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謎解き島田、アトポス [島田荘司]

* はじめに
壮大な構想と迷路のような複雑な筋で読者を幻惑し、最後に感動の結末を与える島田荘司さんの「謎解き島田」を提供する。中身はいわゆるネタばれに溢れてる。本作品を未読の方にはすすめられない。

* 本文
* プロローグ1、レオナと精神医の対話
ハリウッドの女優、松崎レオナと精神医、ポール・ドリスデールが対話する。レオナはいつも見る悪夢を話す。顔の毛穴からでる血で顔一面が赤くそまり、頭髮がぬける。頭頂部はなく、横髪だけがたのこる。歯が全部ぬけ歯茎だけとなる。麻薬、性、不安のことを話し、最後に自分には吸血鬼が取りついてるようだという。

* ふたたび警告
この後に、ネタばれの内容がつづく。本作品を未読の方に閲覧をすすめない。

アトポス (講談社文庫)

アトポス (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/10/14
  • メディア: 文庫



* 長い前奏、吸血族の歴史
** A 吸血族の歴史
*** 1) 昔から吸血族はいた。しかし滅ぼすべき
吸血鬼という種族がこの世に存在する。ファンタジーでない。旧約聖書申命記第十二章二十三節に「ただ、堅く慎しんで、その血を食べないようにしないといけない」とある。キリストは最後の晩餐において「私の血である葡萄酒を」という言葉をのこした。これらの言葉がかっては吸血をおこなう種族が今よりもっといたことを示唆する。キリスト教のモラルは吸血種族の抹殺をもとめる。次々に火炙りにしてきた。われわれノーマルな人種に吸血の性癖があらわれないよう、つねに威嚇をくわえてる。

*** 2) 吸血鬼を見せしめで残虐に処刑した
英国、エディンバラ郊外の村に1360年に誕生した貧農の子が成長しキャロウェー地方の人里はなれた海岸の洞穴に一家をかまえた。このビーン夫婦は25年間に14人の男女をうみ、やがて50人の大家族となった。生活のため彼らは旅人を殺害し、その血をすすり、干し肉として保存した。ある時、そのうちの一人が逃亡し、事が露見した。1435年、エディンバラに護送れた彼らは、男は手足を切断したうえ、女は火炙りにより処刑された。吸血鬼たちへの見せせしめだった。吸血族のスーパー・スターは「ドラキュラ」のモデルとなったワラキア公、プラド・ツェペシュだろう。しかし私見だが、彼は最高権力者にうまれ、歴史にのこる派手な行為をした。しかし、本来、吸血族を自覚する連中はもっとひそやかに生きたろう。まずプラド公にはいる前に蘊蓄をのべる。

*** 3) 吸血鬼のスーパースターはドラキュラ伯爵だが
ルーマニアとはローマ人の国の意味である。ローマ帝国は東西に分裂し、東ローマ帝国は現在のイスタンブールを中心にさかえた。ここのギリシャ正教は、やがて東欧、ロシアにまでひろまった。この儀式をおもんじ、神秘主義の傾向のつよい宗教は吸血族にはなじむ。ルーマニアが所在するバルカン半島は、15世紀当時、東ローマ帝国、オスマントルコのイスラム、中央ヨーロッパのカトリックの三大勢力が鎬(しのぎ)をけずる場所だった。この中のワラキア、トランシィルヴァニアの山岳地帯の山頂にポエナリ城という山城があった。それがワラキア公、プラド・ツェペシュの居城である。その暴君振りには父からの遺伝、またトルコにおける捕虜経験の影響があった。父が毒殺され、解放されて城主をついだ。トルコから来訪した使者の失言にいかり斬首した。トルコ軍の捕虜を串刺しの刑にした。領民にも同様に残虐な刑をおこなった。肉体の各所に釘をうち拷問した。プラド公は処刑をたのしみ流れた血をグラスにうけ、のみ、あるいはパンにひたしてたべたという。このような魅力にとむ人物だが、わたしにはそれよりもっと興味をひく人物がいる。それがプラド公のとおい親戚筋にあたるエリザベート・バートリ伯爵夫人である。

** B エリザベート公爵夫人
*** 1) エリザベートの誕生から結婚
エリザベート・バートリは、1560年、ルーマニア、トランシィルヴァニアにうまれた。バートリ家はその地の名家だった。しかし叔父は悪魔信奉者、叔母はレズビアン、兄弟は色情狂だった。エリザベートは一族のくろい血が自分にもながれていると気にかけていた。エリザベートが15歳のい時に結婚した。相手のナダジー・フェレンツは25歳だった。ニートテ地方のチェイテ城にすんだ。森にかこまれた高台に所在する。そこから城下の営みがみえた。夫は戦いに明け暮れ、不在がちで何もすることがなかったので、下男ツルコに文句をいった。こまったツルコは自家に伝来する秘密の呪術の話しをした。よろこんだエリザベートは出征している夫に手紙をおくった。

*** 2) 退屈な結婚生活、戯れの恋
白い牝馬を黒い杖で呪いをこめてうつ。その血を敵の皮膚、あるいは衣服にぬりつけると相手をほろぼすことができる、といってやった。苦笑をうかべて読んだ夫は、今の敵は腰抜けで呪術をつかう必要がないと返書した。その手紙にエリザベートは不満だった。また何もすることがなかった。ある時、美男のランジェラ伯爵がやってきた。城内の散歩中にあろうことか彼女は自分の美貌の衰えをあけすけな言葉でかたった。チャンスを見のがさなかった伯爵は自室に彼女をいざない一夜をともにした。この噂はたちまち近隣にひろまり、貴族の男たちがあつまってきた。しかし自身の淫蕩の血を自覚していたから、はめをはずさなかった。それより彼女の関心は超自然崇拝にかたむいた。ツルコの紹介により、魔術師ドロテア・ツェンテスや森の魔女、ダルバラを城内にひきいれ一室をあたえた。ランジェラ伯爵がまたやってくることになった。もてなしの準備をしてる時だった。

*** 3) 義母アネットの怒り、監視
突然、大勢の衛兵をつれた義母アネットがやってきた。きびいしい叱声の後に二人の魔女が追放された。男関係の追及がつづいた。必死に否定するエリザベートにアネットの癇癪が爆発した。召使いの前にもかかわらず、鞭打ちの折檻をうけた。うたれた尻から血がしたたりおちた。屈辱にうちひしがれたエリザベートにアネットは今後、監視のために城内にとどまるといった。

** C 義母への恨み
*** 1) 監視、出産、義母の病気
その後、彼女は義母と小間使いベスの監視下のおかれた。三十歳をすぎて、第一子をもうけた。つづいて、第二子、第三子がうまれ、38歳となった。義母が体調をくづした。城をはなれるという。彼女は開放感から、鏡を見てはじめて笑った。

*** 2) 老いに愕然し小間使いを殺害
義母がきてからというもの、笑ったことがなっかった。ところが自分の笑い顔につよい衝撃をうけた。思わず失神してしまった。鏡のむこうで皺だらけの初老の女が笑っていたからである。彼女はこの衰えをもたらした義母をにくみ子どもをにくみ夫をにくんだ。そして自分より艶のある肌をもついやしい女たちをもにくんだ。追放された魔女二人を呼びもどした。昔のように地下室をととのえた。その夕方、小間使いベスがスパイにやってきた。ベスをとらえ、両手をしばり天井からつるした。長年の恨みをはらすため全裸にし鞭でうった。偶発的だが顔をけられた。彼女は逆上し、制止もきかず、ベスを剣でさした。血がほとばしりでた。さらに何度もきりつけた。そのたびに血が彼女にかかった。下男のツルコ、侍従のウィーバリー、二人の魔女が見まもる中、彼女は全身を痙攣させ放心していた。

** D せまる老い
*** 1) 若さの血を実感する
ベスは秘密裏にツルコが処理した。翌朝、エリザベートははっとめざめて、蹴られた右頬がはれてないことを確認した。夜着をぬいで自分の裸身をたしかめた。ついで左右の手の甲を見て、おどろいたシミ、クスミがきえている。しばらく放心した。ベスの血をあびたところは肌が回復してる。顔もそうだ。ベスの血だ、と思った。

*** 2) 義母をおしきる
その朝にはアネットがもどってきた。激怒して、こんな女に大切な孫はまかせておけないといった。ところが夫、ナダジーが必死になだめた。自分も城にとどまり監視するという。病身の弱気がでた。アネットがついにおれた。無罪放免となった。ベスのことは何も問題とならなかった。 子どもの世話に明け暮れ、40歳となった。

*** 3) せまる老いにおびえる
老いがせまってきた。笑ってないのに目尻や口角の皺が笑う。顎の下の肉がすこしたれる。乳房もしなびた。下腹もたれた。太腿の肉がやせた。手の甲にシミが見え、肌がくすんできた。にくい義母の老醜が眼前にせまってきた。若さを謳歌してる下女の肉体にもどることを想像した。でもできない。今のゆたかな生活をすてる気がない。色々の思いがうずまき、心の葛藤にたえられなくなる。するときまってベスの血で白くかがやいた肌を思いだす。夫がたおれ、あっけなく死んだ。

*** 4) 夫の死、若い血にうえる
喪もあけない三日目、エリザベートは夫の部屋の中国磁器をすべて自分の部屋にはこぶよう下女たちに命じた。おそるおそるはこぶ下女の中に不器用な者もいる。大切な香炉を大理石の上におとした。エリザベートの叱声がとぶ。たちつくす下女たちを部屋からおいだした。ツルコ、下女の三人になり、むきだしとなった背中を何度も鞭でうった。血まみれになった背中に手の甲をあてた。たっぷりと血のついた手をみて、二人を追いだし、一人になった。顔に血をぬりたくった。思わず笑いがでた。笑いつづけた。血をなめた。こんなにおいしいものだとは。はじめて気がついた。

** E 義母の殺害、下女の殺害
*** 1) 義母への恨みをきかせ殺害する
肌の調子がよいことに気がついた。血液療法はきく。今だ。今をのがしては、効果がないだろうとも思った。二人の魔女をひそかに呼びもどした。義母のことを相談した。砒素を手にいれてくれた。それを香草茶や食事にすこしづついれた。ベッドからおきれなくなった義母を見舞と称して、おとづれた。20年にわたる恨みをのべて、枕で口と鼻をおさえて殺害した。

*** 2)下女を殺害する
療法の効果は長続きしない。つぎつぎと下女を口実をもうけて殺害した。50歳になって、さらに頻繁に処女の血を要求するようになった。死体をうめる場所にこまり、最後は地下の専用の部屋にかくした。専用の浴槽をもうけた。鉄の処女とよばれる残虐な道具もつかった。近隣の村から娘を調達するのがむづかしくなった。

** F 鉄ノコをかくしたフロレンス
隣国ハンガリーのワラシアという寒村にルーディとフロレンスという結婚をちかいあった男女がいた。フロレンスは大枚の支度金と引替えで、嫌々、城にやってきた。牢獄にいれられ泣いた。フロレンスはルーディと相談して、スカートの下に鉄ノコをかくしてた。

** G 脱獄へ
鉄ノコで牢獄の棒をけずった。

** H 脱獄へ
鉄ノコで牢獄の棒をけずった。

** I 脱獄、告訴
五つの夜がすぎて脱獄し逃亡した。ルーディにむかえられた。ハンガリー国王のもとにむかった。

** J ツルゾ伯爵が逮捕
ハンガリー王がジョージ・ツルゾ伯爵に調査を命じた。

** K 処刑
1611年4月、チェイテ城の広場で、執事のヨハネス・ビヴァリー、下男、ツルコ、乳母、イロナ・ジョーが処刑された。エリザベート伯爵夫人は地下の一室に塗りこめられ、1615年2月絶命した。城外では吹雪があれくるってた。

** 1) 現在の小説家の主張
ハリウッド、 ブールヴァード脇のカクテルバーでホラーノベルズの売れっ子作家、マイケル・バークレィがいう。これがエリザベート・バートリ伯爵夫人の歴史的事実だといって、バーテンダーに新作の話しをした。

** L 吸血鬼の復讐
*** 1) 塗りこめ部屋をあける
2月の吹雪のあれくるうある夕方、チェイテ城の地下に兵士がおりてきた。ツルゾ伯爵に命じられて、塗りこめた部屋の穴をあけエリザベート伯爵夫人を埋葬するつもりだった。漆喰の壁がうがたれ、くらい穴があいた。松明をかざして中にはいって、おどろいた。ぬれた床の上の一面に意味不明の文字がかかれてた。しかし伯爵夫人の遺体はどこにもみあたらない。壁際にボロボロになったベッドがあるのをみつけた。ツルゾ伯爵の指示をあおぐため一人が先にでた。もう一人は念のためしらべた。ベッドに虫がくったような裂け目があいていた。蛇がすみついてるのかとのぞきこんだ。うわっと声をあげた。

*** 2) 怪物が復活する
外にでた兵士がもどってきた時、兵士は首から血をだしてたおれていた。そばに奇怪なものが立つてた。ミイラだった。頭にはまったく毛がなかった。顔は皺だらけで目も鼻もどこにあるのかわからない。しかし顔面一面が赤く血でぬれていた。それは豹のような敏捷さで兵士の喉元にかみついた。兵士は死ぬ間際に、やはり生きていた、と思った。

*** 3) ルーディとフロレンスに復讐する
ワラシア村のルーディとフロレンスの家である。吹雪はやんでいた。あれから4年、二人の間には、2歳の男の子、うまれたばかりの女の子の二人がいた。犬の遠吠えがきこえた。見ると一人の人物がこちらにくるようだ。フロレンスは編み物をし、ルーディは農具の手入れをしてた。かすかな音がだんだんとちかづいてきた。突然、窓ガラスがわれる。石が居間にころがった。頭髪がまったくなく、顔が血でただれた人物がはいってきた。フロレンスは悲鳴をあげ、揺り籠におおいかぶさったまま、失神した。気がつくと床の上に喉をくいちぎられたルーディがたおれて、二人の子どもも血まみれで死んでいた。怪物はフロレンスの喉にするどい牙でかみついた。

** 2) 小説家の殺害
*** 1) 物語の結末、吸血鬼の復活をかたる
バーテンダーがどんな結末となるのかきく。ルーディ一家が皆殺しになる。吸血鬼となったエリザベートの復讐だ。彼女に乗りうつった吸血鬼は、また乗りうつって、永遠に生きつづける。だからこの大都会LA(ロスエンジェルス)にもいるかもしれない。バーテンダーがフロレンスのような、いい子が死ぬような悲惨な結末はいやだ。何とかしてくれというと、断固、拒否する。たとえマイケル・バークレィのような好人物がでてきても、例外はないといった。バーをでた。ハリウッド ブールヴァードからファーモント・アベニューにはいり、自宅に歩いてかえった。

*** 2) 怪人物の襲撃
玄関の横の張り出し窓があいてた。ホールにはいった。玄関は同じだが、父親の居住部分と自分の居住部分は完全に独立してる。父親はまだもどってなかった。窓をしめ、服をゆるめ、バーボンをのむため奧のカウンターにいった。氷をだした。その時、アイスピックがなかった。バーボン片手にもとにもどった。客用のワードローブが突然ひらいた。肩につよい痛みを感じた。中にひそんでいた人物にアイスピックでさされた。頭髪がなく、顔全体が赤く血でただれている人物だった。たおれたマイケルに馬乗りとなり、さらにさした。それから斧をもってきて首をたちきった。その首を銀の盆の上にのせて、口づけをした。首がたおれたのにもかまわず、うれしそうに踊り歌った。

** 3) 犯行現場の検証
6月27日、マイケル・バークレィの父親、ゴードン・バークレイに、LA市警殺人課のティモシー・ライアン刑事とアンソニー・ルイス刑事がきく。昨夜11時20分に帰宅し、息子の死体を発見。その前の行動は。ホテルでアリゾナ州立大学社会医学部副部長のアンドルー・ホワイルと対談した。バークレイは牧師で著名な宗教家だった。話題は。多岐にわたるが安楽死の問題など、宗教家としてコメントした。安楽死の話しとなり、バークレイは強固な信念からすべての安楽死の方法を否定。犯行について刑事がいう。犯人はあいてた窓から侵入、本人をさがし、みつからないので帰宅をまって犯行におよんだ。斧は庭の倉庫から、アイスピックは奧のカウンターから入手した。金銭に手をつけてない。麻薬中毒者の犯行ではないといった。被害者はこの週末、女優、シャロン・ムーアと会食する予定だった。

** 4) 聞き込み、小説登場人物の復讐
27日午前、ライアン刑事とルイス刑事はその足でバーテンダーにあう。きく。犯人にまったく心当たりがない。麻薬もやってないだろう。言い争いがあったとか、本当か。冗談、善良な主人公が悲惨な死にかたをする。あれではいつか、その主人公たちに復讐されるといった。そして、小説をもってきて説明した。その内容は、ディーズという作家が、戦いで流れ矢で死んだインディアンの女に復讐された。女は、復讐は本人のみならず婚約者、家族にまでおよぶと宣言した。そして婚約者のエミリーが、小説「テリー」の主人公テリーの復讐により、キッチンの包丁が飛びだし喉にささって死んだ、というものだった。

** 5) 女優シャロンの失踪
二人の刑事はビバリーヒルズにあるシャロン・ムーアの自宅にいった。彼女はここ3年で3本に主演する人気女優だ。門扉からインターホン、応答なし。施錠されてない。玄関の扉までいった。ノッカーで訪問をしらせた。応答なし。しかし扉があいた。ホールには、金属製のライオンの像が見えた。不審物はない。もどろうとした時、ライオン像に血痕をみつけた。「たすけて」という文字もみつけた。左手奧の扉をあけ廊下にでた。その先にガラスの破片がちらばってた。大鏡だった。廊下の左右にある部屋をのぞいた。雑然としてた。ピアノはたたきわられて白木が見えてた。キッチンにはいった。シチュー鍋とコーヒーポットがあった。乱雑ではなく日常の使用をうかがわせる。二階の寝室にいった。「怪物にさらわれ、殺される」というメモを発見した。結局シャロンはいなかった。

** 6) シャロンとレオナの確執
*** 1) シャロンは現在、休暇中という
二人の刑事はシャロンの代理人、キンバリーをたずねた。シャロンの自宅をたずねたことをはなし、血痕、脅迫を示唆するメモ、乱雑な室内について話した。まったく動揺の色はない。ただスキャンダルをおそれた。バークレイの殺人事件は知ってる。彼女は現在4週間の休暇にはいってる。松崎レオナからの手紙をだした。執拗なクレーム、脅迫があったという。レオナが週に一、二度精神医にかかってることを指摘、この殺人事件との関連もにおわせた。

*** 2) 映画サロメのロケが7月からはじまる
一昨年から音楽映画の企画がもちあがり、シャロンへの脅迫がはじまった。主演は松崎レオナがとり、シャロンは準主役となった。現在、撮影は半分おわり、中断してる。7月12日からイスラエルロケが予定されてる。そのタイトルは「サロメ」という。旧約聖書を原典とし、恋人にふられた女が怒りにまかせ、その首をきらせ、それを銀の盆にのせて、踊りくるう役をレオナが演じるといった。

** 7) レオナの尾行
二人の刑事がビューモント・ドライ ヴのレオナの自宅にいった。門はしまって、インターホンにも応答がなかった。出なおうそうかとしたら、車が出てきた。刑事の尾行がはじまる。午後4時だった各所をめぐり最後に車を乗りすてたところで見うしなった。それは午後9時40分、スラストウェイだった。運転は上手だが、感情の起伏がはげしく危険であった。途中の会員制クラブで様子がおかしかった。薬物の影響を感じさせた。ワックスハウスのホラーボックスの展示で、エリザベートが作らせたという拷問用の鉄製の籠や鉄の処女の前でながく、たたづんでいた。

** 8) 赤子誘拐
27日夜である。スラストウェイの撮影監督リチャード・ウォーキンショーの自宅には離れがあり、そこにメキシコ人、トム・ディエゴ夫妻がハウスキーパーとして住みこんでいた。二人には生まれたばかりの子どもがいた。突然、頭髪がなく、顔が血でただれた怪人が妻マリアをおそい、赤子を誘拐した。

** 9) ビバリーヒルズの吸血鬼
翌日の28日、二人の刑事に、マリアが必死になって怪人の様子を説明する。信じられないまま、車にもどる。そこにあった「ビバリーヒルズの吸血鬼」というバークレィの新作をだした。よみがえったエリザベート・バートリ公爵夫人の容貌と同じであることがわかった。

** 10) レオナから聞き取り
二人がレオナの自宅を再訪した。屋敷内にはいれないまま、プールからあがったレオナに声をかけた。シャロンのこと、嫌がらせ、脅迫状、主役争い、マイケル・バークレィのことをきいた。はぐらかされ成果がなかった。ふと気がついた。レオナ邸はセキュリティ会社と契約してない。事情があるのだろうが、不用心なことだと思った。

** 11) 事件はレオナ主演のサロメ関係者
*** 1) ジム・ベインズの赤子を誘拐
ビバリーヒルズ、オークハーストドライヴのヘアメイクアーティスト、ジム・ベインズの自宅に二人の子どもが留守番をしてた。両親は二人に赤子をたのんで外出してた。そこに屋外のテラスから侵入してきた怪人が赤子を誘拐した。

*** 2) 被害者が映画サロメに関係する
7月15日、LA市警捜査本部で会議がひらかれた。現在五人の嬰児誘拐が判明。共通して生後間もない赤子であること、犯人としては頭髪がなく、顔が血でただれてること、身代金の要求がないことだった。その怪人が流行作家のホラー小説の登場人物に照応すること、作家自身が被害者であること、関連する人物が失踪してることがわかった。本人、両親の職業、さらにこの作家も脚本に協力してることから、その活動から、現在進行中の松崎レオナ主演の映画サロメに関連することがわかった。事件発生現場はすべてレオナ邸の近隣であることもわかった。

** 12) 最初の死体発見
7月16日、ビューモント・ドライ ヴで赤子の死体が発見された。誘拐された嬰児の一人、バートの孫娘と特定された。奇怪なことに首の後ろがえぐりとられ、体内の血がぬかれていた。

** 13) 海上の死体
7月20日、AP通信の専属カメラマンのクリス・フィッシャーがヨット乗船中に死体を発見、その写真をとった。その際、上衣を回収した。

** 14) シャロンの上着
フィッシャーがもちかえった上衣はシャロンが映画でつかったものと判明した。大騒ぎとなり、シャロンに脅迫状をおくったレオナに関心が集中した。奇怪な赤子殺害から吸血鬼の再来がささやかれた。精神医・ドリスデールは他人がうんだ赤子にはげしい嫉妬心をもやす女の犯行を示唆した。また、首を切断するという残虐な行為から麻薬中毒者の犯行がうたがわれた。レオナの代理人によれば、レオナはすでにロケのためイスラエルに出発したという。

** 15) レオナ邸で刑事と対決
*** 1) レオナとルイス刑事の対決
午前零時、レオナの自宅である。ある男が扉を乗りこえ、窓からホールに侵入した。一階にある客室、食堂、厨房をのぞき、二階の部屋にきた。多数の人形がおかれている異様な部屋だった。部屋の中央におおきなテーブルがあり、その上に人形が多数あった。ことごとくその首が胴体からひきぬかれてった。しかも顔が赤くぬられてた。黒い影がはいってきた。拳銃をかまえたレオナだった。男は自分はルイス刑事だとあかした。レオナは身分を知ることなく暴漢を射殺した。正当防衛だと主張できると警告した。レオナは予定を変更してここにいる。手錠をかけた。対決がつづいたが、やがて手錠の鍵をのこし 、部屋をでた。ルイスは苦心のすえに開錠し、外の道路にでた。レオナはベッドルームにもどり、何やら薬をのんだ。

*** 2) 黒い人物の逃走
道路にでた刑事は、レオナの狂気をのがれたことに安堵した。扉があいた。黒い服装の怪人物があらわれた。頭髪がなく横の髪の毛がのこっている。顔が血でただれてた。尾行した。ふらふらと坂をおりていった。角をまがると小型車がはしりだすのが見えた。ナンバーをひかえようとあわてたが、車ははしりさった。

* プロローグ2、乾いた血
暗く丸い部屋だった。その中心に男があおむけにたおれてた。もう一人の男がシャツをはがし、ナイフで胸をきりさき、丸い穴をあけた。そこから心臓を取りだして、さらに二つにわった。中にある血液をすいだした。まるで母親の乳をすう乳飲み子のように音をたてて、すいつづけた。

* 死海の殺人
** 1) 魔都の秘密劇場
*** 1) 1941年、上海
1941年、上海である。都市は繁栄しやがて爛熟する。広大な土地と人民にめぐまれた中国は中華思想のもと繁栄をほこってた。しかし歴史の発展の中で西欧列強の進出に脅威を感じ、愚かな鎖国主義ににげた。それでも植民地獲得をきそう列強の動きは惰眠をゆるさない。英国は東インド会社が供給する阿片の魅惑で中国をゆさぶった。麻薬のことである。

中国においては唐代から知られ、徐々に民間にひろまった。酒にまさる楽しみをあたえ、性を多彩にいろどる麻薬は中国人に超人的活力をもたらすとともに怠惰の極みをもたらした。阿片は列強進出の怖それを忘却させるとともに絶望的な劣等感をあたえた。ところで中国の残虐趣味をかたる。権力者は色を好み、人民を道具とする。宦官は権力者のおそれをやわらげ性の多彩をもたらす。纏足は妻の逃亡をふせぎ、性の喜びをますという。上海の爛熟はこのような中にあらわれ、外国人に魅惑の楽しみをあたえた。上海は不思議な魅力にみちた魔都であった。

*** 2) 人魚の見世物
上海にはピンからキリまで、おおくの娼婦がいた。最上級の娼婦をかかえ、阿片も提供する鴻元盛という娼婦館があった。同仏海とミッシェル・ベルトランはあくどい阿片の取引で財をなした最上の客だった。支配人に最上客にだけゆるされる秘密の地下劇場に案内された。そこでは中国の残虐趣味をしめす奇妙な出し物が演じられた。階段をおりる時、ラルフという青年とすれちがった。共同経営者の息子であり、上海 一の踊りの名手だった、この青年が出し物きめているという。下には湯をたたえた水槽があり、そこに人魚がいた。しかしよく見るとそれは上半身をむきだしにし、尻に鱗の入れ墨をいれた男だった。

** 2) 脚本サロメ
*** 1) ソドムの街でヨハネが弾劾する
ソドムの街の広場である。市場の真ん中でバプテスマの ヨハネが演説する。その政治批判を非難する王妃のヘロデアを娘のサロメがとめる。サロメは ヨハネに魅了される。

*** 2) 王妃が ヨハネの処刑をうったえ、王はサロメの踊りを所望
死海に浮かぶ王宮のテラスである。ヘロデアの訴えでヘロデ王は ヨハネを投獄した。その後の処置に困惑する王にヘロデアが死刑をもとめる。民の批判をおそれる王をなおも非難する。サロメが死海からあがって、王宮のテラスにくる。恋の苦しみを告白する。王はサロメに踊りを所望する。ヘロデアが死をもたらす不吉の踊りとして拒否する。サロメが洞窟に身をかくす。

*** 3) 恋こがれるサロメを ヨハネが拒否する
牢獄である。サロメが ヨハネにこがれ、誘惑する。 ヨハネが拒否する。

*** 4) 再度所望する王にサロメが受諾する
ふたたび王宮のテラスである。呆然と夕陽をみつめるサロメに王が踊りを所望する。 ヨハネの声がひびく。ヘロデアが処刑をもとめる。何でも望みのものをあたえるとの王の条件にサロメがついに踊りを約束する。

*** 5) サロメが踊る
サロメの踊りである。かがり火のたかれたテラスでサロメが見事な踊りを披露する。

*** 6) サロメが生首を所望する
かがり火のテラスである。感嘆した王が所望の品をたずねる。サロメが ヨハネの首がほしいという。

*** 7) サロメは吸血族だった
テラス、生首に狂喜するサロメである。ヨハネの生首が銀の盆にのせられ、あらわれる。ヘロデアが高笑いとともにソファからころげおち、王は失神する。二人が退場しサロメが首にちかづく。顔に唇をおしあて、さらにしたたる血を吸う。サロメは吸血族だった。

*** 8) サロメ」ロケ隊の陣容
スタッフ、キャスト。
監督、トフラー(エルビン・トフラー)
撮影監督、ウォーキンショー(リチャード・ウォーキンショー)
美術監督、オリバー(オリバー・バレット)
振付師、ラリー(ラリー・ハワード)
ヘアメイクアーティスト、ジム(ジム・ベインズ)
メイクアップアーティスト、バート(バート・アスティン)
プロデューサー、スティーブ(スティーブ・ハント)
同じく、ダニエル(ダニエル・ジャクソン)
キャスト
サロメ、レオナ(レオナ松崎)
ヘロデア、キャロル(キャロル・ダーネル)
ヘロデ、ビンセント(ビンセント・モンゴメリー)
ヨハネ、ジェローム(ジェローム・ミランドー)

** 3) 本編、死海の殺人
*** 1) 不思議なモスクに到着
**** 1) 空港からロケ地にむかう
イスラエルのテルアビブ空港をたちサロメ撮影隊一行が二台の車に分乗してロケ地にむかった。キリスト教、ユダヤ教の聖地がある土地にむかい振付師のラリーとメイクアップアーティストのバートは宗教的になった。ここで最近、失踪した二人のユダヤ人プロデューサーの話しがでた。死海を南下しウランの精錬所をすぎた。前方にイスラム教のモスクがみえた。中央の円筒にドーム、その円筒の周囲に四つの張り出しがあり、その上に尖塔がのってた。奇妙なのは中央のドームの上と周囲の屋根にプロペラが多数つけられ風に旋回してた。建物の玄関にたどりつくアプローチがあり、その左にギリシャ神殿風の建築物があった。一行をレオナがむかえた。

**** 2) モスク、不思議な建物に案内する
さらに三人の男性もいた。トフラーのエルビン・トフラー、撮影監督のリチャード・ウォーキンショー、美術監督のオリバー・バレットだった。トフラーに失踪したプロデューサーのその後をきいたが、依然、不明という。行方不明のシャロンにかわる女優、キャロル・ダーネルがあらわれた。挨拶がおわり、トフラーが部屋に案内するとモスクにさそった。バートが不審がる。外のテントで寝ることもできる。しかし、そこはサソリの穴が無数にある。撮影隊の先発組はすでに宿泊してるという。入口の手前の壁に、強烈なハリウッドの崇拝者の名義で建物に宿泊するよう案内する短文がはられていた。内部の説明である。

**** 3) 迷路をあるきマンションを見学する
円筒部分は壁で仕きられ、回廊あるいは迷路となってる。この部分は二階建となってる。入口が四つあり左から黄色、赤色、緑色、青色で区別される。先発隊は黄色と赤色をつかってる。後発隊に内部を紹介するといって、緑をえらんだ。懐中電灯をもって真っ暗の廊下をすすんだ。中央の丸いところにきた。ここが中央のドームの下にある。二階ならドームからの明かりがあるが、ここにはない。さらにすすむ。扉につく。そこをあけると扇子にはる紙の形状にまがる廊下がある。その一番右にはいる。部屋はベッドがあるのみである。しかし明かり取り用の細いガラスをとおして光がもれてくる。一番外側の円周の部分に階段がある。それが二階につながる。いわゆる メゾネットである。この部屋の扉、一階、二階ともに鍵がない。廊下と回廊あるいは迷路を仕きる扉にも鍵はない。しかし、玄関からはいる入口の扉は内側から閂がかかる仕組みとなってる。トイレとシャワーは外ですませる。さらに説明がつづく。

**** 4) 各マンションの振り分け、呼び名をきめる
内部から閂をかければ、明かりとりと空気抜きの穴しかない。外部からは侵入はできない。各グループはそれぞれで独立してる。他のグループにゆこうと思ったら閂のある入口までもどるしかない。ここで、この建物の目的、仕組み、招待の短文の意図などに不安や不審がでるが、外との比較もされる。トフラーが先発隊のグループわけの説明をし、後発隊のグループわけをおこなう。二棟は俳優組、一棟はトフラーをふくむスタッフがつかってる。そこで三棟はバート、ラリーの年長組、四棟は録音や小道具、美術監督となった。便宜のため二棟をレッドマンション、一棟をイエローマンション、三棟をグリーンマンション、四棟をブルーマンションとよぶこととした。さらに便宜のため、マンションの各部屋を時計回りに一号室、二号室などとよぶ。二階をU、一階をLとして、例えば、一のU、一のLなどとよぶ。トフラーの説明がつづく。

**** 5) 尖塔の最上部に案内する
二階の部屋の壁に垂直に階段がある。それをのぼると天井の穴にくる。その上に四角の金属板がある。それを押しあげる。そこから円形の床にのぼる。これは尖塔部分である。そこに螺旋階段がある。それをのぼると壁がだんだんせまってくる。最上部にくる。せまい。これで尖塔の最上部にきた。そのスリットから周囲が見える。沙漠と死海が360度の視界に展開する。プロペラが金属のドームの上に林立する。風にふかれ旋回してる。ここから他の三本の尖塔が見える。その軒に一筋のタイルがある。それがマンションの色と対応してる。マンション間の連絡の話しとなる。尖塔からの連絡にくわえ、必要ならハンドトーキーで相互に連絡できるという。レオナがレッドマンションでは金属板があかないという。オリバーが死海とそこにうかぶ撮影のセットをさして、これから案内するという。

*** 2) ステージの表と裏を見る
**** 1) 浮島に案内する
オリバーがラリー、バート、ジム、録音担当を浮島に案内する。三角錐の形状は塩の結晶をイメージしてる。材料は大部分が繊維強化プラスチック(FRP)、継ぎ目部に特殊ゴム、ほか石膏、頂上は金属だ。頂上の剣から放電できるよう設備が付設されてる。浮島は錨とロープで繋留されてる。ロープはモスクのイエローマンションについてるリングにつながってる。浮島、モスク、道路と配置されており、風はモスクの方向から吹いてくる。ステージは安定してる。浮島の重心はひくく設計された。バートがあちこちと歩きまわり、立ちどまって剣を見あげてた。頂上までの高さは60フィートだ。剣に落雷し、塩の結晶が一気に崩壊するというシーンをとる予定だ。ステージの奧に四角の洞穴がある。そこに首がせりあがってくる。ステージからセットの内部にはいる。

**** 2) ステージの内部、地下におり、首をせりあげる
むきだしの鉄骨、ベニヤが見える。階段をおりる。エレベーターの真下にくる。オリバーが仕かけを説明する。ハンドルのグリップをまわす。箱が上からおりてくる。後ろ向きのバートがおりてきた。石膏やペンキでよごごれたテーブルがある。そこの布をひきはがした。つくり物の ヨハネの生首が盆にのってた。首は本物にあわせて重くした。重心もひくく安定させた。テーブルごと生首、盆をエレベーターにのせた。エレベーターをせりあげる予行演習をした。

*** 3) 神殿の地下室で夕食
**** 1) ギリシャ神殿風の建物
モスクの玄関まで舗道がある。その左側にギリシャ神殿風の建物がある。一階は円柱がならび、正面には三角の破風がのっているが、ほかはない。吹きさらしである。砂まじりの強風だった。建物の手前に地下におりる階段があった。おりると金属製の扉がある。それを押しあけると、内部はひろい空間だった。一階とおなじ意匠で円柱が林立してた。これは鉛製だった。入口の扉の内側も鉛でおおわれてた。柱は東西方向、南北方向にならぶ。東西がみじかく、南北がながい。東西方向の柱の間は鉛のパネルで仕きられてた。地下空間には窓がない。モスクの回廊のようにめぐる。壁際を一周できるが、中の部分は東西方向のみ移動できる。何故このような空間をつくったのか謎だった。食事のことである。

**** 2) 地下室での夕食
夕食を地下でとることとした。一階ではスープに砂がまじる。地下に椅子、卓子をもちこみ、東西三列に配置する。隣りあうが南北には話しができない。はじめて一同に会する食事となった。隣りあうウォーキンショーとオリバーの対話である。鉛のほかに酸の臭いがする。食事がおわり、トフラーが部屋からみつけた写真アルバムの紹介をする。モスクの建築工事の写真だった。それによるとモスクは基礎工事がない。太古の工法さながらに岩盤の上に建設された。電源もない。トフラーが明日からの撮影を話す。

**** 3) ロケ隊の中に犯人がいる
サロメが生首をもって踊るシーンからはじめる。レオナに用意はよいかきく。大丈夫、死海での撮影は歴史にのこる。このロケを提案してくれたバートに感謝する。ラリーが死海にはいってみようかという。周囲がリウマチにいい、皮膚病にいいという。裸足は危険、ジョギングシューズをはけ。美肌効果がある。ラリーがバートをさそう。足がわるいので50年もおよいでないが、浮かんで本でもよむといった。 ヨハネ役のジェロームが明日のこの役だけはやりたくなかったといって笑う。ウォーキンショーとオリバーが誘拐された不幸な子どものことを話す。使用人トム・ディエゴ夫妻の妻がおかしくなって、離婚、失踪した。バートの孫娘は首の後ろの肉がけずりとられてたという。ウォーキンショウーが被害者はすべてサロメに関係してる。その犯人は今、この撮影隊にいるのではといった。

*** 4) ヨハネ役者が殺害
翌朝、午前、首をせりあげるカットをとった。つづいて、レオナが首をもって踊るシーンだった。エレベーターの中にはいり、盆をもってでてきて、下においた盆から首をもちあげ、踊った。顔に接吻し、興奮してたおれた。痙攣をおこしている。トフラーがカットと声をかける。レオナの様子がおかしい。本人の頼みから体をひきづってテラスの柵までいった。レオナはそこから死海にはいった。スタッフが首の周囲にあつまった。ウォーキンショーがトフラーにいった。本物の首だ。レオナはあお向けになって死海に浮かんでた。

*** 5) 現場を確認、犯行時刻を推理
**** 1) せり上げ作業を確認
地下におり、トフラーとウォーキンショーがエレベーターの箱の前にいった。緊張した表情の小道具係が説明する。まずマホガニーのテーブルをエレベーターの箱の中にいれる。次に作業台にのってた首を盆とともにテーブルにうつした。それから布をとった。首は後ろ向きだった。ハンドルをまわして上にはこんだ。重さも本物にあわせてた。すり替えにはまったっく気がつかなかった。では、いつすり替えがおきたか。

**** 2) 犯行時刻を推定
昨夜は夕食が9時40分に終了した。今日セットにはいったのが、8時だ。その間におきた。下におりてきたオリバーにきく。箱があがってゆく間にすり替えができるか。否。善後策を考えるが、結論がでない。いったん、撤収して、モスクでジェロームの昨夜の行動を確認することとした。

*** 6) 椅子がうごく、部屋割りを確認、胴体をさがす
**** 1) 地下室が閉鎖されてた
トフラーが上陸すると、こちらにも異変がおきたと知らされた。地下室が閉鎖され、そこの椅子、卓子が地上にはこびだされた。撮影で食事はランチボックスですましたから、気がつかなかったという。トフラーが部屋割りを確認した。

**** 2) 部屋割りを確認する
1) イエローマンション
1U、セカンドアシスタントディレクター
1L、サードアシスタントディレクター
2U、エルビン・トフラー
2L、ファーストディレクター
3UL、リチャード・ウォーキンショー
4U、ファーストカメラマン
4L、セカンドカメラマン

2) グリーンマンション
1UL、バート・アスティン
2UL、ラリー・ハワード
3U、首切り役人1
3L、首切り役人2
4U、衛兵1
4L、衛兵2

3) ブルーマンション
1U、ジム・ベインズ
1L、録音主任
2U、録音アシスタント1
2L、録音アシスタント2
3U、小道具1、3L、小道具2
4UL、オリバー・バレット

4) レッドマンション
1UL、ビンセント・モンゴメリー
2UL、レオナ松崎
3UL、キャロル・ダーネル
4UL、ジェローム・ミランドー

**** 3) ジェロームの胴体をさがす
レオナが熱をだし、うわ言をいってる。エリザベートとかいってる。撮影続行につきトフラーとウォーキンショーが議論した。食事の話しとなった。あらためて地下室閉鎖や持ち主の不可解さが問題となる。ジェロームの胴体の行方が問題となった。昨夜は食事をおえ、便所にゆき、回廊をめぐりマンションの部屋にはいったとビンセント者が証言した。ジェロームの部屋に確認にゆくこととした。

*** 7) 胴体はどこ、閂はかけなかった
昼間のレッドロードを懐中電灯をもってすすんだ。トフラーが閂をすることにしようといった。昨日は閉鎖したところはないようだった。内部の人間をうたがう忌避感があった。ジェロームの一階の部屋を確認した。争いのあと、血痕もない。二階も確認する。異常なし。帰路、レオナの様子をたしかめた。問題はない。ここでも閂を確認した。結局、昨夜閂はしまってなかった。

*** 8) トフラーが撮影継続を強行
神殿建物の一階で昼食をとった。撮影の日程を話した。トフラーは続行にこだわったが、警察に連絡しようとの意見もつよかった。トフラーがウォーキンショーとオリバーと密談した。どうやら自分たちだけで犯人をみつけようとの提案だったらしい。二人はあきれた。オリバーが死者をだしながらも撮影を強行しようというトフラーに天罰がくだりそうだといった。

*** 9) ラリーに神の剣がささる
翌朝、八時、食事である。撮影再開の喜びがあった。トフラーが地震があったかときく。零時ごろだった。意見がわかれる。神の怒りの声がでた。ウォーキンショーがまた、警察への連絡を発言した。ラリー不在の声があった。トフラーを呼ぶ声がする。セットが見える場所にでた。セットがながされたようだ。ロープがほどけていた。セットの先に異物がある。トフラーの声とともに船でセットにむかう。セットの剣先にはラリーがあお向けの死体があった。

*** 10) ラリーの死体を回収
セットに上陸した。撮影のため設営されたものが滅茶苦茶になってることに気がついた。ヘロデアとヘロデ王のソファがとんでもないところにころがってた。埋め込みの照明やワイヤーでつるしたカメラには被害がなかった。どのようにラリーを剣の先にもちあげるのか。人間業では無理、地震も発生した。竜巻のような天変地異が生じる。それで一気にもちあげる。結論はでない。ラリーをおろすことにした。とんがった先端部分を骨だけにする。そのためFRPをはがす。落雷用の機械類をおろすこととした。作業に時間がかかった。その際、ウォーキンショーがオリバーが対話する。レオナの不審な挙動が気になる。迫真の演技というが、本物の生首と気づいてた。それはジェロームを殺害した本人だからではという。

*** 11) ラリーの死体を陸送
外皮を4時間かけてはずす。あらためてラリーの死体を確認。機械をおろす。死体の傷は剣によるもののみだった。死体をおろす。ステージの上におかれた死体に防水布がかけられた。そして船にのせられ陸にむかった。

*** 12) 日程を延期を連絡
トフラーは、群舞メンバーや吹奏楽団のイスラエルの入国の延期を連絡するためエイン・ゲディにむかう。そこで国際電話あるいは電報をする。四駆車で出発しようとした時、ウォーキンショーが警察に連絡するよういった。了承の返事がないまま、出発した。二人の棺を用意した。オリバーがレオナの異常さを考えた。女優には大なり小なり、異常がある。次にセットの設営を乱雑にしたのは誰か考えた。わからなかった。回収作業をして外皮を細工した痕跡はまったくなかった。ラリーの殺害が人間業でないと感じた。

*** 13) トフラーが決意をしめす
夕食をすませた。そこに車がもどってきた。ただ一台だった。ウォーキンショーの質問をうけながしながらトフラーが食事をした。やがてトフラーは、延期の連絡はした。この事件の処理は自分が全責任をおうといった。

*** 14) キャロルの殺害
**** 1) 地震の発生でおきた二人
ベッドに腰かけてレオナが錠剤を二錠のんだ。トフラーが体に地震を感じて飛びおきた。ハンドトーキーでブルーマンションのオリバーに確認したが地震は感じなかったという。ところが地震を感じておきだした人物がいた。キャロルだった。懐中電灯とハンディトーキーをもち階下におりた。

ベッドにふさがれた扉をあけ、廊下にでた。回廊をすすんだ。かすかに血の臭いがする。円筒部分の回廊にすすんだ。主役女優のレオナのことを考えた。さらにすすむ。前方に白い女の姿があった。レオナと声をかけた。すると顔をあげた。顔が血でただれ、みにくく変形してた。

**** 2) トーキーのやりとり、犯人の声
トフラーのトーキーがひびいた。レオナか。悲鳴。たすけて、レオナが。キャロルか。トーキーがきれた。階下におりて扉のドアノブに手をかけた時、トーキーがしゃべった。「トフラーさん、ミスキャストはだめよ。」お前は誰だ。エリザベート・バートリ。扉があき、ウォーキンショーがやってきた。二人はレッドロードの入口にむかう。説明をきき、ウォーキンショーがレオナの犯行をうたがう。回廊から外にでて、レッドロードにはいる扉にむかう。トフラーが力一杯、扉をおした。ひらかない。ブルーロードの扉がひらいた。何があったのかときく。キャロルに異変があったらしい。レッドロードに連絡をこころみてると、トーキーから突然、かん高いレオナの笑い声がきこえた。その他に男の声があった。グリーンロードの扉がひらいた。トフラーが説明をして、レッドロードの扉があくのをまってると、車がやってきた。

**** 3) ロス市警からの電報、レオナの酩酊
電報をはこんできた。LA市警からだった。レッドロードの扉がひらいた。中にたってたレオナが一同に挨拶した。やや呂律がまわらなかった。キャロルは。知らない。ウォーキンショーがレオナの寝衣、顔に血痕がついてることを次々に暴露する。回廊にはいってすぐ、キャロルの死体にぶつかった。 ウォーキンショーの怒が爆発した。レオナを部屋にとじこめた。

*** 15) 模擬裁判、二人のプロデューサーを発見
**** 1) 模擬裁判の実施
レッドマンションの2Uに一同があつまった。ウォーキンショーがレオナを殺人淫楽症として断罪した。トフラーはその奇怪な行動はドラッグによると反論した。さらにレオナの才能を擁護した。ウォーキンショーが模擬裁判を提案した。バートが裁判長、トフラーが弁護人、ウォーキンショーが検察官、残りが陪審員として、レオナの裁判をはじめた。ウォーキンショーは電報の開示をもとめた。しぶるトフラーをせめて、電報を取りあげ、裁判長に提出した。その内容である。

**** 2) ロス市警の電報の内容
松崎レオナ邸から4体の嬰児の死体が発見された。いずれの死体も頸後部の肉がえぐり取られてる。身元はトム・ディエゴ夫妻の第一子、ジム・ベインズ夫妻の第三子、ラリー・ハワード氏の孫娘、オリバー・バレット家の使用人ビリー・マクドナルド夫妻の第三子と判明した。よってロス市警はレオナ松崎を一連の嬰児誘拐殺人の犯人と断定したので、逮捕にむかう。同人を拘束するよう希望する、というものだった。あまりのことに信じられないとの空気がながれる。ウォーキンショーが、異常は遺伝することを主張する。一人の男が二人の女にうませた子孫の有名な調査例をあげた。そしてレオナの父が殺人淫楽症だったという。ウォーキンショーが懐中電灯で天井に光をあてた。

**** 3) プロデューサーの死体の発見
天井の穴に体をいれ、上の金属板をおした。あかないので助けをもとめ、さらに二人でやった。ついにあいた。体が上の部屋にはいった。驚きの声がきこえた。ウォーキンショーがここに失踪した二人のプロデューサーの死体があるといった。

*** 16) 三つの死体の検分
トフラーが部屋にはいる。あおむけになったスティーブの死体があった。シャツがはがされ、胸に穴があいてた。その上にひからびた心臓があった。ウォーキンショーが吸血鬼だといった。血がすわれている。入口ちかくをてらした。そこにミイラ化したダニエルの死体があった。この体と道具箱が金属板の上にあったので、あけられなかったとわかった。口から血をはいてた。周囲に鉈、金槌、大型ナイフ、ノコギリが散乱してた。最後に防水布をはぐる。下から首のない、うつむけの死体が見えた。ジェロームの死体だ。死体からの血が床にあふれ、金属板のまわりの隙間ににじみ、天井の穴から下の床に一、二滴おちた。その血痕を、さっき発見したといった。

*** 17) 撮影の中止しレオナを拘束
トフラーの口から撮影中止がつげられた。レオナがおきあがりナイフでウォーキンショーにおそいかかった。苦心惨憺の末、取りおさえ、両手、両足をしばり、念のため猿轡をかませた。そのままにできないのでベッドにはこんで、一同は部屋をでた。

*** 18) レオナの部屋に怪人物が登場
レオナが夢を見てた。がたんという音に目がさめると、天井の穴から人物がおりてきた。不思議な黒衣をまとって、裸足に革製のサンダルをはいていた。次々とおりてきて、彼女の前に一列にならんだ。顔が血でただれてた。しかしその程度に個人差があった。中の一人がすすみでて、ナイフをふりあげた。恐怖のあまりレオナが失神した。

*** 19) 御手洗の登場、ウォーキンショーと対決
**** 1) レオナが逃亡をはかる、御手洗が登場する
レオナが目覚める。手足の縄がほどかれてた。体中がいたむ。逃亡の用意をして室外にでた。回廊をたどり、慎重に屋外にでた。トレーラーでトイレをすました、道路沿いをさけ岩山にむかった。頂きの一つから白馬が見えた。あわててそこに向かった。距離がちじまった。声をかけらた。「御手洗さん」とこたえた。レオナをのせた。御手洗はトフラーから横浜に電話があった。援助を求められたので、ここにきたといった。馬はこの地で調達した。事件はトフラーから詳細をきいたが、ジェロームとラリーの死までといった。レオナの噂もきいてる。ドラッグのこともきいてるといった。プロペラを目にした御手洗が装飾ではなく、何らかの機能をはたしてるといった。

**** 2) 神殿地下室での食事をきく、部屋の様子をきく
神殿建築を見た。その地下で食事をしてたが上のピロティ風の広場で食事をしてるといったら、何故かきいた。閉鎖されたため。その理由は。不知。杜撰さにあきれた。さきほど見たウラン精錬所の存在とあわせ、何かに気づいたようだった。モスクからでてくる大勢の男たちが見えた。御手洗がトフラーに声をかけた。握手をした後、神殿建築にむかった。地下で閉鎖された扉を確認した。上のピロティで話しをする。

地下の部屋は金属のパネルが幾重もある。柱にも金属がまかれてる。その金属は鉛である、ということを確認した。トフラーが御手洗をスタッフに紹介した。ウォーキンショウーが無愛想にLA市警がレオナを逮捕するといった。御手洗は猶予はこれから十時間と知った。事件がおきて、キャロルが殺害され、プロデューサーの二人の死体が発見されたことを知った。レオナを糾彈するウォーキンショウーがジェロームから頸の後ろの肉が切除されてたことを知った。さらにキャロルにはそれがなかったことを確認した。御手洗がLAの赤子の頸の後部も切除されてたといった。そして、今回の事件の被害者がサロメ関係者に集中したのは、犯人がちかくに居住し、家族構成をよく知ってたからといった。トフラーが血をすうといった。

**** 3) ウォーキンショーがレオナを告発する
御手洗は新鮮な血がほしいなら骨をわって、あるいは心臓からのむ。今回の事件ではそれがない。吸血は目的でないといった。ウォーキンショウーがレオナの麻薬常習を示唆する。キャロルが殺害された夜のレオナの 妙な反応、それにくわえ寝衣の血痕、6月27日夕方、自宅をでて車で街を彷徨、そこでおこなった多数の奇行を指摘した。レオナが犯人と主張した。御手洗の反論する。プロデューサーのスティーブにつき、心臓が半分にわられていた。一見、吸血鬼の犯行のようだ。しかしジェロームの死体である。レオナの部屋の天井から血がしたたりおちた。吸血鬼の犯行ではない。ウォーキンショウーの糾彈は、レオナが吸血鬼といったり、殺人淫楽症といったり麻薬におかされたジャンキィーの犯行としたり、主張が一貫してない、その欠陥をつく。

**** 4) その論拠に反論する
さらにレオナの否定をうけ、御手洗がウォーキンショウーが犯行を目撃してないと、激烈な主張に水をかける。さらにラリーの殺害についてレオナ犯人説は根拠薄弱と指摘。レオナの奇行にひそむ異常さ、その父の異常さについていう。この異常人物は「暗闇坂の人喰いの木」に登場した。それを根拠にウォーキンショーが殺人淫楽症を主張した。さらにウォーキンショーがもちだした米国の調査にふれた。一人の男が二人の女性と結婚した。精神に障害のある女性の子孫とそうでない女性の子孫を比較調査した。職業、社会階層におおきな差がうまれたというものだった。しかし、それは社会的背景の差という環境的要因を反映したものというべきだ。レオナを殺人淫楽症とする根拠の欠陥を指摘した。

**** 5) 謎が多数なのに、究明を放置してる
ウォーキンショウーはラリーの殺害がレオナでないことを認めた。しかし、では犯人は誰かと御手洗にきいた。現時点で不知、御手洗も認めた。情報の不足と不可解な事実の原因究明においてリチャード・ウォーキンショー側の怠慢を指摘した。地下の部屋が閉鎖された理由に関し、神殿の北側の土地を10フィート下まで掘削するようもとめた。ウォーキンショウーは御手洗の大言壮語の発言を指摘し、解決への圧力をかけた。御手洗はこれを挑戦と受けとめ、最後にレオナの部屋の上の三つの死体の差異、神殿の地下の部屋の特異な構造、近在するウラン精錬所、モスクのプロペラ、死海の存在を指摘し、撮影隊の協力があればこの事件は解決できると宣言した。

*** 20) 御手洗が事件をきく
**** 1) 御手洗が今回の依頼の目的を確認する
御手洗が今回の依頼の目的は、1) レオナの救出、2) 映画サロメの続行であることを確認した。ついで、撮影隊の先発組と後発組のリスト、一階、二階の回廊の詳細図、神殿北の土地に溝を掘削することを要望した。

**** 2) 撮影開始前日をきく
トフラーが説明する。7月24日、後発組に、土地の説明、モスクの説明。セットの説明。オリバーが死海のセットに案内し、エレベーターなどの詳細を説明、夕方、地下室で食事。御手洗がきく。四つのロードの入口に閂をしたか。否。夕食時、モスク建築時の写真アルバムを見た。基礎工事がなく岩盤の上に建設されてたことを知った。モスクの入口にはってあった短文は、先発のスタッフが到着した7月20日はあったが、レオナ、トフラーがやってきた6月にはなかったことがわかる。7月22日にレオナとキャロルがレッドマンションにはいった、ことがわかった。

**** 3) 撮影第一日目、生首の発見をきく
7月25日、撮影準備でトフラー、助監督が早朝にセット入り。食事はランチボックス、地下でない。なのでジェロームの不在に不知。地下部屋の閉鎖も不知。椅子、卓子の移動の目撃者もなし。生首の登場、レオナの演技を撮影。その生首が本物だということにスタッフが気がつき大騒ぎ。御手洗がレオナに何時、本物と気がついたかきく。レオナが不承不承、正直わからないと告白。御手洗がドラッグによる健忘といった。

**** 4) ジェロームの行動を確認した
24日の夜から25日の早朝につくり物の首が本物にすりかえられた。つくり物は現在のところ所在不明。トフラーがいう。渚にもどって、地下室の閉鎖を知る。ジェロームの部屋で確認、そこに遺骸なし。そこでトフラーが部屋割りリストをわたした。ジェロームの行動である。、夕食後、ビンセントとともにトイレにゆき、レッドマンションに10時ごろはいった。レオナが御手洗に不承不承、24日10時以降にドラッグをやったことを認めた。

**** 5) 第二日目、ラリーの殺害をきく
26日、朝食は神殿のピロティでとった。そこでラリーの不在に気がついた。騒ぎとなりセットの先端の異物に気がついた。それがラリーであることに気がついた。不可解さに神わざか、となった。御手洗がたしなめ、何か異変がなかったかきく。セットの中の小道具、機械が乱雑、混乱してた。その意図が何なのか、不明、特定の傾向も認められなかった。さらに異変としてトフラーが地震があったという。25日の夜から26日の早朝に地震。二度目もあったという。他のスタッフに次々たしかめてるうちに、何かを発見。御手洗の気分が高揚。そこで突然声があがった。

**** 6) 推理がすすむ、モスク、地下室の謎
掘削中のスタッフからパイプのようなものを発見という 。御手洗は、レッドとその反対に位置するブルーのマンションの住人が不知、イエローとその反対に位置するグリーの住民が承知という事実、モスクの屋根のプロペラ、無数のパネルをもつ地下室、その扉が24日に閉鎖された。さらに地震がそれ以降におきた。さかのぼって地下室があいていた、それ以前には地震がおきてないこともわかった。御手洗の推理はすすむ。ラリーの不可解な殺害は閉鎖されてからだ。両者には関連があるといった。キャロルの話しとなった。

**** 7) 地震の謎、感じた人と感じなかった人
トフラーが地震に気がつき目がさめた。当時、レオナはドラッグのため記憶がなかった。トフラーのハンディトーキーが鳴った。そこから女の声がひびいた。ここで部屋にいるはずのレオナとキャロルの行動が問題となった。そこにバートが口をはさんだ。グリーンマンションの住民である彼はは入口の扉の開閉を確認できるようにと、透明のセロテープをはってた。それでレッドマンションの扉があけられてないことを確認した。ウォーキンショウーがレオナの嫌疑がいよいよこくなったといった。あらかじめレッドマンションに人がひそんでる可能性が議論されたが、可能性は低いという結論となった。二人のプロデューサーの話しとなった。

**** 8) はいれなくなった尖塔への道の謎
レオナに確認する。レッドマンションをえらんだのは、回廊の途中に外光がもれ、明かるいところがあったから、2Uをえらんだのは、その上に尖塔があるからといった。しかし上にはのぼれなかった。6月のはじめにきたときには、のぼれた。当然、二人の死体はなかったという。

**** 9) 異様な男たちが尖塔からおりてきた
御手洗がレオナから見取り図をうけとり、食事は辞退し、しらべるといった。ウォーキンショウーがレオナを拘束した26日は、はじめて死者のでない日となったというとレオナが死者はでなかったが、ソドムの民がでたといった。御手洗が説明をきく。顔が血でただれた男たちが尖塔からおりてきて、自分をみつめていたといった。御手洗は一同からはなれて調査にむかった。

*** 21) しらべた御手洗が山にむかう
**** 1) 回廊の不可解な場所を指摘する
御手洗がもどってきて、修正した見取り図をみせた。隠し部屋でもあったかと皮肉をいったウォーキンショウーにとりあわず、二階の回廊、イエローロードには行き止まりとなる岐路がある。一階にはそれがない。それはここの回廊に閉鎖された空間があることを示唆する。二本の回廊はそれをよけている。この閉鎖された空間の天井と床を考える。天井は二階の床につながり、床は地下の岩盤につながる。何を意味するかとの問いにこたえず。ヒントをだす。それはレッドロード。さらにこのブラックボックス上空にさしかかるレッドロードの床だ。これが五インチほど低くなってるといった。さらにイエロー、グリーンの住人にのみ感じられる地震、ラリーの奇怪な死もヒントだといった。死海王国のセットを見にゆく。

**** 2) セットの先端を見て、ラリーの死因をさとる
船で浮島のまわりをめぐり、オリバーと殺害方法を話す。先端にロープをかけ上にのぼるのも、下からロープをかけるのも困難との結論となる。セットは、やはり風にながされる。二カ所を錨でとめ、さらにロープでモスクにつないでた。しかしロープはほどけてしまった。今はそのままだ。浮島のどこにロープを固定するのか。浮島背中の上部の標高二十フィートのところにリング。上陸する。

**** 3) 血まみれの怪人をジムの息子が見た
パティオでの会話である。レオナが見た怪人について、妄想という意見にたいしジムが息子がそれを見たと反論する。

**** 4) 全容をさとった御手洗が伝言して山にむかう
陸にもどり、モスクで浮島をロープでつないでいたらくだ留めのリングをさがすが、ない。さらにしらべると、鉄の杭がみつかった。その先の穴にリングがついてたらしい。ラリーをもちあげたのは、ここにロープをむすんだオリバーだといった。御手洗はこれで事件のすべてが見通せたといって、小考の後、スタッフはピロティで待機、トフラーにはサロメの撮影をつづけるため、LA市警がきても、レオナを今夜はここにとどめておくこと、どのような手段でもそうするよう伝言を依頼した。そして馬にのって山の頂きにむけて出発した。午後1時だった。

*** 22) LAの刑事が登場、御手洗が警告
夕方、LA市警からティモシー・ライアンとアンソニー・ルイスの二刑事がやってきた。ピロティにいるレオナに手錠をかけた。連行しようとした時、トフラーがやってきて必死に制止しようとした。もみあいの後にトフラーが拳銃で二人を拘束した。二時間まてといった。夕陽がしずみきる前に御手洗が馬でもどってきた。まちかねたトフラーが声をかけた。そして、御手洗がおめでとう、真犯人はみつかったといった。四人の嬰児の死体をおいたのは、ポール・ドリスデール。レオナのかかりつけの精神医である彼が、レオナの相談をきき、嫌疑がかかるようにおいた。そして同時に御手洗の謎解きをきかないでLAに直行すれば、二人は全米の笑い者になると警告した。

*** 23) 御手洗が謎を解く
**** 1) 十二人の殺害を概括、謎解きの再開
御手洗はパティオで一人の女優が短時間のうちに十二人もの殺人をおかしたという前代未聞の嫌疑がかけられたが、真犯人は別にいるといった。長い前置きの後、御手洗はモスクの前にちかづき、イエローマンションの壁のところで立ちすくんで、やがてしゃがみこんだ。そしてらくだ留めのリングをひろいあげた。モスクをどかせるといって、イエローマンションの壁をおしはじめた。呆然とする一同、二人の刑事もあきれて立ちさろうとした。その時、つよい金属音がひびいた。巨大な石造の建築物が御手洗の動作とともに五フィートうごいた。御手洗が手まねきした。

**** 2) 異人種の登場、奇病の説明
玄関で異人種を紹介するという。レッドロードの扉から古代ローマの衣裳のような、黒い布をまき、腰にベルトをした男がでてきた。次々と同じような衣裳の男女があらわれ、十人たらずの人びとが石舞台の上にならんだ。御手洗がアリゾナ州立大学社会医学部副部長、アンドルー・ホワイルを紹介した。ここにいる人びとはストレンジの最も重症の患者であるといった。自分は患者のため、ここに治療センターをつくった。御手洗氏は無実の罪で逮捕されそうになってる人をすくうため、全員がその姿を人目にさらす必要があると協力をもとめられ、陽がくれた時ならという条件で同意したといった。さらに説明する。

**** 3) ストレンジ病の説明
髮がぬけ、顔が血でただれ、膿がふきだす症状をみせる。これは強力な薬効をもつステロイドの多用により、こじらせてしまった結果である。ステロイド、副腎皮質ホルモンの分泌は脳の視床下部により制御されている。ところが視床下部は同時に自律神経の制御もおこなってる。現代社会のストレスが自律神経の失調や副腎皮質ホルモン分泌を低下させると考えている。初期の症状は眉毛のあたりがかゆくなる。体中に湿疹がしょうじる。それが時に発症し時にきえる単純な皮膚炎としてあらわれるが、その治療法はながく不明とされていた。重症になるとその痒みは我慢できる限界をこえ、不眠をひきおこし、内臓がやられ、精神に異常をきたす。さらにすすむと、皮膚炎で関節がまがらなくなり、顔がはれ、皮膚がやぶれ、髮がぬけ、人前にでられなくなる。同じ家にすみながら数年間も両親と顔をあわせず、部屋にひきこもった症例も知ってる。これを劇的にいやす薬がステロイドである。

この療法には危険な側面がある。多用により本来の副腎皮質ホルモンの分泌機能がなくなる。これがながくつづくと、内臓疾患、精神障害、失明から生命の危険にまですすむ。そこでステロイドの投与をやめると、今度は前述のように重大な症状をあらわす。この症状にある人が、いまあらわれた人たちだ。オリバーが何故この地にいるのかときく。御手洗が離脱症状の説明が必要と補足する。説明がつづく。

ながく投与されたステロイドを体内からぬく必要がある。これを離脱とよぶ。この離脱の過程で前述の重篤な症状がでる。患者に重大な苦しみをあたえる。ところがこの離脱を効率的におこなう方法がある。それが日本に古来からある温泉療法である。自分は日本に治療センター設置の計画をすすめていたが、別途提案がありこの地に設置することとした。これは人目をさけたいという要望からは日本より、アメリカより適地である。建物、地下室について説明する。

**** 4) 建物の真相を説明
この地には古来の地下都市があった。人目をさける意味でこれを利用することとした。建物について説明する。このモスクは一階、二階がある。二階は最大37度回転する。15度回転すると地下の療養施設におりる階段があらわれるようになってる。これが通常にもどると地下への入口はとじる。このような大規模な仕組みについて説明する。

現在、患者は21人だが将来数百人となると予想してる。患者は特性により日光にさらしたり、それをさけたりする必要がある。四つの張り出し部分や現在コンクリートで区切ってる回廊部分の利用も考えてる。回転はバランスを考えグリーンとイエローしか回転できない。オリバーが回転についてきく。

**** 5) 地震の謎を解明
回転は特別な駆動装置をつかう。日本の一眼レフカメラでオートフォーカスなどにつかう振動モーターだ。これは通常のモーターにあるような動力部分がない。この説明には二つのリングをかさねておくことを想像してほしい。下のリングに縦揺れをおこす。すると両者の間にマイクロのレベルの隙間がうまれる。これに横揺れをくわえる。精密な説明が困難だがこれにより回転運動をおこすことができる。カメラのレンズのような円筒部を回転させるには理想的な装置である。これをモスクの二階部分と一階部分の間にとりつけ、回転させる。すると二階部分に取りつけられたイエローとグリーンが回転する。これで地震が感じられるマンションと感じられないマンションのちがいが納得できた。電力源の話しとなる。

**** 6) バッテリー装置の説明
プロペラによる風力発電だ。建物の回転につかうほか、地下の電灯につかう。風のない日のためにバッテリーを用意してる。地下施設への移動をうながす御手洗に、なおも、どこにバッテリーがあるかときく。鉛のパネルのある地下室。地下室が閉鎖されバッテリーが駆動できる。建物が旋回すする。だから地震も発生する。地震発生と地下室扉の開閉との関係に納得。扉をしめる。バッテリーが駆動できる。電解液としての硫酸をいれ、電極に鉛を使用する。硫酸はどこから。この北にウランの精錬所がある。そこで大量の硫酸廃液が発生。それをパイプにより移送。御手洗がモスク玄関の石舞台にあがった。

*** 24) 地下湯治場を紹介、女性が逃亡
**** 1) 回転で地下空間への道がひらく
一階のレッドロードにながい行列ができた。先頭部はストレンジの患者、その最後尾にワイル、御手洗、後方に撮影隊だった。レッドロードの入口が一つ左にずれていた。回廊をあるく。何ひとつかわってない印象。先にゆく一行がきえていったところはキャロルがたおれてた、わずか手前だった。そこには幅三フィート、奥行五フィートの穴があいて、そこから下にくだる階段が見えた。これは右方向に十五度回転することにより、このあたりが床の厚さ分掘りさげられてた。これで一階部分の空間につながった。御手洗がキャロルを殺害した人物はこの階段をつかってレッドロードにきたといった。

**** 2) 地下空間が湯治場となってる
下におりきった時、一直線の石畳の道があった。その両方の壁に点々と明かりがついてた。その先は広場につながった。広場の中央に井戸があり、それめぐってベンチがあった。そこに数人の患者がすわて、したしげに話しをしてた。ホワイルがここは岩盤をくりぬいた古代都市の一部という。温泉がわき、浴場が随所にある。古代の湯治場のようだ。古代ローマのカラカラ浴場のようなプールもある。その片側に仏教の阿弥陀如来像がおかれてた。日光を必要とする患者のためには、この先に直射日光がさす場所がある。そこから先に、もう一つの出入口がある。これはバッテリーをつかえない状況で出入口として機能する。刑事ルイスが御手洗にきく。

**** 3) 女性患者が逃亡する
顔が血でただれ、頭髪がぬけた怪人物が目撃されているが、それはレオナではないのか。否。赤子を殺害したのも。否、それを必要としてる人物がいる、という。そこで患者の一人がホワイルに、女性患者が逃走し、 ヨハネのつくり物の首も不明となった、とささやく。レオナが彼女は死海王国のセットにいるといった。

*** 25) 真犯人が登場
**** 1) 真犯人の姿があらわれる
セットにむかう船上で御手洗が説明する。一人の女優がいた。彼女はハリウッドの大スターだった。ところがストレンジが発症した。強力な薬効をもつステロイドにとびついた。多用が症状の悪化を促進した。ところで、ステロイドの使用に反対するゴードン・バークレイという宗教家がいる。皮膚病の権威であり、この女優のかかりつけ医師でもあるフランク・ツィンマーマンと激烈な議論をかわした。医師はステロイドの使用を制限することをきめた。この女優はステロイドの服用を懇願した。しかしかたくなにこれを拒否した。ここにこの女優のかかりつけの精神医、ポール・ドリスデールが登場する。彼はこの女優と深い関係にあるとともに、彼女はオフィスへの出資者であり、有力な顧客を紹介してくれる恩人でもあった。そのためステロイドの入手に協力した。しかし症状の悪化した女優には充分でなかった。症状をこじらせ顔が血でただれ頭髪がぬけるという絶望的状況となり、精神に異常をきたした。ステロイドの使用をやめさせたゴードン・バークレイに復讐しようとして自宅をたずね、ついに息子、マイケル・バークレィをまちがって殺害した。セットにちかづいた。御手洗がスタッフにステージの照明を点灯できるよう依頼して、上陸した。

**** 2) 舞台に犯人が登場する
一同が見守る中で、舞台に一人の女性がたってた。首がのった銀の盆を頭上にかかげて、 ヨハネの首をもつサロメの演技をした。御手洗の合図により強力な照明に女優の姿が浮かびあがった。シャロン・ムーアと紹介した。刑事が手錠をかけようとちかづいた時、隠しもってたナイフで心臓をつらぬいて、絶命した。トフラーが、ハンディトーキーでシャロンがいった。「ミスキャスト...」の意味がわかったといった。御手洗がレオナへの敵愾心について話す。

**** 3) レオナへの復讐を暴露する
多数の殺人をおかした自分の将来がないことを覚悟したが、それなら宿敵レオナもほうむりたいと考えた。キャロルも同じか。否、レオナをねらた過程でおきた偶発的事故だ。嫉妬心から彼女の顔を傷つけたが事故だった。キャロルがハンディトーキーをつかって連絡されたのでレオナ殺害はあきらめ、地下にもどった。レオナがイスラエルにたつ日にレオナの自宅に侵入し殺害をはかって失敗した。それを刑事、ルイスに目撃されている。レオナがきく。自分がしばられてた時に見た大勢の人たちは。それはシャロンをおってきた患者仲間。ホワイルがいう。彼女は問題児、殺人の疑いもあった。監視してた。監視の目をかいくぐり連絡口をあけ、レオナの部屋に侵入しようとしてた。モスク入口にはってあった手紙の話しとなる。

**** 4) 犯人の犯行を解明する
ホワイルが否。御手洗が彼女だろうという。シャロンはキャロルを殺害の後で、追手をまくため多分、ジェロームの部屋にかくれ、地下の入口から逃走。そこで建物を回転させ入口を閉鎖。追手はやむなく2Uの尖塔部分にいったんかくれ、やがて2Uの部屋におりた。それをレオナが目撃。一同がねしずまったすきに入口から脱出し、非常口からもどった。トフラーがきく。

彼女が人間の肉を顔にのせてた。それは何故。コラーゲンだ。これは細胞の中にあるタンパク質で、 皮膚細胞を活性化し、かつ、瀕死の細胞も再生させると信じられてる。アメリカは美容科学の先進国だ。それに頼りたいとの女性もおおい。コラーゲンをふくんだ化粧品が多数。ところで胎児はもっともコラーゲンがおおい。中絶胎児を利用しようとする闇のルートができてる。何故、首の後ろの肉なのか。化粧品メーカーが牛の首の後ろや背中から膠を抽出し、それからコラーゲンをとると説明してる。これが彼女の行為の誘因だろう。狂気にかられた彼女が赤子を殺害しそのコラーゲンを一刻もはやく破壊された皮膚に供給したいと思ってのことだろう。ホワイルがジェロームの肉をそうしてたという。

**** 5) ジェロームの殺害を説明
レオナがシャロンが筋肉トレーニングをやってた。ジェロームを殺害、首を切断、セットでつくり物とすり替え、胴体を尖塔下部の部屋に搬送。必死になればわたしでもできる、といった。

**** 6) 悲しい動機が暴露される
御手洗が胎盤美容法というものがある。これはたとえば火傷した時、出産した時に排出される牛の胎盤を患部にあてる。驚異的なはやさで回復。これはプラセンターエキスの効果という。LAでは5人の赤子を殺害しこれをやった。一人は街路にすて、のこり4人はレオナに疑いをかけるために住居に放置。血がぬかれていたが。レオナがいう。それはエリザベート・バートリに興味をもっていた。彼女にならった。あらためて一同が呆然とする。照明がけされた。浮島を立ち去る前にレオナがトフラーにいった。自分のほうが演技がうまい。

*** 26) 最後の謎を解く
**** 1) ヨットから目撃された死体は誰
ライアン刑事が、シャロンの死体として海上で目撃されたのは誰か、ときいた。それは、ウォーキンショーの家に住み込んでた女性。赤子を誘拐されたマリア・ディエゴと思う。何故なら新聞報道後も誰も知人が名のりでない。離婚してメキシコを故郷とする女性だ。シャロンにちかづき返り討ちにあった。あるいはポール・ドリスデールの犯行かもしれない。二人のプロデューサーの話しとなる。

**** 2) プロデューサーの死因
御手洗がいう。死因は餓死。スティーブが先に死亡し、乾きに苦しんだダニエルが体をえぐり心臓を取りだし、心臓をわって吸血した。問題は何故そんな悲惨な状況に追いこまれたかだ。それは中央の円筒部分が回転した。二人が部屋をでて、廊下からレッドロードの回廊にでようとした。そこで扉をあけたら壁が出現した。それでレッドマンションに閉じこめられた。閉塞状況で惟一外界を感じられる2Uの上にでたのだ。レッドマンション一階に固定され、回廊にでるには、二階の扉からでる。回転により壁となった。バッテリーの硫酸を交換するのに長期間かかることがあったろう。その間に偶然に閉じこめられた。といってもホワイル氏に責任はない。ストレンジへの偏見から、このような建築物をつくったのだから。一同は突然の異変で絶望のうちに餓死した二人を想像してあらためが呆然とした。トフラーが最後の謎を御手洗にきいた。

**** 3) セットの剣先の死の謎
不答。真相は知っているようだ。何度も問いかけても不答。トフラーは多数決できめようと挙手をもとめた。賛成が過半数となった。突然、バートが語りはじめる。自分は中国、浦東の裏町高橋にうまれた。まずしかった。生活苦から十四歳の時、うられた。十七歳、ラルフという青年がかった。ラルフは悪魔だった。両足を切断、去勢され有名な売春宿鴻元盛の秘密の劇場で人魚の見世物となった。1941年、日本軍が上海にはいり、その後、米軍がやってきた。米軍将校のたすけによりLAにわたった。

**** 4) バートの告白
1955年MGMのダンススタジオでラルフと再会した。それはラリーだ。去勢のせいで自分に気づかなかった。一時、ハリウッドに中国ブームがあった。成功者の仲間入りができた。ラルフはビバリーヒルズに住居を購入するのをたすけてくれた。愛憎なかばする存在だった。人生の終わりを感じた時、東洋から大スターがやってきて、引退した二人が死海にくることとなった。

かっては人魚の見世物となった自分の体では死海でなければ、およげない。ここで自分がだれか気づかせて用意した拳銃で殺そうと決心した。だが失敗した。もし謝罪の言葉があれば許してた。しかしない。怒りがこみあげた。その時、轟音とともにセットが横倒しになった。おびえるラリーの肩をつかみ、セットの先に体を突きさした。陸にもどり呆然としてたら、モスクをでて沙漠をあるく不思議な一行を見た。彼らが何なのかわからぬまま部屋にもどった。翌朝セットを見ると元どどおりだった。長い話しがおわり、御手洗が補足する。

**** 5) ラリーを殺害した神のいたずら
一行がセットからきたロープをほどいた。開放されたセットは重心の力で元の位置に復元した。バートが自分なりに真相をしりたいとセロテープを扉にはりつけたりしたが、真相はとてもつかめない。何だったのか、知りたい。御手洗がいう。モスクが回転することを確信したのは、ラリーの死体の状況だった。あれはセットが横倒しにならなければ、そうならない。では、回転を始動するスイッチはどこか。一つは地下にある。さらに地上にも必要だ。それがらくだ留めだ。あのレバーがスイッチだった。尻餅をつく真似をしてスイッチをひいて、建物をうごかす演技をした。ロープがモスクにむすばれてたから、風でながされるとスイッチがはいってしまう。回転がつづき15度どころか37度まで回転した。そのためセットが横倒しとなった。患者の一行は赤い山から、あわててでてきた。ロープをスイッチからほどき、二度とこんなことがおきないよう、スイッチからリングをはずした。横倒しがセット大混乱の理由だ。謎解きがおわった。一同は夕食をとることにした。

* エピローグ、わかれ
翌朝、レオナはLAにいそぐ御手洗をテルアビブ空港までおくって、わかれた。

* 感想、謎解きは面白かったか
** 1) 建築物の構造
この作者は美大出身である。間違いなく建物の設計図がかける。ずいぶん不思議な構造の建物も構想できる。すると見事にそれを設計図におとす。。モスクは地下につづく坑をもつ岩盤にたてられた。その図と説明から、次のようにまとめた。

1) 建物は一階、二階、ドームにわけて考えることができる。
2) 一階は岩盤に固定され、円筒部分と張り出し部分をもつ。二つの張り出しは円の直径上対象の位置にある。
3) 二階も円筒部分と張り出し部分がある。張り出しは二つある。これで都合四つとなる。ドームは二階の円筒部分の上にのる。
4) 張り出し部分でレッドとブルーは一階に固定され、イエローとグリーは二階に固定されてる。尖塔がそれぞれ一つ、この上にのる。
5) 二階が回転し、一階は回転しない。つまり二階に固定した張り出し部分のイエローとグリーンが回転する。
6) マンションへの入口は、イエローとレッドが二階の迷路からはいり、グリーンとブルーは一階の迷路からはいる。

と、まあこんな構造の建物で事件がおき、展開してゆくと思う。

** 2) トリックの仕組み
*** 1) 地下連絡の道が可能か
一階部分の迷路構造の中に四方を壁で閉鎖された扇形柱というべき空間がある。その扇形柱の天井と床にあたる部分は閉鎖されてない。 二階部分の迷路の中に扇形柱に照応する穴があけられている。通常、この穴は一階の天井部分のコンクリートにより閉鎖されている。ところが回転により位置を移動すると、ちょうど扇形柱の天井部分にかさなる。ここから地下への道がひらかれる。回転が可能なら、ここに問題はない。

*** 2) 回転できるか
振動モーターの原理がはたらく。規模の差は無視すると建物の構造上に障害はない。震度は一階と二階の接触部分のうち、一階部分に生じるらしい。この振動は一階にのみ伝播するのが原則というが、二階のレッドにもわずかに伝播し、それを感知したキャロル・ダーネルに事件がおきたとある。

*** 3) のせるだけ、ずれないか
地震や強風でずれないか。一階は地上に固定されている。その上に二階がのる。これが地震でずれたりしないように、二階建のマンションが直径方向、対称にそれぞれ位置して保持をたすける。

*** 4) 地下室のバッテリーが可能か
ここでも規模の差は無視する。鉛を電極につかうのは自動車のバッテリーがあると思う。鉛とその酸化物を電極につかう必要があると思う。しかし文章に明記されてない。あるいは炭素をつかうのかもしれない。原理的には問題ない。電解質である硫酸も問題ない。

*** 5) 事件の日程が整合してるか
次のとおり、整合性があるようだ。
6月
1) レオナ、トフラーがイスラエル、ロケ地を訪問
2) 二人のプロデューサーがイスラエル、ロケ地で餓死(二人)
3) シャロンがLAで殺害を実行(五人の嬰児、一人)
7月
1) シャロンがLAで殺害を実行(一人)
2) レオナがイスラエル、ロケ地を訪問
3) シャロンがロケ地で殺害を実行(二人)
4) バートが殺害を実行(一人)

*** 6) 原理的には可能
以上見たとおり謎の実現は可能と思う。しかし現実にこんなことがおきるか、考えれば、急にさめる。効率性、経済性から、本来にそんなことをやる必要があるか、謎の実現に現実の冷たさが立ちはだかる。それをさておき、次の二つがある。

1) 振動モーターは、振動によりマイクロレベルの隙間がる生じる。カメラのような精密なメカニズムが実現可能だろう。一定規模をこえると精密な平面は無理。また摩擦も無視できない障害となるのは理の当然。これは原理的に可能と判断する時、無視できるのか。規模を無視するといったが、ある規模をこえると理論的壁がうまれるかもしれない。不勉強故、これ以上はいえない。

2) 殺人のような非日常の出来事は、周囲の目があるので抑止される。不審、警戒の目が常にはたらいてる。確率が零から百の間でうまれる。十二人も死ぬことがあるか。周囲、本人の状況、本人の動機、心理などにより納得できたり、できなかったりする。この物語は、エリザベートの吸血鬼変身、ハリウッド映画サロメ、女優の葛藤、イスラエルのロケの話しを主軸に、女性の若さへのあこがれ、美肌、その保持、再生、美容業界、美容科学、ストレンジ(アトピー)の問題、療法、これにくわえて数々の吸血族、魔女の話しなど多彩な伏線がはられてる。びっくるするような話しだが、ありそうと納得した。

** 3) 謎解きのたのしみ
作者が仕かけた奇想天外なトリックを推理し、それが可能なのか検証してゆくこと自体がたのしい。わたしの推理小説のたのしみの大半をしめる。わたしは、この作品の謎解きとおして、作者の構想の壮大さに心をうばわれ、数々の謎との出会いをよろこび、伏線の巧みさに驚かされた。ここで作者にお礼をいう。

(おわり)

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