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謎解き京極、魍魎の匣その3 [京極夏彦]

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あらすじ3

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9月27日、中野の京極堂である。やってきた関口に、久保の小説をよんだ。読後感は悪いといった。関口の短編集は内容の時期別にならべるよう助言した。鳥口から取材内容をきいた。

最初の信者はヤマさんである。家族のことは不詳だが、25年暮れから若者が親しく出入りするようになった。若者は道場ができる直前に大量の箱を注文した。夏なのに手袋をしてた。京極堂が慌てて青木に連絡した。不審がる関口と榎木津にせめられて話しをはじめた。武蔵小金井の駅の加菜子の事故、美馬坂近代医学研究所のこと、誘拐予告状のこと、その後の加菜子誘拐事件のこと、木場の謹慎、誘拐後の頼子の心境変化のこと、警察内部の動きのこと、巷の不気味な噂のこと、里村のバラバラ事件犯人の切断意図のこと、福本巡査の女子学生調査のこと、木場と陽子の対話のことだった。そこにやってきた青木に頼子の保護を依頼した。

京極堂は、今回のことを加菜子関連の三つの事件と武蔵野連続バラバラ殺人事件にわけた。前の三つの真相はわかった。最後のは事件の拡大防止に努力すべきといった。

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9月28日、木場の回想である。27日、池袋の騎兵隊映画社の川島新造から美波絹子と柴田弘弥のこときいた。美馬坂についてはフランケンシュタインをつくる研究を軍の援助のもとやってたといった。回想しつつ美馬坂への敵愾心をもやした。

同日早朝、京極堂、関口、榎木津が三鷹の御筥様をたずねた。京極堂が魍魎がここにあふれていると兵衛をおどした。おびえる兵衛の憑き物をおとした。さらに背後にいる人物が危険にひんしている。すくわねばならないと、さとした。その時、兵衛の妻サトと子どもの不幸な身の上があきらかとなった。

刑事の青木と木下が国分寺の久保宅にいった。久保は青木を倒して逃走した。

10,11

10月1日、木場が警視庁にいって大島捜査一課課長の許可を得て美馬坂近代医学研究所の捜査にあたることとなった。京極堂、関口、榎木津、鳥口は木場の暴走を心配しながら、研究所にむかった。加菜子関連の事件、武蔵野連続バラバラ殺人事件はからみあいながら研究所において大団円をむかえる。そこで、陽子と美馬坂、京極堂と美馬坂の関係があきらかとなる。久保の運命もあかされる。

おことわり

京極作品を未読の皆さん、どうかここを不用意にのぞいて将来の読書の喜びを損なわないよう、よろしくお願いする。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/09/08
  • メディア: 文庫


再度の警告。本文にはいわば「ネタバレ」が溢れている。未読の方には勧められない。では本文である。




謎解き京極、魍魎の匣その3

8

九月二十七日、中野の京極堂である。関口が訪問すると京極堂が座卓を睨んで座っていた。ずっとこのままの姿勢だそうだ。京極堂で集まる予定にしていたのが今日だった。青木刑事が来るそうである。やっと気がついて京極堂が関口に話しかける。久保の小説のゲラを読んだ。読後感は悪い。関口の短編集の各編の並びについて書かれた内容の時期の順序にそって、幼少期から今に至る順序に並べるのがよいという。次のとおりである。

大正から昭和初期、幼少期 「蒼ざめたものを持って」
昭和七年前後、少年期 「温泉郷の老爺」
昭和十四年、青年期 「E、B、Hの肖像」
昭和十五年、学生時代 「嗤フ教師」
昭和十七年、戦時中 「イデオロギヰの馬」
昭和二十年、終戦 「天女転生」
昭和二十二年、戦後 「舞踏仙境」
昭和二十七年、現在 「目眩」

京極堂は関口が出した信者名簿を睨んでまた沈黙に入った。榎木津、鳥口が登場したので話しをはじめた。関口が君枝訪問について話した。京極堂が榎木津の作戦が見事に成功したと褒めた。君枝はそれにより自殺を思い止まり、頼子を探しに出たという。京極堂が頼子に何を見たのか榎木津にきく。靤と久保という。靤のありかはどこかという。項というより背中に近い場所だった。鳥口に報告を求めた。

最初の信者は雛人形の飾り物の塗りをやっている職人通称ヤマさんである。ヤマさんは自分の不注意で子どもに怪我させた。それが原因で夫婦仲が壊れ女房が家を出た。ずいぶん落ち込んでいたヤマさんを兵衛が励まして元気にさせたという。兵衛はあんたの不幸をこの箱の中に封じてやる。もう気にせずやり直せといった。時期は兵衛が道場を作る前、福来博士の魍魎の箱が見つかった時より後である。兵衛の家族はよく解らない。箱屋の常連に二十歳前後の若者がいる。一昨年の暮れころから見かけるようになり、週に一、二度来る。工場の隅にいたり、奥の住居部分に入って行くのを見たという。家族かもしれない。この常連は道場ができる直前の去年の夏に大量の箱を注文した。夏なのに手袋をしていたという。榎木津が昨日の男も手袋をしていたといった。京極堂が久保は手袋をしているのかと確認した。そのとおりというと京極堂が大変だと慌てた。青木に連絡するといった。電話から戻って来て、こちらに向っているという。

関口がじれ、榎木津が囃し立てて京極堂が話しはじめた。木場の話しとして、武蔵小金井駅の加菜子の事件、美馬坂近代医学研究所のこと、誘拐予告状のこと、加菜子の誘拐事件、拘留、謹慎を話した。つづいて、頼子の加菜子誘拐後の心境の変化、青木の情報による警察内部の動き、巷の不気味な噂、里村のバラバラ殺人事件の切断についての見解、福本巡査がきいた女子生徒の話し、木場と陽子との対話と話した。関口は京極堂がまだ隠していると不満をいう。京極堂はそれはこの際は無関係だといい、沈黙に入った。やって来た青木に頼子を直ちに保護するよう手配してくれと頼んだ。

京極堂が関口をとおして警察に情報、信者の名簿を流すこととしていたが、いわば組織外の人間、謹慎中の木場に渡ったのであらためて青木に連絡をしたという。青木は京極堂の心配を承知して木場から京極堂に連絡があったかときく。ないという。榎木津が木場の暴走は自分しか抑えられないという。京極堂が真相を明きらかにすることで犯罪者といえない人まで傷つけかねないと躊躇していたが、ついに諦めたように話しはじめる。事件は次の四つがある。

1) 武蔵小金井駅での加菜子殺害未遂事件
2) 加菜子誘拐未遂事件
3) 須崎太郎殺害及び加菜子誘拐事件
4) 連続バラバラ殺人事件

4)が現在進行中の事件であり、その拡大防止を図るべきである。これは里村医師の意見を尊重するなら傷害致死というべきもの。その他は終ったものだ。1)から3)までの犯人は解っていた。それは京極堂しか知らない事実が役に立った。4)は今、見当がついた。それは誰だと榎木津がきく。たぶん久保だといった。青木が理由をきかせてほしいという。京極堂がバラバラ死体遺棄事件と御筥様は関係が深い。清野は信者名簿に御筥様の喜捨額が少ないと殺害の危険が高いと記しているが、これはこじつけに近い。三人の被害者の家族を捜査した警察によりこんな関係がないことが判明している。鳥口が無駄だったのかという。京極堂が無駄ではなかったといって話しをつづける。

兵衛は創られた霊能者である。創ったのは久保だ。名簿の話しとなる。これは名簿でなく住所録であるという。六月から七月までに使っていたものを清野が盗み出した。それを綴じ直し、喜捨額を付記する欄を付け加えたものだ。住所録だから、信者だけでなく、関係者も含まれる。喜捨のないものはこれに該当するだろう。そこには吉村義助、隣家の風呂屋、二階堂寿美、御筥様の事務員が含まれている。関口が名簿にある久保竣公はどんな関係があるかときく。

京極堂が久保の新人賞受賞作の「蒐集者の庭」を読めば解るという。この主人公は伊勢神宮の神官である。他人の懊悩を蒐集するのを生き甲斐にしている。これを石塔に封じこめて夜な夜な石塔に耳をあてて悩み苦しむ声をきくのを楽しみにしている。その話しをききつけた修験者、九州の英彦山で修行した山伏が登場する。これは世のためにならないと対決する。神官は石塔に化し、山伏は暗黒の虜となって庭を引き継ぐという筋である。掲載された雑誌の解説によれば、久保は幼少期を福岡の佐井川上流で過ごし、青年期は伊勢神宮の外宮のすぐそばで暮らした。佐井川上流あたりは山岳宗教の盛んなところである。これらの宗教体験がこの作品に反映しているという。築上と伊勢の関係がここに登場している。話しがつづく。

京極堂が先代旧事紀にある呪文と鳥口が録音したものとを比較する。録音はほとんど先代旧事紀を模したものである。そこには「一二三四五六七八九十」と記された部分がある。これをどう読むかは神道の各流派により異なる。録音のように「ソテナテイリサニ云々」と読むのは伊勢神宮である。さらに録音に「深秘の御筥」と読めるとこがある。佐井川上流の築上に求菩提山(くぼてさん)という山がある。これは英彦山の北東に所在する。その山に鬼神殿と呼ばれる神社がある。求菩提山を開いた猛覚魔卜仙という行者は鬼神殿に彼が退治した鬼を祀った。このご神体は箱である。その箱は厳重に封がされ、中には壷が入っている。その壷に鬼が封じこめられている。この箱を深秘の御筥と呼ぶ。そのハコは竹冠の筥と書く。築上や伊勢に縁のない、いい方は悪いが無学な兵衛にこのような呪文が創れるはずがない。久保が黒幕という理由である。あやしがな男がしている手袋の話しとなる。

久保は手袋をしている。バラバラ殺人事件の被害者二人は手袋をした男といっしょにいた。兵衛のところに出入りした男も手袋をしていた。小金井の喫茶店新世界に久保がいた。頼子は頻繁に小金井の喫茶店に出入りしている。榎木津は頼子に久保を見た。頼子に危険が迫っているという。関口が何故次は頼子なのかとたずねる。名簿は五十音順に登載される。その順だという。柿崎の次が楠本である。青木が浅野春子は二番めの犠牲者だというと、それは一番めである。相模湖の遺体はこの事件とは無関係であるという。脚は鉄製の箱に入っていたが、手は剥き出しだった。また腰の部分もある。他は腕と脚だけで、桐の木箱に入っていた。相模湖は湖に投棄されていた。他は隙間に嵌めこまれていた。運搬に相模湖はトラックだが、他は電車と思われる。似てはいるが明きらかに違う。相模湖の説明がつづく。

腕は国道の上に落ちていた。これはたまたま落ちたのだ。もともとは腕、腰、脚の三つをそれぞれ鉄製の箱に納めて湖に沈めるつもりだったのが、腕だけトラックから落ちたという。青木は左腕は持ち帰ったのかときく。京極堂がトラックの荷台の鍵が壊れていたからとあっさりという。あらためてこれは別の事件だという。バラバラ事件のためには大量に箱が必要となる。鳥口が箱を大量に注文したのが久保とすると納得できるという。榎木津が久保は加菜子を見ていた。加菜子と関係があるはずという。京極堂は当面その話しには触れないこととするという。久保の作品の話しとなる。

京極堂が関口に蒐集者の庭の感想をきく。その真意を測りかねている関口に久保の新作のゲラを示し、久保の作品はほとんど日記である。久保は幻想文学と称されているが、本人にとっては幻想の世界が現実の世界だという。なぜ二十歳そこそこの人間が兵衛にそれだけの影響力を持ち得たのかといいつつ、いたずらに空想をたくましくするのは止めるという。久保が黒幕としてなぜ御筥様を創ったのか、それは蒐集者の庭の主人公の気持だろうと自分で答える。バラバラ殺人の動機はといいつつ、「匣の中の娘」を引いて、たぶん後編の中に娘の死体をバラバラにして箱に詰めるというくだりが出てくるだろうという。関口は京極堂の主張にいつもの明快さがないのに不審を抱く。青木は久保犯人説に動かされて京極堂に考えをきく。京極堂は最初の事件が九月六日に発生した。前編は原稿依頼から五日めに完成したとする。するとこれは犯行に至るまでの経緯といえるという。まだつづく。

京極堂がこの主人公は空間恐怖症なのかとたずねる。閉所愛好症かもしれないというと、この性格は突飛なようで実在感がある。久保自身ではないか。関口がそれに異論を唱えると、この小説には変なところがある。「彼は」とか、「君は」とか、「私が」という人称代名詞がない。これは久保自身を必死に隠そうとしているためではないかという。関口は京極堂が明確な証拠を持っていてこのようなあいまいな結論を匂わせていると感じた。京極堂がこれでいえることはいった。あとは警察にまかせるという。容疑者の話しがつづく。

青木に陽子の黒衣の男を見たという証言が撤回されたこと知らせる。青木が頼子の証言の男は誰かときく。京極堂がそれは自分だという。驚く青木に近代文藝に掲載された関口の目眩を見せる。そこで最後に登場し、主人公を始末する殺し屋が登場する。それは京極堂をモデルとした手袋を嵌めた黒衣の男だった。頼子は加菜子におくれを取るまいと大人が読む文芸雑誌を読んだが、面白くなかった。しかしそのうちでは関口が書くような幻想的なものはちょっと好きだった。八月三十一日、喫茶店新世界で購入した文芸雑誌を読んだ。そのとき読んだのが関口の目眩だったという。信じられないという関口に、天人五衰、屍解仙、羽化登仙という言葉を頼子が知っていたことを傍証にあげる。それは天女転生、舞踏仙境に使われている。何故という青木の問いに、加菜子を突き落したのは頼子だといった。一同はしばらく言葉を失なう。青木は現場に二人しかいなかったから当然の帰結ではあるが、警察が自殺と断定したのは頼子が現場から逃走せず、よく喋った。さらに動機がなかったからという。京極堂が動機は世間を納得させるために用意されるという持論を展開する。京極堂の話しがつづく。

納得できる動機がなければ、精神病、神経症のせいにする。犯罪は個人の問題だとする考えを批判する。しかし遺伝的低格性、生来性犯罪説も問題がある。血液型で性格判断をする学説を批判する。犯罪は社会が作るという考えを仇討ちがかって合法的だったことを例にとって説明する。犯罪は社会や経済の状態の関数に過ぎないとい考えを紹介する。平均人を想定し犯罪者をそこから逸脱した人間ととらえる考えをあげ批判する。最後に犯罪は通り物、通り魔という妖怪だという。頼子はこの通り物に当たったのだという。頼子の殺人の話しがつづく。

京極堂が頼子に加菜子を突き落す千載一遇の機会が訪れた。頼子は加菜子の側に立っていた。そこに列車が近づいて来た。その瞬間に通り物に当たったのだという。頼子は加菜子の項というより背中に近いところにある靤を見た。よほど加菜子に近づいていなければ、のぞけない場所である。頼子は加菜子を突き飛ばした反動で後に飛ばされて電柱のあたりで尻餅をついたという。頼子はどうやら強度の阿闍世コンプレックスである。それは愛するが故に母親を殺そうとする欲望の傾向である。思春期に両親の性行為を目撃することにより発露することが多いという。さらに説明がつづく。関口は頼子という少女の心の闇をのぞくことが辛くなってきた。久保の蒐集者の庭の神官にはなれないと思った。さらに話しがつづくが、最後に京極堂が頼子は通り物に当たったのだといった。青木がなぜ半月後にこの証言が出たのかときく。

保身のためである。頼子は自分が犯人と暴露されることが怖ろしかった。そこで黒衣の男を犯人に仕立てあげることを思いついた。それで安心を得た。加菜子誘拐事件である。加菜子が助かれば社会的には殺人未遂の罪を負い、加菜子が死ねば内面的には殺人者となる。しかし誘拐により加菜子は消えてしまった。だから社会的にも内面的にも罪の意識に苦しむことはなくなったと感じた。そこで黒衣の男の役割は終った。今は堂々と第二の加菜子を演じているらしいという。青木が頼子をどうすればよいのかきく。

京極堂が裁くのは法律だ。まず頼子を保護しきちんと事情をただす。必要な処置をするだけだ。関口はここに大いなる虚脱感を感じた。頼子はともかく君枝の悲しみは明きらかである。後味が悪いという意味が解った。久保にしても三人を殺害している凶悪犯とは思えない。青木が久保の捜査に乗り出す決意を見せた。京極堂が家宅捜査を勧めた。おそらく家には残りの遺体部分があるだろうという。青木が立ち去った。榎木津がもう警官がいない。隠し事をしないで話しをしろという。

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九月二十八日である。木場は昨日、池袋にある騎兵隊映画社の川島新造に会った。木場の戦前からの友人である。その日は京極堂と会う約束があったのに守らなかった。木場が美波絹子や柴田弘弥についてきく。絹子は誰かに強請られていた。それが引退の理由らしい。背の低い頭のでかい男だった。絹子の人柄はよかったが、演技は下手だった。弘弥はいわゆる谷町として有名だった。派手に金をばらまく癖に女遊びはからきし駄目だった。驚いたことに美馬坂についても知っていた。映画フランケンシュタインの怪物を創る科学者らしい。軍の援助で研究を行なっていたという。木場は腕や脚をバラバラにした屍体からつなぎ合わせて兵隊を創る光景を想像している。

二十七日の京極堂に戻る。青木が腕が武蔵境の民家の生け垣に埋めこまれていたという。京極堂は久保の身柄を一刻も早く確保するよう頼んだ。そして兵衛に喋らせる。御亀様の登場だといった。明日、朝五時、信者が来る前に訪れることとした。車で関口、京極堂、榎木津、鳥口が三鷹に向う。京極堂が女事務員二階堂に案内を乞う。中野で憑き物おとしをやっている者と紹介し、関口に魍魎が取り憑いたという。奥から兵衛が出て来る。京極堂が魍魎のような厄介なものを祓うというありがたい教主にお願いしたい。御筥様のあらたかな霊力にすがりたいという。気おされた兵衛について祭壇の間に入った。兵衛は祭壇前の円座、関口はその前の円座で対面し、二階堂は斜め後に座る。伺いましょうという兵衛にとまどう関口、京極堂が突然入ってきて、亀山君、ここは危険だ。命が危ないといって退室を促す。さらに二階堂にも危険だといって警告する。兵衛が苛立ってどうしたのかという。京極堂が兵衛がわざと魍魎をこの部屋に放っている。魍魎がここに充満しているという。御筥様に近寄る。二階堂に再度警告し、その父親にも危険が及ぶと警告する。御筥様の出来を褒める。二階堂が父に危険とは何かときく。兵衛にここにいて平気かときく。他人の不幸をこれだけ集めて大丈夫か。ひとりで背負い込んで平気かという。魍魎は筥に入っていない。あらゆる穢れ災厄がこの部屋に充満しているという。京極堂が兵衛の命が危ない。息子の命も危ないといって、驚くふたりを置いて部屋を出た。榎木津は入り口で兵衛を凝視していた。二階堂が玄関に向う途中の京極堂を呼び止める。

兵衛が一回り小さくなって座っていた。この部屋にそんな悪いものが充満しているのか。自分にはそれが見えないという。京極堂が箱の場所が悪いという。鬼門は丑寅の方角だが、魍魎は鬼ではない。方角が違う。魍魎は方良、つまり四方にいる。魍魎退治の専門家、中国の方相氏は墓穴に湧く魍魎を四方を鉾で撃って退治した。壮大な蘊蓄が披露される。七世紀の末に日本に伝来し、宮中で大晦日に行われる追儺の儀式となった。この儀式は社寺でも行われ、近世には広く民間にも流布した。これが節分といわれる。節分は年四回あるが特に立春の前夜は陰と陽が対立して邪気が生じ災禍をもたらすと考えられた。その邪気を祓う意味で追儺が行われた。追儺が豆まきに変貌するころに魍魎は時代遅れとなって鬼が登場した。陰陽道の話しがつづく。

鬼の誕生に一役買ったのが陰陽師である。陰陽五行の思想を中核とする陰陽道は奈良時代の後期に完成したという。時の権力者吉備真備がそれまで呪禁師などを統率していた典薬寮を廃止して、彼らが使っていた方術に陰陽道を習合させた。平安時代に陰陽道が見事に開花する。陰陽道祭祀の決定版といわれる四角四堺祭が成立する。そこで祓うのは鬼である。反閇(へんばい)という足踏みによるお祓いを演じて見せた。陰陽師はそれまで祓い流していた穢れを一身に引き受けた。それは兵衛のやり方と同じといえる。彼らは穢れそのものとなった。陰陽道が中央を追われたとき彼らは鬼となった。方相氏は鬼を祓うものだったが、いつの間にか追われる鬼となった。話しがさらにつづく。

もともと鬼でなかったモノが鬼となった例がある。兵衛のような祝詞をあげて舞い踊る民俗芸能の鬼、榊鬼である。この鬼は反閇を踏み五方、東西南北と中央を踏み鎭める。さらに西国の荒平(あらひら)という鬼は昔の方相氏の所作を残している。これらの鬼が鎭め祓うもののなかに罔象女がある。これが魍魎である。その方角は北にある。この箱はここに置かねばならないという。さらに難解な説明がつづく。魍魎は得体の知れないもの。簡単に口にしてはならないものという。さらに一から十までを数える十種(とくさ)の祓えの話しがつづく。

これは十種類の神宝を揺らして生命力を呼び起こす呪文である。五方を祓い鎭めるという榊鬼が生命力を呼び起こすというのはある意味で自己矛盾である。どうもこの呪文を考えた人物に誤解があるようだ。ただし、この読み方を取る伊勢神宮には罔象女、魍魎が祀られている。見当はずれというわけではない。魍魎に效かないことはないが向かない。兵衛について話す。

兵衛は特殊な霊力を持つわけではない。そのことを認めている正直な人だ。教えも道徳規範に沿った模範的なものだ。法外な祈祷料を要求するわけでもない。信者からの喜捨もそこに並んでいる箱に納めて手をつけていないようだ。しかし魍魎という得体の知れないものを相手にするのは力足らずだ。福来博士の魍魎の壷に出会った偶然を天啓と感じたのは誤解に過ぎない。福来博士が魍魎という文字を採用したのはたぶん字画が多かったからだ。御筥様の呪文や仕組みを創った人物はたいへん頭がよい。しかし呪術を甘く見ている。信者が何百人も集まり、救われる人が出てきた。ここには魍魎や穢れが充満して非常に危険な状態である。京極堂が本当のご神体はこれだといって、鋼の箱を取り上げた。この中に彼の指が入っているといった。兵衛も二階堂も呆然とする。

京極堂が兵衛がこのままつづけていると兵衛の命はあと半年だ。また本当の御筥様の命も危ない。兵衛が救われる方法はただひとつ。喜捨の金を浄化されたといってすべて信者に戻す。それで魍魎はただの不幸となって兵衛のもとを去る。いや希望という形となって信者のもとに帰るという。京極堂が二階堂の使い込みを指摘する。はじめ信者となって通い、やがて手伝わせてくれといって、情報収集役となった。兵衛が喜捨の金に興味がないのをいいことに、その一部を自分のものにしたという。関口が信者名簿が二階堂が作成した二重帳簿だったと納得する。京極堂が兵衛の息子、本当の御筥様は久保竣公だといい、兵衛がその息子を救わねばならないといった。

国分寺である。久保の家の前に青木がいる。昨夜からのことを回想する。腕は君枝からきいた特徴から頼子であるとほぼ断定された。さらに京極堂がいうように手首には縁の紐が結ばれていた。その後緊急捜査会議が開かれ青木が久保犯行説を説明した。大島課長の決断により久保の捜査に踏み切った。久保の写真は稀譚社近代文藝編集部の編集員小泉から入手した。そこにいた敦子から不思議な噂をきいた。武蔵野連続バラバラ殺人事件にたいし、どのような噂が伝播してゆくかをテーマに遺体発見現場付近で取材をした。すると箱を抱えた礼服の幽霊の噂が取材できた。その箱は掛け軸を入れる帙(ちつ)のような桐の箱である。敦子はそれが久保に似ていると感じた。明日発売の近代文藝で久保著作の「匣の中の娘」が発表されるのを知ったので担当の小泉のところに来た。それでやっぱり久保であると感じたという。青木が相模湖にも同じ噂があるかときくと、ないという。

久保の家はガレージを改造したような建物だった。シャッターの横の扉を叩く。鍵がかかっていなかった。中にある階段で二階に上がる。戸を叩く。久保がいた。これから外出するという。強引に中に入った。寺田木工製作所から購入した箱を見せてほしいといった。見せる必要はないと抵抗した。ついに青木がバラバラ殺人事件の容疑者と指摘した。突然ぶつかって来た。倒れた青木を何度も蹴った。青木は刑事の木下を呼びながら失神した。

兵衛のところから戻った京極堂一同である。関口は今朝を回想しながら京極堂に種明しを求める。京極堂が二階堂の母親に電話をした。愚痴をたくさんきかされた。男運が悪く独身、金遣いも荒く派手好きだ。父親は酒浸りである。兵衛は白内障で失明の危険がある。関口は兵衛の話しを回想する。

兵衛は昭和六年、サトと結婚。翌年、竣公が生まれた。前年には母が死亡。祖父忠も竣公誕生の翌年に死亡した。サトは神経の病を持っていた。忠が生きていたころはおおらかなその性格のお蔭で波風が立たないですんでいた。葬儀のあと、サトが子どもの面倒をみなくなった。一日何もしない。兵衛は普通の人間と会話するのもままならない人間だった。結婚生活がどんなものかという考えもないまま結婚した。妻の気持が解らなかった。相談する親戚も知人もいなかった。世間体をはばかり、自分で何とかしようとした。半年ほど頑張った。サトはいっこうに回復しなかった。奥の間にずっと閉じ籠っていた。鬱病のようだった。兵衛は金があれば何とかなると思った。借金して機械を購入、鉄製箱の製作をはじめた。その頃から兵衛は箱に取り憑かれた。サトや子どもが煩わしくなった。兵衛は食事を作る以外のふたりの世話を止めてしまった。風呂も入らず愛情も注がれることなく、ほとんどほったらかしで竣公は育った。母とふたりで座敷にじっとしている子どもになった。それは兵衛にとって好都合だった。竣公が五歳になったころ、どういうわけかサトが回復しはじめた。人間の感情を取り戻したサトは兵衛にはかえって扱いにくいものとなった。兵衛の方が人間としての感情を失ってしまっていた。話しがつづく。

サトは、竣公の赤ん坊のとき、幼児のとき、今までやることのできなかった世話を取り戻そうとするかのように世話をした。しかし既に五歳となった竣公は受け付けなかった。サトはその原因を兵衛に求めた。喜怒哀楽の感情を持たず、ひと言も口を利かない化け物のような子どもを育てたのは兵衛だといって非難した。竣公はやがて小学校に入学した。兵衛が兵隊に召集された。戦場で死ぬような目に会った。そこで人間らし心を取り戻したという。帰ったら家族らしい暮らしをしようと思った。復員した。

帰った家には誰もいなかった。箱だけが残されていた。奥の間の畳の中央に黒い染みがあった。その上に鉄の箱が置いてあった。中に干からびた指が四本入っていた。誰も事情を知らなかった。兵衛は再び箱作りに没頭した。昭和二十五年十一月竣公が現われた。背筋が震えるほど怖かったという。僕があなたの息子です。僕の指を返してくださいといった。ここから竣公の話しである。

出征後再びサトは発症した。鬱状態のときは世話をしないばかりか食事もしない。そうでないときは竣公を溺愛した。サトは九州の山中で首を縊って死んだという。箱が怖かった。箱から逃げ出したという。竣公はあんたたち夫婦は空っぽだった。中身が何もないといって、箱を作ってくれといった。竣公の話しがつづく。サトは家中の箱を壊した。そして九州築上求菩提山に逃げた。その裏鬼門に当たる犬ヶ岳山中で力尽きて縊死した。竣公はそこの修験者に保護され、その氏子である老婦人に引き取られた。婦人は元教員、教養は高く厳格だったが愛情豊かだった。ここで人間らしい生活がはじまった。戦争が終った。病がちだった婦人が親戚のもとに身を寄せることとなり、竣公もついて伊勢に行った。昭和二十五年九月婦人が亡くなった。婦人は財産を狙う親戚の目を盗んで竣公を養子としていた。竣公は婦人の全財産を相続した。

その後、竣公は毎日やって来た。竣公は自分は不幸か、兵衛は幸福かと繰り返しきいた。そして箱を作ってくれといった。そのうち兵衛のところに住みついた。兵衛は天井裏に隠した竣公の指を見せた。大晦日、風呂屋がやって来た。福来博士の魍魎の箱を得た。兵衛は祖母のころから自分の運命がここに入っていたと思った。思ったら気が楽になった。そして鳥口がいっていた職人のヤマさんが登場する。一生のうちでこんなに喋ったことがないほど喋った。ヤマさんが泣き出し礼をいって帰って行った。それをきいていた竣公が、世の中には不幸の人がいる。自分とどちらが不幸か。世の中にはどれほどの不幸があるのか。世の中は満されていないのか。不幸で満されているのか。お父さんときいた。兵衛は答えなかった。すると突然凶暴となり、あんな馬鹿な男を慰めたのにどうして自分を満してくれないのかといって散々兵衛を殴った。兵衛は竣公のいいなりになり、御筥様が生まれた。京極堂のところに戻る。

関口がどうして御筥様を創ったのか、もうひとつ解らないというと、京極堂が「蒐集者の庭」の神官が竣公、修験者が兵衛で、あのやりとりの中に出て来るという。竣公は実際のやりとりを小説に書いた。ふたりの間に問答があったとして、それが一月、その後、家を出て本朝幻想文学賞の締切が三月末、道場の完成が八月末。受賞の発表が十月末と時期的に合っている。京極堂が内容を分析して照応しているところを説明する。鳥口がよく兵衛が警察に行く気になったという。京極堂が久保の命も危険だと繰り返す。関口がやはりバラバラ殺人の動機が不審だ。久保の不幸をいちいちあげて動機につなげようとする。突然、京極堂が悲惨な経験をした人間がすべて犯罪者となるわけではない。そのような決め付け方は不当だと怒る。久保はたまたまそれと出会ったのだという。それは何かという関口の問いに京極堂が魍魎とあいまいに答える。榎木津が京極堂がまだ何かを隠しているという。刑事の木下から電話がある。

青木が入院している病床である。見舞いの大島課長から木下も久保に殴られたが大事ない旨説明を受ける。青木が回想する。意識が戻って本部に連絡した。二階の部屋に戻る。机に気がつく。その下の床は血だらけ、卓上に原稿用紙の束である。概要は次のとおりである。

「原稿を書き直す時間はない。最後はこの女だったのは偶然でない。その医者が知っているなら会わねばならない。今すぐ出かけよう。あの娘を」

階下に降りる。壁面がすべて箱で埋まっていた。棺桶ほどの大きさの箱がその前にあった。その横に小さい箱が四つあった。一番右を開けた。そこには四肢を切断された頼子が詰っていた。

九月二十九日である。木場が頼子殺害を報じる新聞を見ている。怒りに震えながら、謹慎処分が解ける二日後に決着をつけると自分にいいきかせる。

十月一日、中野の関口宅である。関口が新聞報道を読んでいる。久保は犯人と断定され全国に指名手配された。突然、鳥口が飛び込んできた。久保のバラバラ遺体が発見されたという。

10

十月一日、警視庁である。木場が大島課長のところに出頭し、詫びるとともにバラバラ殺人事件の捜査に当たることと、拳銃携行の許可を得た。木場は一昨日の午後から今朝まで美馬坂近代医学研究所を見張っていた。相変らず重低音が響き、特別な動きはなかった。ただ昨日、奴は一度だけ買い出しに出た。その時かと回想する。

淀橋の病院である。青木の病床に、京極堂、関口、鳥口がいる。青木が町田で両腕と両脚が出た。捜査一課は大混乱だという。京極堂が関口と鳥口に美馬坂近代医学研究所に行くよう頼む。連絡のため部屋を出る。そのとき、馬鹿め、やり過ぎだといった。関口は鳥口の報せを京極堂に連絡し、ここ淀橋の病院に駆けつけたのだった。京極堂が榎木津の自動車が到着したら乗り込み出発するよう指示する。自分はあとより追って研究所に行くという。榎木津が登場した。自動車の中で木場が暴走しそうだと京極堂からきいたので急ぐという。小金井の陽子の家に着いた。木場の急を報せて研究所に向う。

木場が出て来た甲田の制止を振り切って二階の所長室に行った。美馬坂はいなかった。さらに上に登った。加菜子がいた場所にいった。木場が美馬坂に声をかけた。加菜子をどこにやったのかときく。八月三十一日の面会は陽子の独断で行なわれた。美馬坂は知らなかったことを確認した。二十八日加菜子は重大な手術をした。それ以降は面会謝絶となった。これで誘拐の時間とその発見の時間を美馬坂の都合に合わせて設定できることとなった。しかし予期せぬ面会により計画が狂ってしまった。結果としてまるで加菜子が消滅したような外観を呈したと木場がいう。美馬坂が発見したのは須崎だというと、須崎は死んだという。美馬坂がでは生きていると不都合と須崎を殺害したというのかと反論する。やりとりがつづく。

木場が見張りをしていた焼却炉のあたりにたくさんの骨が埋められている。小さな獣ではないというと、それは猿だという。木場は人間を材料にして人造人間を造る研究をしていたという。否定する美馬坂に加菜子や他の娘たちはどの部分を使ったのかという。美馬坂は生体間の移植は人体がもつ免疫機能により現在の技術では不可能だ。馬鹿馬鹿しいと吐き捨てる。美馬坂はバラバラ殺人事件の犯人が新聞に報道されたはずだというと、犯人と思わていた男はこの近くでバラバラにされ発見されたという。それは昨日の夜だ。美馬坂が買い出しに出たのも昨日の午後だという。死体は全部出たわけではない。ひとりの人間を造るには十分な材料を確保できるという。昨日トラックで搬入した布包みは何かと問う。答えない。銃口が美馬坂に向けられた。

ポンコツの車はやっと美馬坂近代医学研究所に着いた。中に入ると甲田がうずくまっていた。四人は三階に向う。木場が拳銃を構えて美馬坂に対峙している。榎木津が美馬坂にやっと本物に会えた。誰もかれもが美馬坂の影を引きづっている。驚く美馬坂に、ある陰気な男がこの物語を終らせるために来る。それは美馬坂、陽子、木場の物語りであるという。京極堂が登場する。刑事の青木、弁護士の増岡、巡査の福本がいた。驚く美馬坂に魍魎退治に来たという。美馬坂の患者は犯罪者だ。警察に引き渡すようにいう。京極堂の話しがはじまる。

陽子が美馬坂近代医学研究所を知ったきっかけは女優美波絹子の時代にさかのぼる。弘弥との逃避行の後、柴田家からの援助で暮していた陽子はひょんなことから映画スターとなった。人気は急上昇しその顔が新聞雑誌に頻繁に登場した。陽子に気づいた須崎が陽子の秘密をもとに恐喝を働いた。京極堂がきく。須崎は帝大時代から美馬坂の片腕だった。それがこのような犯罪行為を働くことをどう思うか。美馬坂が科学者としての資質を評価している。関係ないという。京極堂はこれが美馬坂の人間性だといって、陽子に美馬坂から離れるべきだという。陽子をみつめていた関口が突然、陽子は美馬坂の娘だという。木場、増岡が驚きの声をあげる。京極堂が研究所時代、美馬坂から身の上話をきいた。そのとき見た封筒にあったという。恐喝者の須崎から陽子はこの研究所の住所、電話番号を知った。陽子が何により恐喝されたのか注目が集まった。京極堂が加菜子が弘弥の本当の子どもではないという。陽子はだから加菜子に相続させる気はなかった。我慢しきれなくなった増岡がそれは詐欺だという。京極堂が加菜子はたぶん亡くなっているという。柴田から金が入るあてがなくなったから、患者を警察に引き渡すよう美馬坂にいうが拒否される。誘拐事件の話しがつづく。

青木が誘拐の目的は柴田家の財産の詐取だった。あまりにも平凡な結論に驚く。京極堂が陽子は加菜子が鉄道の事件に巻きこまれなければ遺産相続を拒否しつづけただろうと擁護する。陽子が回想する。加菜子、雨宮がいる暮しに満足していた。それをつづけたかったという。弘弥とのことはそんな大それたことをしたつもりはなかった。弘弥の方からいい出したことだ。弘弥は耀弘を資本主義の亡者だといって、他人の子と承知のうえで、その子に柴田家を相続させようとした。陽子は捕まった後、弘弥からもらったお金で加菜子を産んだ。それでよかったのに、柴田側が許さなかったという。増岡がなぜ父親が弘弥でないといわなかったのかきくと、陽子は父親がほしかったという。木場ば怒りの声をあげる。陽子がすぐお金もほしかったと認める。木場は陽子が何度も自分は嘘つきといっていたことを思い出す。京極堂が美馬坂に追い詰めれている陽子を見て何もいうことがないのかときく。

美馬坂は自分を責める京極堂に難病に冒された母を陽子に押しつけたことを謝罪すればよいのかときく。自分に責任があると思うなら責めればよい。金を返せというなら、返そうかという。増岡が呆れながらできないことは、いわぬことだという。増岡が陽子に真実を告白するのも嘘をつくのももっと別の方法があっただろうというと、もう嘘をつきたくなかった。加菜子には何も知らせたくなかった。弘弥の子どもでないと認めるとこれまでの援助を返済せよといわれるのが怖かったという。増岡は陽子の不信に満ちた態度に不満を示した。木場が増岡の言葉は陽子に通じなかった。それだけだといった。話しはつづく。

陽子は加菜子にこのような事情を知らせないよう気を使った。しかし須崎が登場した。加菜子が真実を知ってしまった。それで家出を決意し、たぶん行き先を雨宮には告げていた。加菜子は駅に行き、そこで頼子に殺される。木場、増岡、福本が驚きの声をあげる。陽子は呆然としている。京極堂は加菜子はせいぜい相模湖に行くつもりだった。話しが変る。

加菜子は死んでもおかしくない大怪我だったが死ななかった。ここで美馬坂が登場する。京極堂がこれからは美馬坂から話すかときくと、それを拒否し、さらに自分は犯罪を犯していない。罪に問うことは無駄だという。電話を受けて加菜子を助けたいと思ったはずという。加菜子の身体はかなり傷んでいた。取り敢えず手術をはじめた。一応の成功だった。美馬坂の話しとなる。美馬坂は日本で一二を争う有能な科学者だ。学界からも評価されていた。決して異端の科学者ではない。転機は妻の筋無力症だった。妻の病気を治すため公務を一切放棄した。妻の容態は日増しに悪化し、その精神まで蝕みはじめた。かねてより研究していた生体間移植を発展させて治療することを考えた。独創的な発想で美馬坂は身体ごとそっくり取り替えることを考えた。機械の身体を造る。それが壊れたら取り替える。鳥口がそれが軍部が期待した研究か。できたのかときく。できたようだという。人工臓器という考えは別に新しいものではない。人工腎臓、人工肝臓を考えている学者も多いが、ここまで徹底していない。人工の目や鼻という代用受容器官を除いて完成したようだという。オランウータンやゴリラを使った動物実験が必要となる。この動物の入手は須崎がやっていた。美馬坂が木場に動物実験だという。木場の疑問に答えるように話しがつづく。

すぐ死ぬかもしれない病人、怪我人だが、相続や経済的利害などの事情から短期間延命してほしいと関係者、遺族が希望する場合がある。美馬坂近代医学研究所は今やそのような要求に答える場所になった。短期間とはいえ、これには莫大な維持費がかかる。かっては軍部などからの援助があったがなくなった。だから大金をとってこの延命装置を運転している。美馬坂はそれを認めつつ犯罪性はないという。加菜子の話しに戻る。美馬坂は加菜子の命を助けることだけを考え、この建物を動かしてしまった。陽子はただ生命活動が維持されるだけだということを知らなかった。治療や回復の見込みがないことに気がつかなかった。なのにその維持に莫大な金が必要となる。陽子は美馬坂に遺産相続の話しをした。これが実現すれば大問題が解消する。ところが耀弘の病状が持ち直した。追い詰められた陽子は狂言誘拐を思いつく。その現場に偶然遭遇した木場が警察に屆け、事件となった。陽子は美馬坂からこの機械は八月三十一日までといわれていた。陽子がここで稚拙な予告状作りの説明をする。須崎の企みに話しが移る。美馬坂、雨宮を巻き込んだ加菜子誘拐未遂事件である。京極堂の話しがつづく。

須崎は詐欺師の資質があった。須崎の計画は巨額の金が得られる。ひどい計画だったがそれに美馬坂も陽子も心を動かされたと非難する。増岡はたしか一千万円ときいているが巨額というほどではないという。京極堂は須崎の計画は加菜子が死んでしまうことを前提にした財産の詐取であるという。増岡がそれをきき、八月三十一日に加菜子が死亡する。その前にその生死を不明にするために誘拐する。それを利用して耀弘の遺産を相続しようする。なるほどそれは可能かもしれないが、耀弘が死ななかった場合とか、行方不明が長期化すれば死亡と見做されるとか、陽子を代理人と認定しないとか、実現するかどうかあやしい計画だという。京極堂がそれを認めつつ、計画がうまくゆけば定期的に加菜子が生存している証拠となる脅迫状が屆くはずだったという。増岡は納得しないが話しがつづく。

須崎が予告状騒ぎがあった二十五日に話しを持って来たのかと陽子に確認する。陽子は須崎が加菜子を生かす方法があるといってきたという。これが真実かどうかは解らないという。美馬坂が須崎は独自の生命維持法を研究していた。しかしその成功率は低い。しかしコストは安いといった。鳥口が偽装誘拐のトリックを何かときく。京極堂は特別なトリックはないという。最初の手術の様子を木場に確かめて、大動脈弓と胸の動脈の吻合をしたという。これは生命維持装置の燃料消費を抑えるため、無事だった心臓と肺臓を生かしたこと、人工心肺は使用しなかったことを意味するという。京極堂がここで美馬坂の壮大な生命維持装置について語りはじめる。

この建物自体が美馬坂の創っ人間である。関口、鳥口などが腰掛けているのは腎臓、肺臓、脾臓、膵臓だという。人間の臓器を機械に置き替えるとちょうどこれぐらいの三階建建物となるという。加菜子は八月十五日にここに来てすぐ、心臓と肺臓を除くすべての臓器を摘出された。木場や福本が見た加菜子はいわば残骸だ。本体はこの箱だ。誘拐事件の起きる前、再び行われた手術は、胸椎を除いた脊椎と骨盤の除去、四肢の切断だったという。美馬坂が生命を維持するためにはしようがなかった。正当な医療行為だという。唖然とする一同に京極堂が陽子の気持も考えるとこれもやむ得ないかもしれないという。青木がなぜ切断した手足を投棄したのかときく。京極堂の話しがつづく。

投棄していない。右腕は事故で落ちたところを発見された。左腕は脅迫のとき生存を示す証拠に利用するため保存した。須崎が身体の一部だけを生存させる装置を完成させていた。生存された左腕を利用して生存の証拠とできるという。美馬坂がいう。須崎は一ヶ月くらいなら生かしておける。それで資金を用意できたら、元に戻せばよいといった。賛成はしなかった。自分が捨てた手足を利用した。自分は関知していないといった。青木の疑問に罪悪感はないという。京極堂がそれが魍魎だという。鳥口が事故とは何かときく。京極堂が雨宮が腕や脚を水葬しようとしたのだという。雨宮は家出で相模湖に行こうとした加菜子の気持を汲んだのだという。陽子が偽装誘拐について話す。

陽子は八月二十三日やって来た増岡から耀弘が回復したときいて絶望的な気持となり、偽装誘拐を決意した。それを雨宮に話したら賛成してくれた。しかし加菜子の現状を知らなかった。翌日、雨宮に話しをした。雨宮は衝撃を受け計画に反対した。陽子は途方にくれて誘拐予告状の作成をはじめた。雨宮は警察が来たときに陽子を庇って嘘の証言をした。その後須崎がやって来て計画を持ちかけた。雨宮は反対だった。加菜子が可哀想だといった。手足を切断することで二日命が延びる。雨宮はこのままの姿で死なせてやりたいといった。須崎は大きな箱から小さな箱に移す。お金が手に入ればまた元通りにするといいくるめて雨宮を納得させた。京極堂がとんでもない嘘だ。仮に生き延びたとしても、胃も腹筋もないのにまともに口が利けるわけがないといった。雨宮は腕と脚をくれ、それを湖に連れて行くといった。甲田から鉄の箱をもらってきた。須崎のトラックに乗せて運んだという。トラックの荷台の鍵の留金が馬鹿になっていた。右腕が落下したのはそのせいだという。戻って来た雨宮と須崎の間が険悪となり大変な口論となった。須崎はそこであのことをいってしまった。それから雨宮はすこしおかしくなった。八月三十一日の話しとなる。

加菜子は須崎が当日持って来た箱に納まる程度の大きさだった。その鉄の箱には外科的処置が施してあったから、やるべきことは、シーツを剥ぎ加菜子につながっている細管や点滴をはずし加菜子を箱に入れるだけだった。焼却炉には須崎の簡易生命維持装置があった。須崎はそこに加菜子を運んでいった。そこには左腕も置かれていた。京極堂がこの話しの終りとして、木場に敵を倒すと意気込んでいたが、どこにもそんな敵はいなかったといった。京極堂の話しが雨宮のこととなる。

雨宮は会社に命じられ監視役となったが、加菜子、陽子、雨宮という疑似家族の関係に満足して生きて来た。しかし偽装誘拐に至る経緯の中でこれまで味わっていた幸福がつぎつぎと壊されてゆく悲しみを味わった。須崎は加菜子の秘密をたぶん口汚い言葉で雨宮に明かした。それに深く傷ついた雨宮は焼却炉に行った。そこにある加菜子の左腕に会いに行くようになった。加菜子のいる部屋に一同が集まっているとき雨宮はひとり抜け出して焼却炉に行って、左腕を連れ出そうとした。道路から回収した箱に腕を入れようとした。そこに須崎がやって来た。そこで爭いになった。雨宮が加菜子を発見した。箱で殴殺して加菜子を取り戻してふたりで旅立った。京極堂が美馬坂に話す。

美馬坂が自分の研究に執着することが、陽子、雨宮を巻き込み多くの悲劇を引き起している。もう中止すべきたというが、拒否する。法律も道徳も自分を罰することはできないという。京極堂がこれ以上の被害者を出すべきでないと久保の話しをする。雨宮は徒歩で箱を持って逃走した。列車に乗って西に向った。そこで伊勢に向う久保と遭遇した。久保は箱の中で生きる加菜子を見たという。関口が「匣の中の娘」は本当のことを書いていたのかと驚く。青木がそれがバラバラ殺人事件の動機かと納得する。京極堂は久保は箱に入った加菜子がほしくて生きている娘たちの手足を切断したという。美馬坂にそこの久保を警察に引き渡せという。拒否する。久保が持って来た金では三日と持たない。耀弘の遺産も手に入らない。久保は榎木津が喫茶店新世界で渡した写真と頼子の話しから美馬坂近代医学研究所の存在を知ってここに来た。引き渡しを拒否する美馬坂に難病の妻の話しをする。醜くなる妻を見ることが辛っかった。それで研究に逃避しただけだという。陽子が父の生涯をかけた研究をつづけさせてくれといった。木場があとは警察の仕事だという。京極堂がそれを制止して重大な秘密を明かす。

陽子と美馬坂に緊張が走る。そこに昂奮した木場が加わる。陽子がついに加菜子は父の子であると告白する。美馬坂は加菜子の治療にそのような感情は入っていないという。美馬坂に非難の目が集中する。陽子が告白する。父を誘ったのは陽子だという。日に日に醜くなってゆき呪詛を振り撒く母がたまらなく嫌だった。母はすべてを捨てて献身する父にも容赦なかった。家を出たのは陽子の意志だという。そんな母を父は愛しつづけた。母にしか居所を教えなかった。妊娠を知ったとき嬉しかった。弘弥との駆け落ちは半ば本気だった。入院した母には二度しか面会に行かなかった。須崎がやって来た。露骨でなかったからはじめは気づかなかった。加菜子に知らせるといったので女優を引退した。小金井で三人で暮しているときが一番幸せだった。弘弥の子どもでないことを告白しなかったのは雨宮がいたから。定年後三人で暮すつもりだった。また相続させたくなかったのは、自分が愛した美馬坂の子どもでなくなるような気がしたからという。関口が箱に手をかけようとした。驚愕する美馬坂。京極堂が止める。美馬坂は陽子を愛してしまったことを告白する。美馬坂が告白する。

京極堂の詭弁が科学者としての美馬坂の心を掻き乱し。人生を狂わせたという。京極堂との間に論争がある。美馬坂がこの箱はもうすこしで完成する。目や鼻の代用受容器官がないといっていたが同様の刺激を与える装置を考案した。これの実証実験には類人猿では不十分だ。京極堂が意識は脳だけで作り出せない。人間は人間全体で人間だ。機械につながれた脳が生み出すのは脳の持ち主の意識ではなく、つないだ機械の意識だという。嘘だと認めない。陽子に行こうと呼びかける。止める木場にメスを振い、箱を抱えて父と屋上に向った。

久保の告白である。殺すつもりはなかった。箱に入れたかっただけだ。うまくゆかなかった。科学者にどうすればよいのかきいた。君自身が被害者になれという。不可解な言葉である。人体はただの脳の乗り物にすぎない。もっと丈夫で長持ちのする乗り物に乗り替えるという。だから箱に入った。苦しい。すこしも幸せではない。科学者と誰かが口論している。科学者のいうことは妄想だ。それはやってみなければ解らないという。私は騙された。美馬坂幸四郎に騙さた。だから箱から出せ。ぐらりと箱が揺れた。蓋が開いた。もう騙されない。

一同が屋上に出たとき、こうこうと月が輝いていた。中央に陽子が立っていた。その足下に美馬坂が倒れていた。その首に食らいついた久保の顔があった。久保の首には絞められた指のあとがついていた。陽子を木場が逮捕した。

11

十月十四日、中野である。関口が事件当日を回想する。甲田は美馬坂の才能を高く評価していた。すべての機械を破壊し燃料が尽きるとともに首を吊った。榎木津はそれを見守り、甲田を救い、屋上で一同を待ったという。首吊りを救ったのは二人めである。木場は軽傷だった。処分はなかったが京極堂が大島課長に根回ししたらしい。冒頭に戻る。

京極堂に出来たばかりの自著を進呈した。榎木津と鳥口にも進呈した。鳥口が福本が巡査を辞めて歯ブラシ会社に就職した。君枝はあの家を売り、高円寺のアパートに引越した。兵衛は喜捨を信者に返し道場も売った。取り調べが済むと出家するという。陽子のことを京極堂にきく。増岡が弁護に付くという。関口が魍魎とは何かときく。あれ以来ずっと気になっていたという。京極堂が魍魎は人に憑くものでない。だから落とせない。魍魎そのものは沢川にいて人の声を真似て人を惑わすものだといった。久しぶりに釣り堀屋の伊佐間がやって来た。

ひと月近く山陰を旅行していた。釣はよかったという。そこで変な人に出会った。島根の川合の物部神社のところだった。京極堂が十月九日のお祭りの日だろうという。流鏑馬、巫女舞いがあった。その人は何だかとても幸せそうだった。もう寒いのに開襟シャツ、上着なし。よれよれのコール天のズボンで時々気弱に笑った。それがこれくらいの鉄の箱を持って、お祭りを見ている。それでたまに蓋を開けて、ほら馬だ、巫女さんだとか話しかけている。変でしょうという。関口は想像する。荒涼とした大地がひろがる。そこをひとり行く男。男の背負っている箱には綺麗な娘が入っている。男は満ち足りてどこまでも歩いて行く。関口はその男が羨ましくなった。

(本文おわり)

匣の中の娘(復元)

これは本編中に埋めこまれた断片から復元した「匣の中の娘」の概要である。

「匣の中の娘」前編

子どものころから潔癖症であった。よく勉強した。官吏になった。父が亡くなった。空いている部屋がたくさんある屋敷に住むのが怖くなった。祖母が亡くなったという訃報が来たので急ぎ帰省した。(以下略) --- 4の後
(前半部略)帰省列車の中でひとりの男に遭遇した。男が持っている箱に綺麗な娘が入っていた。娘がほうといって笑った。何だかひどく男が羨ましくなった。(以下略) --- 1の前
(前半部略)あの娘を探すこととした。駅前の木賃宿に泊った。繁華街を歩いた。醜悪な女に声をかけられ喧嘩となった。何としてもあの娘が必要だ。(以下略) --- 2の後
(前半部略)宿に戻った。夢を見た。祖母の墓を掘り起こした。箱の中で祖母がほうといった。まず箱を自分の手で用意しなくては。(以下略) --- 3の後

「匣の中の娘」後編

女というのは何故に...(中断)...(判読不能)...(再開)...うまく行かぬ...(中断)...(判読不能)...(再開)...街というのは隙間だらけだ...(中断)...(判読不能)...(再開)...写真を手に入れる。今度こそ大丈夫...(中断)...(判読不能)...(再開)...最後がこの女だったのは偶然でない。その医者が知っているなら会わねばならない。今すぐ出かけよう--- 8の後

陽子の深い心の闇

この作品の中で様々な不幸が語られる。それは過酷な環境と心の闇に支配される。独特の不幸を展開させるのが心の闇である。ここでは女主人公である陽子を取り上げる。

1) 陽子とは
陽子は、帝大教授の父と美しく優しい母を持ち、幸せな家庭に育った。しかし母の筋無力症が転機となり運命が暗転する。かずかずの不幸に耐え生きて来た陽子は木場が憧れたような、気高く可憐な人柄であったが、その奥に潜む心の闇は凄まじい。

2) 父との異常な関係
父と到底許されないような異様な関係を持ち、それを自らの意志だったと公言する。さらに父との関係を修復することなく、ことさらに過酷な環境に入ってゆく。病身の母、加菜子を抱えて生活を支えて行く。健気といえるが、父の協力を得て家族を支えるならば、父が異常な研究にのめり込むことを避け、安らかな母の最後を看取ることができたと思われる。さらに多感な時期の加菜子の衝動的な行動も制御できたであろう。

3) 弘弥との不可解な関係
弘弥は自らの汗で稼いだことのない、いわば大金持ちの馬鹿息子である。その荒唐無稽の計画に乗り恋の逃避行を決行した。軽率である。それは真実の愛を貫く誠実さに欠ける。これに関連して耀弘の申し出を受けることも不誠実である。やっぱりお金が必要だったという発言が散見するが見苦しい。

4) 加菜子への不可解な対応
真の父を偽装する関係は常に綻びを見せていた。真実を語るべき機会が何度か訪れたのに、それをしなかった。勇気に欠ける。このような異様さが多感な少女の苦しみを増したことは間違いない。短慮である。

5) 深い心の闇
可憐で気高い姿を見せるとともに、これまで述べた異様な行動をとる。その間のギャップは凄まじい。深い心の闇を持つといわざるを得ない。

対照的なのは君枝の不幸である。過酷な環境は陽子に劣らない。しかし二人の夫にたいして、いずれも夫婦の愛を貫き頼子を守った。たまたま手に入れた家に執着することは十分理解できる。それへの執着と御筥様への短慮が頼子の不幸への誘因となったことはあまりにも悲しい。京極作品にはさまざまな不幸が語られる。この多様な姿が作品の魅力となっている。

(おわり)

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