場はあついいセメント。地面がむだしの場所はない。むきだしの場所はセメントの円の外の下り斜面。ここには熊笹がびっしり。ここからトンネル。地面に乱れ。そんな痕跡は無し。警官をふくむ大勢が5時になった時点でここをあるいて沖津の宮まであがってきている。さらに調査も。ふむ。それに15分で祝詞をあげてる。でも祝詞は誰にもきこえない。太鼓の音だけ。然り。では神殿をはなれても不知。神職がそんな罰当たりなことを。する。ではこの15分で、あれほどおおきな、ふかい穴は無理。体全体だ。ふむ、沖津の宮の建物の調査は。徹底的。床下は。済み。屋根の上は。済み、梯子をかけて。神殿の中は。当然。押入、物置は。勿論。月並なことをいうと石岡。

(070207) 各所の隠蔽の可能性、菊川を犯人と断定、黒住を心配
これは確認。うっかり見落し。時間の無駄。で、自分には時間がない。何を。死体がきえた理由か。できれば。でも菊川が真理子殺害の犯人か否か。それはわかる。えっ。犯人。ふざけてるか。否、真面目。明々白々。それよりそこに黒住が。いる。用心棒がわりに。わるい考えでない。だろう。ちがう。そんな意味じゃ。菊川のことをつたえるのには慎重に。成程。ふりむく。そこに里美、二子山、坂出、ユキ子、育子。すこしはなれたところで通子が携帯電話。いたか。何故それほど気にするのかわからなかった。いないと石岡。きく。黒住は。トイレか。まずい、地下の真理子の遺体か今夜しかいない菊川への復讐か。すぐとめろ。成程。了解。電話終了。通子も電話をおえた。黒住をみはれと吉敷がいってると。彼の車は。二子山がしらべにゆくという。制止した石岡がいう。一同一緒に捜索に。

(070300) 森孝魔王 三、魔王の復活
あれる吹雪の音、くらがりの部屋で鎧をまとった死者。片足は義足。義足でない足がうごく。死者の心臓が鼓動をはじめる。かかとがすべり膝がたちあがる。右の腕がうごく。手首が反転して床に。兜が床をはなれてゆく。頭部がおこされ鎧の武者に命がやどってゆく。兜がゆっくりと上昇していく。死者は身をおこした。伝説の魔王が今よみがえった。

(070400) 第3日、夜、一同が本堂に、地下の霊安室に黒住、石岡と黒住の争い、武者の登場
(070401) 一同、法仙寺に、本堂地下の霊安室に黒住を発見、説得
一同が外。はげしい風雪。たまらんと二子山。門柱、黒住の四駆。まだかえってないと坂出。キーは。黒住が。うごかぬように。雪をフロント・ガラスにぬる。手でおとせる。否、凍結。でもあるいて大岐の島神社にいける。30分、この吹雪。ゆかない。どうする。一緒に法仙寺。石段。のぼりきる。木立。日照の家。本堂に明かり。ここをたちさる時、明かりは。すべてはけさなかった。発見した時の状態に。明かりに増減はない。慎重に引き戸をあける。異変無し。地下室に。明かり。階下のフロアに。ドアをひらく。黒住がいた。全員が霊安室に。かえろうという。否。警察がくるまで、誰も一人にならない方がよい。ここは何がいるかわからない。黒住をさがしに皆がきた。かえってもねむれない。龍臥亭にかえるよう説得。しかしきかない。

(070402) 黒住と論争、外に、轟音、武者の登場
自分の家にもどるから、ほおっておけと。ころされる。危険。どこも一緒。皆んなといれば安全。否。自分の家にかえるのかと石岡。驚。いいたいことがある。ならばいえばと石岡。しゃべっても真理子はよろこばない。大岐の島神社にゆくのでは。それで真理子がよろこぶか。もうそれは問題でない。そして石岡にきく。そうだったでしょう。真理子をたすけられなかった自分をせめた。菊川に復讐する決意をしめした。制止をふりきり隣室にはいった。そこで武者がいなくなったのを発見した。刀をとり表にでた。石岡がそれをおった。制止しようとあらそった。轟音。森孝魔王があらわれた。お前は家にかえれ。手をよごすなといった。武者は右が義足だった。ゆっくりと坂道をあがっていった。

(070500) 森孝魔王 四
(070501) 夜、武者が神社に、おう三人、沖津の宮、土間、大広間、射殺
武者は坂道をあがっていった。石岡、二子山、黒住があとおい、坂出、女性たちは龍臥亭にもどる。武者は腰に刀、肩に鉄砲。勾配がきつくなると腰から刀をぬいて、これを杖にしてのぼった。杉の林をぬけ、大岐の島山をのぼりきり、大鳥居、沖津の宮広場。沖津の宮の建物。中で菊川が引越しの準備。武者は玄関のガラス戸をけやぶった。土間にふみこむ。上がりぶちの板の間。廊下。菊川が廊下に。あゆみのペースをまったくかえずちかくに。三人も玄関に。菊川の悲鳴。大広間に。三人もおう。壁の前の違い棚の前に菊川。大声。背後の棚の飾り物をなげつける。香炉が武者の顔に。面当てがわれてとびちる。右手をゆるゆると。身をかがめてにげる。ゆっくりと反転した武者の顔は日照だった。廊下の手前で躊躇する菊川。轟音。菊川の体が壁にたたきつけられた。腰から刀を。ひるむ三人。玄関に。

(070502) 生首をもって坂を、龍胎館土手下へ、森孝がまつ、三人に轟音
武者はまもなく右手に菊川の生首を。広場をよこぎり、坂道をくだる。雪がやんだ。満月がでた。法仙寺、龍臥亭をすぎた。三人はなおもおう。龍胎館の土手下。角をまがって三人はたちつくした。森孝魔王がこちらをむいてたってた。日照の死に顔。森孝魔王が発砲。二子山がおどろき指差し。一人の不可解な人物。樽ににた形状、おおきさは小屋ほど。これは浄化槽。地震によりうまってたものが地上にとびだしたらしい。浄化槽にもたれ一人の人物。森孝魔王の帰りをまってた。彼の体には両腕がなかった。関森孝だった。写真で見た関森孝にちがいない。鎧の武者が空に発砲。三人は回れ右。見かえると武者が関森孝にひざまづいた。これが最後の幻想だった。

(070600) 第4日、昼食、昨夜の検証、伊勢の凍死体、御手洗から電話、死体の接合、地割れから死体の謎
(070601) 森孝魔王の仕事の全貌、翌日、警察が来訪、浄化槽の現場に、鎧兜と死体
これが2004年の初頭に、わたしが見た出来事のすべてである。三人はそれから龍臥亭にもどった。翌日は快晴。携帯に田中から連絡。龍尾館の大広間で昼食、警官が到着。応接間で法仙寺本堂と大岐の島神社の地割れの中の真理子の写真をおさめたフィルムをわたした。龍臥亭前の道をくだり土手下の小径にはいる。関森孝はいなかった。とびだした浄化槽はそのまま。ここに森孝と幽霊がたってたと田中。具足も無し。血痕も。浄化槽をとおりすぎる。龍胎館の壁や窓が頭上に見えるあたり、雪がもりあがってた。鎧の武者がうまってた。森孝の具足、銃、太刀。左手に生首。武者をおこそうとする。兜がはずれ日照の頭部がごろり。

(070602) 日照、法仙寺の現場に、神社の現場に
この人は。日照。間違いない。ない。体の方は。ナバやん。峠道から法仙寺にはこんだ経緯を説明。どうして死体がここにと田中。それにはこたえず、昨夜の菊川殺しを説明。この鎧の武者が。反論なく、死体をヴァンにはこんだ。一行は法仙寺に。里美もよんだ。本堂。畳、血痕。ここに頭部と下足部と石岡。すぐ和紙の伝言を。危険性を説明。里美から日照の携帯を。すぐ検証作業に。地下室に。骨董品の資料室。その床に森孝の具足。その中にナバやんと日照の死体をいれた。田中の表情がかたくなった。霊安室の棺、真理子、ナバやんがはいってた棺は空。警察の車で大岐の島神社に。沖津の宮の現場はそのまま。われたガラス戸。血痕。 菊川の死体。駐車場の地割れ。すぐ現場検証。石岡が考える。

(070603) 4つの死体を考える、処罰すべきは、伊勢の凍死体発見
4つの死体、ナバやん、真理子、日照、菊川。犯罪、処罰すべきものは。日照だけ。ナバやんは自然死。真理子、犯人は殺害された菊川。この犯人が森孝魔王。日照だけが警察が処理すべき犯罪。田中たちは村で聞き込み。伊勢の死体を発見。裏庭の雪にうもれ凍死。雪掻き作業中の死らしい。

(070604) 薬品類、手術道具、合同葬
その家から薬品類、手術器具、骨格標本など。石岡が夜想貴腐を。田中は日照殺害の疑いをもったよう。しかし日照の血痕、体液、チェーンソーも未発見。捜査はつづいたが、日照の胴体部分、ナバやんの頭部と下足部、櫂は発見されず。チェーンソーも。日照、真理子、伊勢、ナバやんこと稲葉太郎の合同葬。田中がきてから3日後に執行。鑑定結果。畳の上の血痕は日照。

(070605) 四人が日照をかたる、黒住をたすけた
葬儀の日、石岡、二子山、黒住、里美が法仙寺の境内に。日照にだまされて車でここまではいった。ナバやんを階段からはこべば、すぐ家にかえれたと二子山。でも、だから日照の最後を見とれた。二子山にいてほしかったと石岡。ほう。石岡は自分の言葉にひっかるものを感じた。行列がすごくながかったと里美。日照はすかれてた。日照をころしたのは。伊勢だろう。何故。怨み。金の。それだけでない、性格があわなかった。伊勢は偏屈、縫合の実験をしたかった。でも結局しなかったと石岡。鎧の中で死体をくっけただけ。否、もう一方のナバやんの頭、日照の胴体と二子山。成程、でもそれらはどこに。地割れの真理子。どうして。死んだ菊川の仕業。考えれば謎だらけ。あの鎧武者どうしてうごくと石岡。もし人間なら、誰。人間でないと二子山。人間ならあそこまで冷酷には。そうなら、三人は何を。夢か。とけない謎。それもあると二子山。どう思うと黒住に。ふうむ。森孝魔王。そう信じる。そうでなければ黒住は津山署の留置場に。森孝魔王が。黒住をたすけ。菊川をころすために。それで充分。

(070606) 御手洗から電話、質問、死後の接合は可能か、駄目、5分以内
石岡が考える。5つの死体。ここにきた時、ナバやん、真理子はすでに死亡。生きてたのが日照、伊勢、菊川。日照、伊勢に殺意。いない。ナバやん、真理子、日照、伊勢を殺害する。そんな人はいない。大勢の怨み。菊川のみ。ほかの4死体。それは菊川殺害のためのもの。里美の声。御手洗から電話。概略は里美からきいたと御手洗。黒住は。無事。今、葬式中。成程。わからない謎。おしえて。何。女嫌いは。何。菊川殺害は誰。詳細はまだ。不知。人間の首を切断。できるか。何。三人がおなじ夢。見るか。おちつけ。女嫌い。ではない。ただ自分の損得しか興味ない人だけきらい。次は。頭部を切断して頭部だけにした人間と、頭部がない体だけの人間をうまくくっつける。すると生きてられるか。御手洗はできるといった。ではきく。それを道におちてた死体の胴体と死んでしばらくたった頭では。何、実例か。死後どれくらい。体。頭と御手洗。死後1時間か30分。駄目。えっ。問題外。手術は時間が勝負。最低死後5分以内。5分。然り。でないと脳は死ぬ。成程、伊勢の実験はまるで問題外。こちらは時間がない。ポイントをしぼって。

(070607) 真理子出現の謎は、金属製の針とロープをさがせ
地割れの話し。犯人は菊川。今もそうか。然り。死体は菊川がかくした。然り。その方法は。不知。材料不足。で、菊川は先がとがった金属をもってたか。針みたい。長さは20センチ。2本。2、3メートルのロープ。ええ、不知。ではもしあれば連絡。それでセメントの下に。然り。はあ。電話がきれた。

(070700) その後日、わかれ、石岡、日照の戸籍と櫂
(070701) わかれ、魔王伝説にきえる事件の謎、石岡の苦悶
田中は岡山に。真理子の遺骨は明日、大瀬の家に。坂出も帰宅。里美も岡山の裁判所に用事。石岡は龍臥亭に。二子山も帰宅。石岡と黒住が二子山の車を救出。龍臥亭の門で二子山とわかれる。その際、森孝魔王がかたづけた。そういうことにしましょうといった。のこったのは通子母子、石岡。虚脱感。石岡が考える。二子山のように事件はおわり。伊勢は自然死、菊川は森孝魔王。犯人逃亡でない。これで落着。土地の人たちの割りきりも妥当。でもこれ以上事件が進展してほしくないとの怖れが。自分の中に抵抗感。森孝の伝説は土着の信仰。二子山はそれを理解。東京でならもうすこし謎の究明も。櫂のことも土着の信仰か。不幸をせおった獣子。わすれられる。妥当か。否。自分の中に憤り。これが信仰心。それはみとめられない。石岡は悶々と。

(070702) 通子が日照と櫂の関係を示唆
通子がいう。夫が日照の戸籍を調査。新見伝馬町。早佐古。昔の庄屋。成程、今、家は。たえた。それから吉田に養子。ふむとうなづいたが、何故通子がこれをしらせたか不思議。で、その後、足立家に養子。然り。早佐古の時は露舟という名前。雅号、否、本名。石岡は日照の家の玄関にカメラをとりにいった時、色紙にかかれた露舟を思いだした。このことに何か感じないかと通子。へえ。櫂。船をこぐ櫂。成程。櫂は喜子。大瀬喜子。櫂の生家はたどれる。無理。成程。でも吉敷はここに何かあると。田中にそれをいったかと石岡。否。夫が明日ここに。へえ。石岡にあいたいと。はあ。

(070800) 翌日、午後、吉敷に同行、大瀬に、沖津の宮に、真理子失踪の謎は、道具、森孝出現の謎、津山に、義足の齟齬、吉敷一家とのわかれ
(070801) 吉敷が登場、大瀬の家に、神社に
吉敷が到着。挨拶。育子にも挨拶。一軒に聞き込みがある。通子母子と外に。石岡も同行。徒歩。どこにと石岡。大瀬。ほう。セメントの下から。でた。謎。県警は大瀬を。まだ。でも今日、津山署が遺骨を。成程。あとで大岐の島神社にも。然りと吉敷。 ここにはどうやって。レンタカー。ではすぐつく。駐車場のあついセメントの下に死体。穴もトンネルもあけず可能か。否。御手洗にきいた。すると、興味。話した。死体の縫合についても。針状の金属と2、3メートルのロープと吉敷。そうかといった。通子が大瀬の家をさす。家にはいる。石岡、通子母子は外で。これからときくと。もうかえるという。吉敷がもどる。ちょっとボケが。あまりしらない。では菊川の家に。龍臥亭の前のレンタカーに。車中。事件の概略は。承知。御手洗は、とがった金属と2、3メートルのロープと。いった。菊川の家にあったか。ないといいかけて、否。何。角。奉納の儀式。そこで帽子の左右にひかる角。あれか。吉敷に説明。その儀式は10月15日に。やった。また一つ。何。ロープ。駐在を地割れからひきあげた。その時、ロープをつかった。わかったと吉敷。さらにいう。森孝の亡霊を見た。浄化槽の前に。間違いなく森孝。でも腕がなかった。ふむ。それは真理子と。おなじ。 成程と吉敷。森孝に肉は。ついてた。たしかに森孝か。然り。何故か。わからないと吉敷。

(070802) 死体隠蔽の謎をとく
森孝はきえた。お胤をころした晩に。犬坊でと石岡。芳雄もきえた。これは腕をきりおとされた。腕がおちた理由はちがう。混同しないようにと吉敷。はあ。森孝の亡霊はわからない。きえた理由はわかる。えっ、森孝、芳雄が。然り。どのように。浜吉。森孝の使用人。樵か。そう。そして菊川も樵と吉敷。然り。わかった。どのように。車を駐車場に。建物を。駄目か。戸がふさがれてた。地割れの方に。すごい杉の林。木がずいぶんかたむいてる。地震で。地割れを見おろす。吉敷がいう。地割れの向こう側。三日月形の土地が斜面にそって滑落。斜面にはえてた杉がこちらにかたむく。思ったとおり。どういう意味と石岡。杉は電信柱のような丸太、上に枝。この幹をのぼるのは熟練した者にはたやすい。専用の器具があれば。器具。然り。その状況は杉林ではよく見る光景。とがった針のような金属をとめた靴。それに腰の左右で固定できるロープを固定できるベルト。足の二本の金属で幹をさしてのぼる。その時、幹にかかえわたしたロープの向こう側をさっと上方に。これをささえに体を上に。その時、足の金属をぬき上にさす。おなじことをくりかえして上に。これくらいはまたたく間。成程、では菊川は真理子をと石岡。この杉の上にかくした。

(070803) 菊川の犯行の詳細
で、菊川は真理子を背中にせおいのぼったと吉敷。成程。枝にたどりつけば順番に枝にのって一番上に。体を針金で固定。すべての作業は15分で充分。神殿にもどり太鼓を。成程。菊川には予想外のことがおきた。地震。木がかたむき、振動で死体がワイヤーからはずれた。地割れにおちこむ。地割れからでたように見えた。県警は気づかなかった。いえ、出現場所をすべて即時に見れば気づいたろう。成程、真理子はきれいにあらってた。では、両腕は。針金。成程。では菊川は計画的に。否、かっとなって。奉納神事は自分で企画と石岡。そこで思いつく。では明治時代の惨劇、きえた死体も。然り。樵の浜吉の仕業。へえ、100年も昔から空中。もう一つ、幽霊について気づいた。では、森孝の幽霊も。そう、100年発見されなかった森孝の死体が地震で落下したら。両腕がなくなる。ああ。もしそうだったら。このあたりは雪。埋没。斜面をくだって浄化槽のところで停止。雪がとけるにしたがい露出。驚。でもわからないこと。真理子の死体はミイラ化、真っ黒。森孝の死体は顔が識別。何故。然り。死因は自然死でない。常時微量の砒素。江戸時代の剥製は砒素をつかってる。死体は剥製のよう。長期腐敗しない。でも、どうして翌日にきえた。さあ、森孝魔王がもってた。冗談のよう。あの森孝魔王とは何。わかりませんと吉敷。通子がきく。露舟は。大瀬は早佐古とみとめた。で。もう老人。たよりにならない証言。ところで御手洗はどういった。きかず。成程。ではこれまで、自分のできることは。通子母子はこれから天橋立までかえる。石岡の予定は。岡山に。真理子の秘密はとけた。森孝魔王の謎はそのまま。一応落着。では津山までは一緒。とけない謎もあるでしょうと吉敷。では、伝説の魔王がでた。然り。土地の者にとってはそれでよいかも。

(070804) 龍臥亭の育子にあいさつ、津山で吉敷一家とわかれ、森孝魔王の義足の齟齬が指摘
龍臥亭に。育子に横浜にもどるというと、ないた。自分はこれから一人ぼっち。友人が皆んな死んでゆく。若い頃の悪行のせい。里美に電話。横浜に一緒にかえる約束。育子がさびしがってると伝言。吉敷に同車し津山駅に。わかれ際、ユキ子がやってきて話す。森孝魔王はおかしい。何が。日照は右足を切断。それを鎧にいれた。そう。森孝魔王の義足は左足。然り。だけどあの森孝魔王の義足は右。えっ。じゃあとユキ子。改札口へ。

(070900) 翌日、津山、義足の再考、2005年、春、手紙を受領
(070901) 義足の齟齬を考える、成果なく馬車道にもどる、平凡な日常に
津山駅前の喫茶店でも、岡山で里美におちあってからも義足のことを考えた。義足は右。だった。だが左足であるべき。そのとおり。法仙寺本堂でみつけたのは日照の右足。間違いない。だから森孝魔王の義足は左。であるべき。自分は実際に見た森孝魔王の義足がどちらだったか思いだせなかった。自分は思考をめぐらすことが不得意。らしい。口喧嘩の再点検、恋愛映画の筋なら得意。哲学について考える。中断。スパイダーマンのことになる。脳の欠陥。人と会話。時々、よい思いつき。で、里美と会話。一人と大差なかった。何の収穫もないまま馬車道へ。そこから従来どおりの平板な生活。貝繁のその後。2004年末、大岐の島神社に新任の神職。櫂の行方。不明。日照の胴体、ナバやんの頭部、下足部も。2005年の春。

(070902) 安田という人物から手紙を受領
安田という人物から手紙をうけとった。差出人は吉田一休。安田はボランティアの仲間である吉田から託されたという。本人は電動車椅子の事故によりすでに死亡。

(080000) 終章 魔王の言葉、事件の真相
(080100) この手紙の趣旨
石岡先生。この手紙はわたしの死後にお読みになります。あの事件はわたしの一世一代の賭けでした。やったことは後悔してません。やらなければが自分を許せなかったでしょう。

(080200) 菊川は悪人、村の癌
菊川はあの村の癌でした。事情を説明します。自分の言葉を正確につたえてください。お願いします。菊川の悪行はサラリーマン時代からきいていました。借金で首をつった者、しいられて関係をもった女。真理子もそう。育子はせまられたようです。

(080300) 殺害決意の理由、櫂の自殺
殺人を決意したのは櫂の自殺です。地震の夜、櫂は鴨居からたらした綱で首をつってました。菊川は借金の猶予をエサに関係をつづけていました。

(080400) 櫂とは一卵性双生児、不幸な人生
櫂とわたしは一卵性双生児です。双子は獣腹といい差別をうけます。いじめられます。櫂はそれに抵抗せずへらへらと笑っていました。それが侮りを生みさらにいじめを加速させたようです。わたしと櫂は4歳まで早佐古の家にいました。そこから櫂は里子にだされました。わたしが中学校の時、両親があっけなく死にました。強欲な親戚があっという間に遺産をうばいとりました。わたしも里子にだされました。わたしも苦労はしましたが、どうってことはありません。櫂は山の中の家でくらしていました。窮状につけこんで男たちがよってきたようです。会うと体が臭くなってました。

(080500) 森孝魔王伝説の利用
櫂の体をだいて殺害を決意しました。犯行を計画してる時、右足に激痛がはしりました。天啓を得ました。ナバやんの死体、櫂の死体、森孝魔王の伝説。わたしと櫂が一卵性双生児であることは誰にもしられていません。櫂の長髪、黒髪、眼鏡が真相をかくしてくれました。

(080600) 壊疽で切断必至の右足、日照殺害の偽装
わたしの右足は壊疽でした。切断は必至でした。ところでわたしは薬マニアでした。風邪をよくひくので抗生物質をたっぷりもってました。炎症止め、化膿止め、さらに麻酔薬。わたしは即刻、抗生物質と化膿止めをのみはじまました。これは数日前からの準備です。さてわたしの考えたことです。

右足を膝から下で切断。この足部と頭部、実は櫂の頭部ですが。これを血溜まりの中にならべる。これでわたしが殺され犯人は頭部と下足部を現場において胴体部分をもってにげた。こうみせかける。切断はチェーン・ソー。段取りは自分の頭部と下足部を用意する前に、ナバやんの死体の頸部をと足の膝下を切断、頭と下足部がない状態で前もってみせておく。これを森孝の鎧にいれるよう皆んなに要求する。これが前段。

(080700) 死体部分を鎧兜で接合、鏡像の森孝魔王の出来上がり
次に日照の頭部と下足部を用意。皆んなにみせる。これも森孝の鎧にいれるよう要求する。すると鎧の中に、左の下足部だけがない体がひと揃いできあがる。これは森孝の鎧姿のいわば鏡像です。義足部分が左右ちがう。しかし異常な状況ではそれに気づく人はいまいと思ったのです。森孝魔王の復活とみてくれる。早晩真相は気づかれる。しかし逃亡の時間はかせげる。ともかく計画どおりに、時間をきめ、抗生物質と炎症止めをのみつづけました。

(080800) 死体切断の作業、残余の穴への投棄
わたしは法仙寺の墓所の北西の角に穴をほっていました。これは冬場に突然、死者がでたときの用意でした。ここでナバやんをチェーンソーで切断、保存、櫂も切断、頭部を剃髪しました。二人の死体の不要部分を穴にいれ、蓋をもどし雪をかけておきました。櫂の頭部は本堂脇の雪の中にうめ、いったんかくしました。この時、死斑をある一面に集中させるよう右頬を下にしてうめました。

(080999) 右足切断、作業、手順、麻酔薬など
いよいよ自分を切断するという日です。陽がおちたら戸板をもって本堂の裏手の雪の下にうめておきました。それから物置から刀、銃をもってきて自分の家の物置にうつしました。自分の足を切断する段になると躊躇がうまれました。しかし菊川が明日この地をはなれることをしり、気持は今夜決行とかたまりました。切断してすぐ決行には不安がありましたが、櫂の首を切断したことを思いだしてぶれまいと思いました。櫂の頭部をほりだし、足の切断のため本堂にはいりました。現場の乱れをおそれ充分細部をねりました。ヴィニールシートを用意し脇におき、チェーン・ソーや切断後に使用する義足、麻酔薬や注射器、ヴィニール、包帯、簡単な軟膏をこの上におきました。自分の一部変色した右足をだし直接畳の上において麻酔薬を注射して感覚がなくなるのをまちました。それから櫂の頭部を右頬を下にして畳におきました。感覚がなくなったら一気に切断しました。畳にちょっと傷をつけました。注意すればここが切断の現場とわかったでしょう。

(081000) 激痛にくるしむ、後片づけ
予想外の激痛におどろきましたがやっとのことでチェーン・ソーをシートの上にもどしました。麻酔の効果で痛みがやわらいだ後に、畳の上の飛沫に丹念に血をかけました。自分の右の頬に血をつけておくのをわすれませんでした。血溜まりがじわじわひろがります。それをさけながらやすんでいました。死の危険を感じましたがようやく血がとまりました。軟膏、包帯、ヴィニールで処置して義足を装填しました。やすんでるうちに、また麻酔をうちました。その時、二子山から携帯連絡がありました。演技をして携帯をきり、ヴィニール・シートをまるめその場をはなれました。本堂をさる時、障子をしめ密室にしましたが、これは夢中の行為。その方法はまず栓を桟からはずしておいて障子をうごかしながら穴の位置をさぐれば簡単にレールの穴におとしこめます。

(081100) 残余を穴に投棄、台所でいったん休憩
元気な時に段取りは反芻してましたから朦朧とした頭で雪の上をはい後始末。墓所北西部の穴にシートをひきずって板の蓋をとってシートごとすべてを穴におとしこみました。蓋をもどし雪をのせました。先生、二子山にであわないよう、墓所を東回りに迂回し家に裏口からはいりました。台所の板の間の下にスペースをつくって、布団、毛布、薬、簡易食料、水、懐中電灯をおいていました。そこですこしねむりました。

(081200) 指示した森孝魔王の鎧兜の確認
激痛で目がさめ、高熱をだしてました。何度も気がとおくなりました。櫂のことを思い決意をあらたにしました。まずは具足の処理です。勝手口から夜の吹雪の中にで本堂までゆけきました。戸口から二子山、先生。里美を目撃しました。8時40分でした。地下の森孝の鎧がどうなってるかです。目論見どおりならよし。そうでなくとも、櫂の頭部、自分の足をもちさることはない。それは自分でもってゆけばよい。そう考えて地下にもどりました。

(081300) 鎧兜を戸板で予定の投棄場所まで搬送
本堂、こわれた障子から中を見て、頭と足が甲冑にはいってることがわかりました。階段をあがり本堂裏手、雪の中にかくしてた戸板をもってきました。通廊をひきずり階段をすべらせて地下におとし、甲冑のある部屋の前までひきずっていって、半分部屋の中にさしいれてから、櫂、ナバやんや、わたしの一部がはいった森孝の具足を戸板にのせました。階段をおしあげるのが大仕事でした。死力をつくして一階の床までおしあげました。戸板を橇にして吹雪の中を前進、龍臥亭裏手に迂回し、龍臥亭脇の土手を滑降して下の小径にでました。櫂やナバやんのはいったた甲冑を戸板からひきずりおろして小径によこたえました。そこでしばらくやすみました。

(081400) いったん台所にもどる、有り金、同形の鎧、銃、刀、装着、神社に出発
体力の限界にたっしてたので戸板を雪の中にかくし、注意しながら龍臥亭の門前をすぎ法仙寺にもどり、勝手口から台所の床下でねむりました。頭痛で目がさめ、やっとのことで床からはいでました。もうもどれないから、有り金をポケットにつめ、でました。納屋で森孝と同形の鎧をきました。面当てだけがなかったので森孝のを流用しました。刀、鉄砲、銃弾を身につけました。体力がつきそうになったので乾パンをたべて体力の回復をまちました。これで駄目とわかれば、下顎から脳をうちぬき自殺するつもりでした。外にでました。吹雪はますますつよくなってました。熊笹を滑降しましたが、石や岩にぶつかり転倒、悲鳴をあげました。吹雪がさいわいしました。沖津の宮にむかおうと道端にたちあがりました。すると先生と黒住の言い争いの声がきこえました。

(081500) 三人 を後ろに坂道を、菊川をたおし、坂をおりる
黒住をまきこむことはできません。伝説をしってる菊川に森孝魔王の姿をみせ殺すつもりでした。龍臥亭の皆んなには、まず二人の死体を森孝の具足の中にいれさせること、できたらそれがきえているのを見せること、最後に龍臥亭下の小径に移動していて、菊川の生首を手にもっているのを見せること、それだけで充分と考えてました。わたしは銃を空にうち黒住にかえれといいました。そのことは結局三人を後ろにしたがえて大岐の島神社にのぼってゆくことになりました。苦痛にくるしみ自分をはげましのぼってゆきました。沖津の宮が見えた時、安堵でたおれそうになりました。すぐに中にはいりうとうとしましたが、腕がしびれてうてません。大広間からにげだした菊川をおって、ついにしとめました。まったく後悔はありませんでした。ちかづいて刀で首をきりおとし、夢中でそれをぶらさげ、坂をおりました。坂の中途、満月の光の中に法仙寺の全景を見た時、万感の思いがこみあげ涙がでました。

(081600) 森孝の出現に驚愕、そのミイラと鎧兜などを穴に投棄
龍臥亭の下についたら、おってきた三人にはかえってもらわなければなりません。櫂とナバやんがはいった森孝の具足がおいてあります。これがみつかるのはこまります。威嚇のために銃をうちました。三人がかえっていったので安堵して前方をみて、驚愕しました。森孝がたってました。失神しました。気がついてこれは御仏の力と思いました。ここで考えました。前にかくしてた具足をほりだし、また戸板をとりだして、そこに森孝のミイラをのせました。苦労して杉の林をぬけ法仙寺の墓所にもどりました。自分がきてた鎧をぬぎ、また考えました。森孝を鎧におさめ穴におとしました。そこにおいてたスコップで土をかけうずめました。これがあの夜にわたしがしたことです。

(081700) 現場から逃亡、東京に職をえる、先生の著作をしる
それから無理をせず、ゆっくりと貝繁の村をあとにし峠をこえ、そこで長距離トラックにのせてもらいました。彼に安宿を紹介してもらいそこで傷をなおしました。その後、京都にでて、義足をかいました。わたしは自首するつもりはありません。みつかるまで潜伏生活をつづけるつもりでした。生活費をかせぐためにも都会を目ざしました。新幹線、東海道本戦をさけ裏日本経由で上野につきました。薬関係の仕事をさがし、薬の倉庫番をみつけました。上野の古本屋で先生の「龍臥亭事件」をみつけ購入しました。読了して、何冊も先生の本を購入し、よみました。もうあわないときめたことですが、貝繁の村がなつかしい。先生がなつかしいと思います。それで先生宛ての手紙をかくことにしました。

(081800) 青砥でささやかな幸せをえて、先生の多幸をいのる
青砥に真光の会という真言宗の新興宗教の会があります。それをみつけたのでそこにゆきました。こちらのいいたくないことは詮索しない。よい人たちの集まりです。また銭湯で爺さんの仲間と仲良くなりました。坊主だといって御仏の教えを講釈してます。皆んな真面目にきいてくれます。わたしはこんな調子で元気でやってます。お喋りはこれでやめます。先生とあったことは本当によかったと思ってます。お身体に気をつけて頑張ってください。日本の片隅でずっと応援してます。
日照。

(090000) 感想
大衆は孤独である。この作者の強烈なメッセージが、占星術殺人事件のヒロインやここの日照の告白(終章 魔王の言葉)にあらわれてる。殺人の動機は個人的である。社会や理想、思想のためでない。犯行も独力である。世間の理解や協力を期待してない。現状へのはげしい絶望がある。そのため犯行の破綻が死を意味してもおそれない。ささやかな個人の力をつみかさね、次々と襲ってくる困難を強靱にのりこえる。最後に殺人者であることをおそれない。占星術殺人事件のヒロインは御手洗に探知され死をえらんだ。日照は潜伏生活の中、ちょっとした事故で死んだ。

この作者の作品は長大複雑である。その謎は古今東西の歴史をひもとき、最新の科学、医学、脳、記憶、宇宙、軍事技術の知識のうえに成立してる。とても読みやすい大衆の読み物とはいえない。宣伝めくがこのような謎解きがなければ、その醍醐味を充分に味あえないだろう。しかし、作者は孤独な大衆の心情にはたらきかけ、その心をゆさぶるすぐれた作品をつくりつづけている。

(100000) テーマ
警察、裁判所、村の秩序などにひっかからない悪人がどのようにしてさばかれるかである。菊川は宗像大社の神職にありながら、高利貸としてまずしい人びとの弱味につけこみ、おおくの女性を傷つけてきた。宗像大社には上納金で、高利貸ではたくみに法の網をくぐって罰せらなかった。これを森孝魔王伝説を利用して見事に天誅をくわえた。

(110000) 評価
1) 原理的に可能か、2) 現実にありえるか、という点では特段の問題はない。しかし、龍臥亭事件にくらべて物語のまとまりにかける怨みがある。物語の成立とトリックの妥当性は表裏の関係にあるのでこの点についてのべる。

2) 上巻においては、悪をこらしめる森孝魔王への期待でおわる。つづいて二つの死体部分を鎧兜の中で接合するよう脅迫する事件がおきる。ここで戦時中に死体接合の研究をしてた伊勢が強力な容疑者として浮上する。最後に悪人菊川を罰する森孝魔王が登場し物語がおわりとなる。

3) 森孝魔王伝説は物語を一貫しよくまとめてる。櫂、真理子の不幸、日照の怒りは伝説をうみだした地域の因習、貧困と照応してる。これはこの作品の前作といえる龍臥亭事件とも共通してる。

4) この作品は物語の最後に登場する日照の告白をのぞくと、大岐の島神社における真理子の失踪ではじまり、隠蔽の謎解きでおわる。神社が所在する神域の姿、祭の神事の次第がトリックの重要な鍵となってる。何故、宗像大社の分社がここに所在するのか、よくわからない。また悪の権化である菊川は九州から元樵の神主としたやってくる。これもよくわからない。

(おわり)

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